写真は、ただいま我が家で「冬眠中」の留袖、仮絵羽仕立てです。
若い方向きですね。
共八掛も赤いですー。
先にお話ししておきます。今日はいつにもまして長~~~いです。
「またかい」…すみません。長いお話嫌いな方、スルーしてください。
本日「冠婚葬祭の衣装」について、です。
先日、よそ様の掲示板で「結婚式の服装」というお話しがありました。
そのなかで注目すべきは、ある方が「黒いドレス(洋服)はNG」と
かなりはっきりおっしゃっていたことでした。
式場によってはプランナーが、披露宴出席者に黒はダメというとか…。
「黒は喪の色であるから」と…。
まぁそれに対していろいろな意見があり、
私もちょっと書かせていただいたのですが、
ああ、今はそういうことが問題になる時代なのだ…とちょっと驚きました。
個人的な意見ですが「いいけど、やめたほうが…」です。
いい、というのはルール的には問題なかろうということで、
やめたほうがというのは、まさしく「今の時代だから」です。
このことを今のことだけで話すとしたら、、
単純に「黒は葬式用でしょ」でオシマイになってしまいます。
でも、女性が黒の洋装がダメというなら、男性はどうでしょう。
お若い男性は「ダークスーツ」もあるでしょうが、ほとんどの男性は
ブラックフォーマルで、ネクタイと靴下が白や金銀のはいったもの…ですよね。
それこそネクタイと靴下かえれば、そのままお葬式にもGOです。
黒一色はダメ、という記述でしたが、通常黒いドレスで披露宴出席のときに
ほかに何もつけないということはないと思います。
男性のネクタイ・靴下と同じで、何か華やかなアクセとか
ラメのストールとか、生花のコサージュとか…。
髪だってきれいに結うでしょう、花を散らすとかねぇ…。
そういうものをつけると思うんですよね。
掲示板には「集合写真でも、黒だと寂しい」とか「縁起」というような…。
でも、それなら留袖や紋付も黒ですよねぇ。
なんか女性の「洋装」のみ黒はダメ…という「?」なお話しでした。
偏ってますよね。私は女性の黒の洋装もルール上での問題はないと思います。
で「今の時代」ってことなんですが、これあちらにも書かせて頂いたんですが、
戦後の礼装のルールの変化があまりにもはやすぎた、
というより今もスゴイスピードで変わりつつある、
そのための混乱だと思うんですよ。
ちょっと書いてみますと…ポイントがいくつかあります。
まず、礼装の歴史、というとおおげさですがとにかく、
・ 日本という国は明治維新までは「着物しか」ありませんでした。
・ 洋装が入ってきても、あっという間に今のようになったわけではなく、
洋装は限られた人のものであり、女性より男性の方が早く広がりました。
・ 女性は着物が主流という時期が続きました。
だからこそ「大正ロマン」のハデなちりめんだの昭和の「銘仙」だのが
大ハヤリしたわけです。
・ 憎むべき戦争のおかげで着物は衰退し、やがて平和になったとたんに、
洋装が怒涛の勢いでひろまりました。
・ ほとんどの年代が洋服を日常着とするようになりましたが、
だからこそ「ここぞ」というときは「着物」が着られました。
結局このころから「着物は特別なもの」となっていったわけです。
まぁざっとした流れはこんな感じなわけですが、
ただ着物・洋服、という区別だけでなく、例えば江戸・幕末・明治…と
時代が進むにつれて、それまでの身分による規制が意味をなくし、
庶民が絹を着ることもモンダイなくなったり、
また交易によって、材料の輸入や機械モノの導入などで産業が発展し、
「所得」という意味でも向上したわけです。
つまり働いてお金をためて絹が買える…という暮らしが進んでいったわけですね。
元々「江戸褄」という言葉があるくらいで、今の留袖にあたるものが
着られるようになったのは江戸時代ではありますが、
じゃあダレもが結婚式には留袖着たか、花嫁振袖や白無垢を着たか、というと、
それは一部の身分のあるものと裕福な階層です。
生活レベルの低い人たちは、単なる「晴れ着」でした。
それが、上に書いたように誰もが絹を着られるような状況の変化によって、
ダレもが結婚式には白無垢、親は留袖…と着られるようになっていったわけです。
つまり、今の礼装の決まりごとというのが「一般的なもの」になったのは、
1000年からある着物の歴史の中では、まだつい最近のことなわけですね。
それならそれで、時間を当たり前にかけてかわっていけたらよかったのに、
戦後わずか何十年、という間に猛スピードでかわったから、
今たいへんややこしいことになっているんだと、私は思います。
私の子供のころ、年代で言うと1960年から70年くらいですが、
