トップ写真は、こんな感じでお通夜に行ったことがあったので…。
昔の本からスキャンしました。これはお通夜の装い。羽織は丈があるほうがいいですねぇ。
昨日は、羽織の生い立ち?と、黒羽織の説明をしました。
今日はその続きで、もう少し詳しくお話したいと思います。
元々振袖、留袖、色留、訪問着、附下、色無地は「女性の礼装」として位置づけられた着物ですが、
これらの着物には「羽織は着ない」というのがきまりです。
これも、年月かけて積み重ねられてきた、着物の着方のまとめのようなものです。
上着として着るのは、礼装の場合、防寒や塵除けとして「道行」か「和装コート」です。
昭和40年ごろから「色無地に黒絵羽」というのも見られるようになりました。
ここから昨日の話に続きますが…
豊かになりつつはあるけれど、そんなにいいものをみんなが持っているわけではない、
そんな時に、手持ちの着物で落ち着いた感じの小紋とか縞とか、そういうものに黒い羽織を着れば、
とりあえず「略」ではあるけれど礼装にはなる…入卒といえば、確かに式典ではあるけれど、
結婚式や葬式ほど気合を入れなくてもいいんじゃない?…で、略装でキメようと。
そして「色無地」に絵羽織…が出てきます。暮らしに余裕も出てきた表れでしょう。
更に少しずつかわっていって、これは昭和47年の写真、ついに「附下」に黒紋付き。
説明には「着物としては無地、ぼかし、小紋など染のもの」とあり、
「正式には紋付だが学校関係なら一つ紋でいいので縫い紋にする」とあります。
ただ、私の記憶(ボケ記憶ですが)もう附下で黒羽織…は、ほとんど見なかったと思います。
洋装がとんどん増えましたから。
でも元々女性の礼装には羽織は着ない、というのがあるわけで、
色無地も紋がついていれば、礼装に使える着物です。披露宴にお呼ばれしたときにも着られます。
その時は羽織は着ませんね。じゃなんで入卒で着るのよ…ここがなんかヘンなんです。
実際のところは私にもわかりませんが、モノがないころは、とりあえずちょっといい小紋で…
だったものが、少しずつ揃えられるようになると「色無地」の方が、着物の柄ゆきを考えなくてすみますし、
小紋より「改まった感じ」が強くなりますよね。それで「いいんじゃない?」になったのではないかと
私はそんな風に考えています。その辺のゆるみが「臨機応変」だったのではないかと。
ただ、母の言葉を借りれば「色無地に一つ紋ついてたら、わざわざ黒絵羽着ることあらへん」です。
これは、以前にも書いたのですが「紋のついていない無地」は、ただの無地の着物です。
その上に「紋付羽織」を着れば「格がひとつ上がる」というマジックなのです。
だからみんな普通の小紋や縞に黒絵羽を着て、「略礼装」に格上げしていたわけですから。
それがそういう「お金の都合」だの「生活の差」なんてことがなくなってきたら「見た目」に行くわけです。
言い方は悪いですが、入卒、という、本来「きちんとした服ならなんでもいい」というランクの行事では、
大仰に訪問着着たりしなくてもいい、でもお祝いだからちょっとだけ改まるカッコ、という、
そんな中途半端感が色無地OKになって、黒絵羽を着るということを、よけいややこしくした気がします。
こちらは昭和52年の「色絵羽」、ここでは割と細かく説明があります。
「正式は三つ紋染抜きの黒。次が一つ紋で日陰紋か縫い紋。絵羽羽織は紋をいれなくとも
豪華さをそえるという意味で、感激や外出に…」、更にこの写真の横には
「合わせる着物で、入園入学式などの礼装に…」とあります。
今聞いたら、よくわかんない…ではありませんかね。
最近は、入・卒だと、まず和装はあまり見ません。なのでよけいにわからなくなって、
たまに「着物で黒絵羽」のことを「昭和のおかあさんスタイル」なんて表現される場合もあります。