何かあったら着物…がまだ多い時代でした。
入学式だの卒業式だのには、親も晴れ着晴れ姿で、着物の人も多くいました。
色無地に黒い羽織で「からすの軍団」と呼ばれたのもこのころです。
でも、それもあっというまに消えて、そういう場合も洋装が多くなりました。
但しそのころの洋装は、今で言うブラックフォーマルです。礼服と言いました。
黒でない場合でも、紺とか茶とか、落ち着いた印象で甘さのないものです。
「礼装」というのは、いわば「きちんとした服」とでもいいましょうか、
たとえば今の若い方が就職活動に着る「リクルート・スーツ」、
あれって要するに派手な色や柄物のスーツだと
「きちんとした印象にならないから」ですよね。
入学式とか七五三とか、大切なお祝い事だから、華やかさよりも、
清冽に、厳粛に、…と装ったわけです。
そしてその「礼服」は男性の礼服と同じで身に着けるもので使い分けられました。
「葬」なら黒靴下にせいぜい真珠のネックレス、皮を使わないバッグ、
化粧は口紅つけない「片化粧」、かざりのない靴…、
「婚」や「冠」なら、胸に華やかなコサージュを飾り、アクセも光るもの、
靴も黒ならエナメルとか、飾りのついたもの…これでOKだったのです。
これがわずかの年月の間に、入学式卒業式は着物がなくなり「スーツ」になり、
次に「華やかなスーツ」で、いまや入学式は親もピンクやクリームの
おしゃれなスーツやアンサンブルなんてのが当たり前になりましたね。
数えたら、たった30年くらいの間です。
ちょうど30年前、友人の披露宴に出ました。
私はちょっと違いで結婚していましたので、派手目の訪問着を着ました。
同じ学生時代の友人で、神戸から新幹線で来た友人は黒のスーツに、
白や黄色、金銀の花を使ったきれいなコサージュと、二連の真珠のネックレス。
当時としては、それで全くモンダイはありませんでした。
そんなふうに着るものだけでなく、そのときの社会状況というものもあります。
私の若いころはまだまだ「冠婚葬祭は当然着物でしょ」が根強くて、
そういうときに洋装なのは、何か理由があるか、元々がモダンか…。
友人の結婚式に行くと、未婚女性のほとんどが振袖でした。
当初洋服の「礼服」といえば、男女ともに「黒服」で何にでも使えたものが、
いつのまにか「カラー・フォーマル」なんてものができて、
特に女性は、スーツというより「ドレス」というものが出始めました。
ついでのことに、結婚式もお葬式も、家でやることがなくなり、
お座敷よりもテーブルで洋食、いえ和食・中華であっても、会場は洋風ですね。
そうなったとき、洋装であってもハイヒールを脱ぐこともないし、
ドレスで正座もありません。着物であってもテーブルのほうがラクですよね。
困るのは「背中の出っ張った帯」くらいのものです。
これも、その掲示板に書かせていただいたことですが、
お座敷で一人ずつの低いお膳だと、正座ですから留袖の柄も派手なら見えます。
ところがテーブルにイスだと、座ったら裾模様部分は全く見えません。
親族一同のテーブルは、全員まっくろけーです。
いっとき、そういうときに華やかにみえるように、留袖の左肩にも、
柄を入れたらどうかというものが考案されましたが、あっというまに消えました。
留袖は「裾模様であるからいい」わけで、日本人はテーブルでのジミさの解消より
伝統的な裾模様を優先させたわけです。
ちっと休憩、こちらは「色留袖」、色がうまく出ていませんが
少しグレー味のある抹茶です。
ちょっと凝ってまして、地模様が細かい「紗綾型」です。
柄のところ、一度絵を描いた上から、金で薄く紗綾型をのっているんです。
その紗綾型も描いたのではなく、地の柄が出ている…。
一部中をのぞいてみました。素人ですから判断が違うかもしれませんが、
表から薄く金でかぶせたあと、裏から柄を描いた感じ…。
そのため金の細かい紗綾がかぶさって、柔らかい気品を漂わせています。
こちらも我が家で冬眠中、売らなきゃねぇ…。
さて、イロイロ書いてきましたが、こんな感じでわずかな時間で、
和と洋が混在し、その「比率」がかわり、経済的にもさまざま可能になり…。
ややこしくなって当然ですよね。
私はいつも言ってますが「着物は自由です。でも礼装は相手のあることだから、
相手のことを考えましょう」です。
めでたいことなら、喜びの気持ち祝う気持ちシアワセを祈る気持ち、
悲しいことなら悼む気持ち、悔やむ気持ち、励ます気持ち…。
その思いを衣装という表包みに包んで、相手に示すのが礼装です。
自分が主役なら、自分の喜び、或いは悲しみと同時に、
来てくださるお客様に対する挨拶の気持ち、感謝の気持ち…。
それが礼装というものですから、自分の好みだけを押し通したら、
ただのオシャレにしかなりません。
知人の娘さんがちょっとかわった人で、山歩きが趣味。
それはいいんですが、実の弟の結婚式の時期に登山を計画し、
式当日に下山してくるという…あげく「時間ないし面倒だからそのまま行く」。
これに知人である母親が激怒しまして「だったらこなくていい!」と。
そのままの格好なんかで式に出られたら、自分たちも恥ずかしいし、
第一、弟が相手の一族にバカにされる、恥をかくのはおまえだけではない、と。
結局「相手がある」というのは、そういうことも含むわけですよね。
だからこそ「ある程度のルール」というのは、今の時代、まだまだ必要なわけで、
今ほとんどの人が、子供の結婚なら留袖、ですよね。
それはやっぱりそれが一番いいからだと思います。
それでも…男親は「紋付」を着なくなりました。
一昔前まで、新郎・男親・仲人さんの男性、は揃って黒紋付でした。
最近は、新郎以外は洋装礼服で、たとえば披露宴に呼ばれた男性が
「お婿さんと同じじゃ悪いから」と、色紋付とか、それ以外の準礼装だったり。
もっとも最近の披露宴は、お婿さんもコントみたいな紋付だったりして
はなむこさんと、色がかぶることは少なかったりしますけど…。
いかがですか?黒のドレスはNGかOKか…。
なんでも教会の場合だと黒は断られるところがあるそうです。
さぁ今度は「宗教」が入ってきましたよ。
確かに、西洋で「黒」は「喪服」です。夫の死を悼んで、
何年たっても黒のドレスしか着ない…なんて物語にも出てきたりします。
日本でも黒は「喪」、いえ実は明治まで日本の「喪」は白。
喪主や家族は、死者と同じ白の経帷子で違うのは前の打ち合わせだけ。
それで死者と生者を区別し、死者には手甲脚絆をつけ、
わらじを後ろ向きに履かせ「貴方はもうこの世のものではない、
彼岸への旅に出るのだよ」と言い聞かせた…。
西洋に習って「喪は黒」としなければ、今でも日本の喪服は
白だったかもしれませんね。(一部の地方では残っているそうです)
話しがそれましたが、教会での結婚式に黒というのはやはりいけないでしょう。
(追記 知らずに書いてしまいました。大丈夫でもあるようです。ムズカシイ)
元々日本の場合「挙式」というのは親族だけで行うもので、
話しとして「友達の結婚式によばれてるの」というのは、
実は「結婚披露宴」のほうです。教会の場合は、親族知人友人たちに見守られて
神に誓いを立てるわけで、そこからして違うんですね。
おまけに、ある方の書き込みで「花嫁さんのお色直しのドレスの色と、
自分のドレスの色がかぶったらと思って確認した」…。
洋装が当たり前のように増えたために出てきた新しい悩みですね。
外国の結婚式ではお色直しってのはないんじゃないですか?
花嫁の色である白さえ着なきゃ、あとはOK、ところが日本では、
白のほかにも着るかもしれない…あぁ益々面倒です。
着物では?ほとんど大丈夫です。着物は色より柄です。
花嫁振袖は、刺繍や箔など豪華絢爛、柄も大きいですし、ふき綿たっぷりですし。
しかもきちんと着るなら「お引き」で「丸帯」です。
同じ地色の振袖でも、通常の振袖なら確実に「負け」ますから。
結局、披露宴での黒のドレスはどーなのか…私はいいと思いますが、
これだけ混乱して、現場でオシゴトしている人が「NO」というなら、
やめておいたほうが悩まなくていいでしょう、ということになります。
プロの方々も、きっと「いけない」というのではなく、
今の混乱した冠婚葬祭状態では「黒」はお葬式みたいだから着ないでねー、と
それにしてしまったほうがトラブルが起きないからではないでしょうか。
それこそ「時代の流れ」というものですね。
さぁここまできて…やっぱり着物は便利だなー、です。
ある程度の礼儀の基準を守っていれば、色がかぶろうと柄がかぶろうと、
失礼にはあたりません。
あとはその披露宴の状況です。今は派手にするばかりでなく、
気楽なパーティーなんてこともありますから、それにあわせて
色無地とか江戸小紋とか、若ければ華やかな小紋や絵羽付け小紋、
帯はちょっと豪華に、若かったらちょっと飾り結びをしても。
それで着分ければいいわけです。着物っていいですねぇ。
はい、長いお時間、お疲れ様でした。
私は本日予定変更で、洗濯機は明日。
そーじしまくってあいまにこれを書いて、ついでに留袖を見たら…
まだ結婚しない「シンセキ」の娘を思い出しました。
はよいってくれ、留袖がハデになる。あっバサマにもらった色留があるわ。
じっくりいいヒトみつけなさい…。
追記です
本日の記事について、私の記憶違いなどもあり、
翌日(10月17日分)で、お詫びと訂正の記事を書きました。
そちらもご覧下さい。申し訳ありません。
若い方向きですね。
共八掛も赤いですー。
先にお話ししておきます。今日はいつにもまして長~~~いです。
「またかい」…すみません。長いお話嫌いな方、スルーしてください。
本日「冠婚葬祭の衣装」について、です。
先日、よそ様の掲示板で「結婚式の服装」というお話しがありました。
そのなかで注目すべきは、ある方が「黒いドレス(洋服)はNG」と
かなりはっきりおっしゃっていたことでした。
式場によってはプランナーが、披露宴出席者に黒はダメというとか…。
「黒は喪の色であるから」と…。
まぁそれに対していろいろな意見があり、
私もちょっと書かせていただいたのですが、
ああ、今はそういうことが問題になる時代なのだ…とちょっと驚きました。
個人的な意見ですが「いいけど、やめたほうが…」です。
いい、というのはルール的には問題なかろうということで、
やめたほうがというのは、まさしく「今の時代だから」です。
このことを今のことだけで話すとしたら、、
単純に「黒は葬式用でしょ」でオシマイになってしまいます。
でも、女性が黒の洋装がダメというなら、男性はどうでしょう。
お若い男性は「ダークスーツ」もあるでしょうが、ほとんどの男性は
ブラックフォーマルで、ネクタイと靴下が白や金銀のはいったもの…ですよね。
それこそネクタイと靴下かえれば、そのままお葬式にもGOです。
黒一色はダメ、という記述でしたが、通常黒いドレスで披露宴出席のときに
ほかに何もつけないということはないと思います。
男性のネクタイ・靴下と同じで、何か華やかなアクセとか
ラメのストールとか、生花のコサージュとか…。
髪だってきれいに結うでしょう、花を散らすとかねぇ…。
そういうものをつけると思うんですよね。
掲示板には「集合写真でも、黒だと寂しい」とか「縁起」というような…。
でも、それなら留袖や紋付も黒ですよねぇ。
なんか女性の「洋装」のみ黒はダメ…という「?」なお話しでした。
偏ってますよね。私は女性の黒の洋装もルール上での問題はないと思います。
で「今の時代」ってことなんですが、これあちらにも書かせて頂いたんですが、
戦後の礼装のルールの変化があまりにもはやすぎた、
というより今もスゴイスピードで変わりつつある、
そのための混乱だと思うんですよ。
ちょっと書いてみますと…ポイントがいくつかあります。
まず、礼装の歴史、というとおおげさですがとにかく、
・ 日本という国は明治維新までは「着物しか」ありませんでした。
・ 洋装が入ってきても、あっという間に今のようになったわけではなく、
洋装は限られた人のものであり、女性より男性の方が早く広がりました。
・ 女性は着物が主流という時期が続きました。
だからこそ「大正ロマン」のハデなちりめんだの昭和の「銘仙」だのが
大ハヤリしたわけです。
・ 憎むべき戦争のおかげで着物は衰退し、やがて平和になったとたんに、
洋装が怒涛の勢いでひろまりました。
・ ほとんどの年代が洋服を日常着とするようになりましたが、
だからこそ「ここぞ」というときは「着物」が着られました。
結局このころから「着物は特別なもの」となっていったわけです。
まぁざっとした流れはこんな感じなわけですが、
ただ着物・洋服、という区別だけでなく、例えば江戸・幕末・明治…と
時代が進むにつれて、それまでの身分による規制が意味をなくし、
庶民が絹を着ることもモンダイなくなったり、
また交易によって、材料の輸入や機械モノの導入などで産業が発展し、
「所得」という意味でも向上したわけです。
つまり働いてお金をためて絹が買える…という暮らしが進んでいったわけですね。
元々「江戸褄」という言葉があるくらいで、今の留袖にあたるものが
着られるようになったのは江戸時代ではありますが、
じゃあダレもが結婚式には留袖着たか、花嫁振袖や白無垢を着たか、というと、
それは一部の身分のあるものと裕福な階層です。
生活レベルの低い人たちは、単なる「晴れ着」でした。
それが、上に書いたように誰もが絹を着られるような状況の変化によって、
ダレもが結婚式には白無垢、親は留袖…と着られるようになっていったわけです。
つまり、今の礼装の決まりごとというのが「一般的なもの」になったのは、
1000年からある着物の歴史の中では、まだつい最近のことなわけですね。
それならそれで、時間を当たり前にかけてかわっていけたらよかったのに、
戦後わずか何十年、という間に猛スピードでかわったから、
今たいへんややこしいことになっているんだと、私は思います。
私の子供のころ、年代で言うと1960年から70年くらいですが、
何かあったら着物…がまだ多い時代でした。
入学式だの卒業式だのには、親も晴れ着晴れ姿で、着物の人も多くいました。
色無地に黒い羽織で「からすの軍団」と呼ばれたのもこのころです。
でも、それもあっというまに消えて、そういう場合も洋装が多くなりました。
但しそのころの洋装は、今で言うブラックフォーマルです。礼服と言いました。
黒でない場合でも、紺とか茶とか、落ち着いた印象で甘さのないものです。
「礼装」というのは、いわば「きちんとした服」とでもいいましょうか、
たとえば今の若い方が就職活動に着る「リクルート・スーツ」、
あれって要するに派手な色や柄物のスーツだと
「きちんとした印象にならないから」ですよね。
入学式とか七五三とか、大切なお祝い事だから、華やかさよりも、
清冽に、厳粛に、…と装ったわけです。
そしてその「礼服」は男性の礼服と同じで身に着けるもので使い分けられました。
「葬」なら黒靴下にせいぜい真珠のネックレス、皮を使わないバッグ、
化粧は口紅つけない「片化粧」、かざりのない靴…、
「婚」や「冠」なら、胸に華やかなコサージュを飾り、アクセも光るもの、
靴も黒ならエナメルとか、飾りのついたもの…これでOKだったのです。
これがわずかの年月の間に、入学式卒業式は着物がなくなり「スーツ」になり、
次に「華やかなスーツ」で、いまや入学式は親もピンクやクリームの
おしゃれなスーツやアンサンブルなんてのが当たり前になりましたね。
数えたら、たった30年くらいの間です。
ちょうど30年前、友人の披露宴に出ました。
私はちょっと違いで結婚していましたので、派手目の訪問着を着ました。
同じ学生時代の友人で、神戸から新幹線で来た友人は黒のスーツに、
白や黄色、金銀の花を使ったきれいなコサージュと、二連の真珠のネックレス。
当時としては、それで全くモンダイはありませんでした。
そんなふうに着るものだけでなく、そのときの社会状況というものもあります。
私の若いころはまだまだ「冠婚葬祭は当然着物でしょ」が根強くて、
そういうときに洋装なのは、何か理由があるか、元々がモダンか…。
友人の結婚式に行くと、未婚女性のほとんどが振袖でした。
当初洋服の「礼服」といえば、男女ともに「黒服」で何にでも使えたものが、
いつのまにか「カラー・フォーマル」なんてものができて、
特に女性は、スーツというより「ドレス」というものが出始めました。
ついでのことに、結婚式もお葬式も、家でやることがなくなり、
お座敷よりもテーブルで洋食、いえ和食・中華であっても、会場は洋風ですね。
そうなったとき、洋装であってもハイヒールを脱ぐこともないし、
ドレスで正座もありません。着物であってもテーブルのほうがラクですよね。
困るのは「背中の出っ張った帯」くらいのものです。
これも、その掲示板に書かせていただいたことですが、
お座敷で一人ずつの低いお膳だと、正座ですから留袖の柄も派手なら見えます。
ところがテーブルにイスだと、座ったら裾模様部分は全く見えません。
親族一同のテーブルは、全員まっくろけーです。
いっとき、そういうときに華やかにみえるように、留袖の左肩にも、
柄を入れたらどうかというものが考案されましたが、あっというまに消えました。
留袖は「裾模様であるからいい」わけで、日本人はテーブルでのジミさの解消より
伝統的な裾模様を優先させたわけです。
ちっと休憩、こちらは「色留袖」、色がうまく出ていませんが
少しグレー味のある抹茶です。
ちょっと凝ってまして、地模様が細かい「紗綾型」です。
柄のところ、一度絵を描いた上から、金で薄く紗綾型をのっているんです。
その紗綾型も描いたのではなく、地の柄が出ている…。
一部中をのぞいてみました。素人ですから判断が違うかもしれませんが、
表から薄く金でかぶせたあと、裏から柄を描いた感じ…。
そのため金の細かい紗綾がかぶさって、柔らかい気品を漂わせています。
こちらも我が家で冬眠中、売らなきゃねぇ…。
さて、イロイロ書いてきましたが、こんな感じでわずかな時間で、
和と洋が混在し、その「比率」がかわり、経済的にもさまざま可能になり…。
ややこしくなって当然ですよね。
私はいつも言ってますが「着物は自由です。でも礼装は相手のあることだから、
相手のことを考えましょう」です。
めでたいことなら、喜びの気持ち祝う気持ちシアワセを祈る気持ち、
悲しいことなら悼む気持ち、悔やむ気持ち、励ます気持ち…。
その思いを衣装という表包みに包んで、相手に示すのが礼装です。
自分が主役なら、自分の喜び、或いは悲しみと同時に、
来てくださるお客様に対する挨拶の気持ち、感謝の気持ち…。
それが礼装というものですから、自分の好みだけを押し通したら、
ただのオシャレにしかなりません。
知人の娘さんがちょっとかわった人で、山歩きが趣味。
それはいいんですが、実の弟の結婚式の時期に登山を計画し、
式当日に下山してくるという…あげく「時間ないし面倒だからそのまま行く」。
これに知人である母親が激怒しまして「だったらこなくていい!」と。
そのままの格好なんかで式に出られたら、自分たちも恥ずかしいし、
第一、弟が相手の一族にバカにされる、恥をかくのはおまえだけではない、と。
結局「相手がある」というのは、そういうことも含むわけですよね。
だからこそ「ある程度のルール」というのは、今の時代、まだまだ必要なわけで、
今ほとんどの人が、子供の結婚なら留袖、ですよね。
それはやっぱりそれが一番いいからだと思います。
それでも…男親は「紋付」を着なくなりました。
一昔前まで、新郎・男親・仲人さんの男性、は揃って黒紋付でした。
最近は、新郎以外は洋装礼服で、たとえば披露宴に呼ばれた男性が
「お婿さんと同じじゃ悪いから」と、色紋付とか、それ以外の準礼装だったり。
もっとも最近の披露宴は、お婿さんもコントみたいな紋付だったりして
はなむこさんと、色がかぶることは少なかったりしますけど…。
いかがですか?黒のドレスはNGかOKか…。
なんでも教会の場合だと黒は断られるところがあるそうです。
さぁ今度は「宗教」が入ってきましたよ。
確かに、西洋で「黒」は「喪服」です。夫の死を悼んで、
何年たっても黒のドレスしか着ない…なんて物語にも出てきたりします。
日本でも黒は「喪」、いえ実は明治まで日本の「喪」は白。
喪主や家族は、死者と同じ白の経帷子で違うのは前の打ち合わせだけ。
それで死者と生者を区別し、死者には手甲脚絆をつけ、
わらじを後ろ向きに履かせ「貴方はもうこの世のものではない、
彼岸への旅に出るのだよ」と言い聞かせた…。
西洋に習って「喪は黒」としなければ、今でも日本の喪服は
白だったかもしれませんね。(一部の地方では残っているそうです)
話しがそれましたが、教会での結婚式に黒というのはやはりいけないでしょう。
(追記 知らずに書いてしまいました。大丈夫でもあるようです。ムズカシイ)
元々日本の場合「挙式」というのは親族だけで行うもので、
話しとして「友達の結婚式によばれてるの」というのは、
実は「結婚披露宴」のほうです。教会の場合は、親族知人友人たちに見守られて
神に誓いを立てるわけで、そこからして違うんですね。
おまけに、ある方の書き込みで「花嫁さんのお色直しのドレスの色と、
自分のドレスの色がかぶったらと思って確認した」…。
洋装が当たり前のように増えたために出てきた新しい悩みですね。
外国の結婚式ではお色直しってのはないんじゃないですか?
花嫁の色である白さえ着なきゃ、あとはOK、ところが日本では、
白のほかにも着るかもしれない…あぁ益々面倒です。
着物では?ほとんど大丈夫です。着物は色より柄です。
花嫁振袖は、刺繍や箔など豪華絢爛、柄も大きいですし、ふき綿たっぷりですし。
しかもきちんと着るなら「お引き」で「丸帯」です。
同じ地色の振袖でも、通常の振袖なら確実に「負け」ますから。
結局、披露宴での黒のドレスはどーなのか…私はいいと思いますが、
これだけ混乱して、現場でオシゴトしている人が「NO」というなら、
やめておいたほうが悩まなくていいでしょう、ということになります。
プロの方々も、きっと「いけない」というのではなく、
今の混乱した冠婚葬祭状態では「黒」はお葬式みたいだから着ないでねー、と
それにしてしまったほうがトラブルが起きないからではないでしょうか。
それこそ「時代の流れ」というものですね。
さぁここまできて…やっぱり着物は便利だなー、です。
ある程度の礼儀の基準を守っていれば、色がかぶろうと柄がかぶろうと、
失礼にはあたりません。
あとはその披露宴の状況です。今は派手にするばかりでなく、
気楽なパーティーなんてこともありますから、それにあわせて
色無地とか江戸小紋とか、若ければ華やかな小紋や絵羽付け小紋、
帯はちょっと豪華に、若かったらちょっと飾り結びをしても。
それで着分ければいいわけです。着物っていいですねぇ。
はい、長いお時間、お疲れ様でした。
私は本日予定変更で、洗濯機は明日。
そーじしまくってあいまにこれを書いて、ついでに留袖を見たら…
まだ結婚しない「シンセキ」の娘を思い出しました。
はよいってくれ、留袖がハデになる。あっバサマにもらった色留があるわ。
じっくりいいヒトみつけなさい…。
追記です
本日の記事について、私の記憶違いなどもあり、
翌日(10月17日分)で、お詫びと訂正の記事を書きました。
そちらもご覧下さい。申し訳ありません。
しかも同年代なので、子供の頃の母たちの情景が浮かんでくるようです。
そんな記述に懐かしさを感じます。
いまは教会での結婚式で黒はお断りと言うことはどの辺りの「黒」がお断りなのでしょうか。
アクセサリー有りや金ラメバッグでも駄目と言うことなのでしょうか・・・不思議です。
私の若い頃ですが兄の結婚式に振袖は着ませんで、黒のダブルジョーゼットでワンピースを仕立ててもらい出席しました。
教会でしたし、着物よりも雰囲気が合っていたように今でも思っています。
たったの30年~40年で常識が変わるのでしょうかね・・・。
それよりですね、
いまの結婚披露宴に出席されるお嬢さんの
「お店着(分かります?笑)」みたいなペラペラ・ミニ・ワンピース
垣間見ただけでウゲッとなるのですけれど。
(これって意地悪ばあさんか(笑))
アクセサリーで変化をさせれば失敗や失礼には
あたらないと思っていましたよね。
結婚式場で黒のベルベットのワンピースや
黒のジョーゼットのワンピースの方も見かけ
ます。真っ黒じゃなくラメ入りのコサージュを
つけておられましたが・・・
私は今でも結婚式に黒の洋服でOKだと思っています。
色無地は地味だから結婚式のお呼ばれには向かないとのこと。
これは20代の女性に対してだったと思うのですけど、なんとまぁ杓子定規の考え方よのぅ、と思いました。
だって~、着物には帯っちゅ~もんがあるじゃないですかぁ!ねぇ?
その上、20代だったらどんな派手な帯でもOKなんですもの。
従業員に間違えられるというのも、帯の格とか柄裄の選び方が地味だからだと思うんです。
あ・・・済みません、しっかりここで語ってしまって・・・・
私も黒のドレスで結婚式は良いじゃ~ん、と思ってます。
宗教絡みの法則がある時は仕方ないですけど。
黒ってホントは派手な色だと思いますし。
とんぼさんが仰ってるように、全身真っ黒で結婚式に行く人も無いでしょうしねぇ。
この手の掟って、誰かが「ねばならない!」と言い出した途端、どんどん窮屈になっていくように思えます。
窮屈なことなんて、少しでも少ない方が良いのになぁ、と思うんですけど・・・
自分のときには、やはり黒で小物を変えれば…と
フォーマルをすすめられた記憶があります。
以前アカデミー賞のレッドカーペットで
日本から来た女優さんが、黒の総レースで見事なドレスを
披露されてましたし
先日国営放送(笑)で美輪明宏様(いきなり様がつく)が
やはり見事な黒の総レースのドレスで出演されて
それ自体はいいのでしょうが
悪目立ちしやすいのも黒、無難や中庸を好む日本人には
着こなしは向かないのかもしれませんね。
その点、着物は黒も他の色彩もOKですから
着付けの苦しささえなんとかなれば、すばらしい!
規則として表に出すのは野暮な気もします。
今回もためになるお話、ありがとうございました!
あの燃え様は凄まじいものがありました。
日本人は大方が仏教的思考回路「中道」なのに、クリスチャン的な「正義と悪」に分けようという流れが大きくなって、本当に混乱しているのだと思ってしまいます(おおげさ?)
私は今でも、慶事には、娘たちに「黒・紺」のワンピース、かわいい髪飾り。弔事には飾りなし。自分は入学式なら華やかな半襟で色無地・黒羽織…の、「親の姿」映しでいます。
流れに逆らう気はないけど、それが自分の身に着いた形なので…。
改めて、着物は素晴らしいと実感!ご先祖様たちが長い時間をかけて工夫し、伝えてきたからこその説得力ですね!やっぱ、どんなことがあっても着続けます~!
昨年、おばあちゃんが亡くなり、遺品整理を夏休みに実家でしてきたのですが、大東紡織の本モスという反物がモリモリ出てきて、捨てるにはもったいないので、いくつか持ってきたのですが、永久防虫加工、虫食いの場合取り替えます!と書いてあったので、ひとつ虫食いもあるし、取り扱いも聞いておこうと、大東紡織に電話したら、30年以上前に生産をやめたので定年した人に聞かないとわからないと言われました。
6000円くらいの値札がそれぞれついていて、ラーメン70円の頃の6000円だぞ!と父親は言います。
最近、子供服を作ったりと裁縫の初心者の私が、レトロなワンピースとか、作ろかなーと持ってきたのはいいんですが、適当に切り刻むのは、ひょっとしてもったいないの?とりあえず古めかしいニオイがするので洗濯しようと思ってたけど洗濯機はだめなん?といった疑問がわいてきました。
この布の扱い、使い道等アドバイスいただけないでしょうか?
ちなみに柄は、赤の花柄や、手毬や、扇といった女の子むけと、テントウムシ?や手毬等の男の子用っぽい青、緑などです。
すみません。着物のことあまり知らなかったので、本モスで検索したら、こちらを見つけたもので・・・
喜んでいただけて嬉しいです。
教会の黒…というお話しですが、
すみません「肌を出す」がNGとありました。
ただ、大手のホテルでは黒は断られる
とありましたから、たぶん肌云々の前に、
すべて黒はダメということだと思います。
これについては、追記事書きます。
さまざまな常識がどんどん変わっていきますね
お店着…はいはい、わかりますよぉ。ははは。
いますねぇ「あら、これからぁ?」と
声をかけたくなるよーな…。
ご本人はいいとおもっていらっしゃるけれど
「品性」というものが大切なものであると
理解するには時間がかかるのでしょうね。
陽花様
そうそう、私も一応黒のじみーなスーツもって嫁入りしました。
あれ一着でなんでもでしたから、
便利でしたよね。
私も黒OK派です。洋は「飾り方」ですよ。
りら様
なんか、着物のことは知られていないから、
誰かが「NO」というと、応用が利かなくて
結局、右に倣えになってしまう…。
着るほうも、工夫するだけの知恵がない、
寂しいです。もったいないですねぇ。
えみこ様
太輝がつくと「えっ」ということになってて、
ちょっと待って…です。
人と人との摩擦が少なくて、
一番大きな意見が一人歩きして、
そのわかはダメになってしまうのは
なんかもったいないですね。
ゆん様
そうですね、少し前までは、こっちが何か
ステキなもの着たいと思っても、
「学生は制服が礼服だ」といわれて、
なんでも制服でしたよ。
小さい子が、今夜黒の服で、ちょっと白い
レースがついていたり、小粋なネクタイだと
ほんとに小公子・小公女のようで
かわいいです。ブランドの大人もどきは
かわいくてもどこか子供らしさを
消してしまうようで、好きになれません。
よろ様
こちらこそはじめまして、
ようこそお越しくださいました。
本モスなんて、ほんとにいいものが
手に入りましたね。
元々「モス」は「モスリン」、メリンスとも
言われます。
高級メリノウールのことです。
「本」とわざわざつけているのは、
きっと品質がよいことのアピールでしょう。
モスにも薄くてペラペラとか、
綿にも「綿モス」というのがありますから。
100パーセントウールですから、
最近のように防縮加工のしていないものは、
ガシャガシャ洗うと縮みます。
オシャレ着用洗剤などで手洗いが無難です。
切り刻むのは…ちゃんとお洋服になったり
するのなら、いいと思いますよ。
そのままにしておくより、よっぽどいいです。
モスは着物の世界では「したっぱ」なんです。
洋服でウールといったら、贅沢品ですが、
1000年かけて絹と麻と木綿でやってきた
日本では、ウールはあくまで「新参者」、
着物としても普段着用にしかなりません。
モスは、その普段着用のウールや木綿などの
着物のためのじゅばんとして、
重宝されたんです。また着物としては、
大人より子供のものに多く使われました。
モスはとにかく「虫食い」が多くて、
古着で出ても、ほとんど無きずなものは
ありません。永久防虫加工なんて、
すばらしいです。だから無事だったんですね。
モスは今でももちろんありますし
仕立ててももらえますが、
着物をお召しにならないなら、洋服素材として
おつかいになっても、何も問題はありません。
かわいらしい柄が多いのも、モスの特徴です。
じゅばんはトシをとっていても、
はでなものやかわいいものが着られます。
まして普段着用となったら、子供のような柄、
どピンク、まっかっかも平気なんですよ。
お書きになった色柄を思い浮かべますと、
きっと子供さんの着物やじゅばんにするつもり
だったのではないかと思います。
洗濯ということでは、ちょっと厄介ですが、
どうぞかわいらしい服を作ってください。
それと一応加工はしてあっても、
保管するときは「防虫剤」を入れてください。
こんなところでしょうか。
また何かありましたら、いつでもどうぞ。
私でわかる限りのことはお答えいたします。
ゆかたを作ったりするばあちゃんだったので、着物用かなとは思いましたが、ウールってもっと厚い生地しか知らず、うーむ・・って感じでした(笑)
とりあえず、アクロンで洗ったので、これから何か服や小物を作ってみようと思います。
洗ってみて、そんなに縮んだかんじもなかったので、洗うときは、セーター等と同じように扱ったらいいかなと。
いろいろ教えていただき、有難うございました。
お役に立てて何よりです。
上質のモスだったようで、ちぢみもなく
良かったです。おっしゃるとおり、
セーターと同じように、優しく扱えば
また長く楽しめますね。