この場合の昭和というのは、あくまで昭和30年から40年くらいの短い間にはやったものであり、
今まで書いてきたような、なんかいろいろまじってよくわからん「流行」だったのですね。
だから、昨日書いたことなどを全部踏まえて、更にキマリゴトを取りこんで考えると…
もし、入卒に黒い羽織(絵羽も)を着るスタイルで参列したい、と思うなら、
品のいい小紋か色無地に黒絵羽、であればいいのではないかなと思います。
附下や訪問着なら、わざわざ黒を着なくても十分礼装なのですから。
また、元々が羽織は女性の礼装ではほとんど使われない、という立場なので、
羽織紐についての細かい規定はないようなものですが、それを略礼装として着るという性質上、
白が基本と言われています。まあお祝い事なら金や銀が入っていてもOKです。
そしてこれがいつも私が付け加えることなのですが、入卒の、特に「卒」の方は、まだまだ寒いです。
卒業式が行われるのはたいがい体育館、まぁ全館暖房なんてところもあるかもですが、
基本的に「寒いところで長時間」になることが多いです。
訪問着や色無地に「道行」だと、それは会場では脱ぐのがきまり…道行は「コート」ですから。
なので最初から防寒の意味もあって、中に入っても脱がなくていい「羽織」はいいですよ、と言っています。
たまに成人式の会場などでも振袖姿のお嬢さんが、着席しているのにふわふわのショールを
外さずにいるのを見ます。寒いから…なのかなとも思いますが、だったらあなたは結婚披露宴に呼ばれて、
食事の席についてもショールをしていますか?です。「寒いのよっ」て言われそうですが。
我が家の近くには小学校と中学校が、向かい合って建っているので、
3月4月は、入卒の親子さんがたくさん通ります。
かわったなぁと思うのは「親の服装」。和装がないのは悲しい「当たり前」ですが、
洋装もみごとにバラバラで、いかにも入卒のために買ったらしきオシャレなスーツもいれば、
ドハデでこれからカラオケ大会ですか…みたいな人も。
また、さほどオシャレ感もなくて、ただ「今日はパンプスだけは履いてきました」みたいな、
ほぼ普段着風の人もいれば…です。
結婚式とか披露宴など、ある程度「これで」…というマニュアルっぽいものがない「入卒」は、
気にする人しない人によって、服装に差が出るのでしょうね。
もちろん、地域やその学校の状況にもよるものですが。
私が子供から大人になっていく間に、カラスの軍団は見られなくなり、入卒の和装がどんどん減ってゆきました。
そのころの洋装は、いわゆるブラックフォーマルです。といっても、今のような多様なデザインではなく、
ほとんどが普通のスーツ。テーラード・カラーの上着にタイトスカート。
昨今「就活」のニュースで、女子大生が「リクルート・スーツ」なるものを着て、大量にテレビ画面に映るのを見て、
どっかでみた風景だわ…あぁ昔の入学式卒業式のおかぁちゃんたちやんか…と思いました。
もちろん全員ではありませんが、当時スーツのお母さんは、みんなほとんどアレ。
ちょっと華やかに白いレースのブラウスで、衿にブローチとかコサージュをつけて…。
それが、いつのまにか「慶事にはカラー・フォーマル」が当たり前になり、
デザインもテーラードなどというカタいものではなく、スカートもフレアだったりします。
それはそれで、私はステキだと思っていますが、入学式や卒業式には、
それで来る人もいれば、普通っぽいワンピースやスーツで来る人もいる…
結局入卒って、いつまでたっても中途半端なものだなぁと感じています。
さて、行事の着物については、もう少し書くことがあるのですが…
息切れしないように、ぼちぼちいきますね。
1時間半ほど離れた街のニュースで カタクリの花が咲いたとやっていました…春が近くなってきています。
主人の母は嫁ぎ先の染め紋の入った
黒の羽織を仕立てて着せてくれました。
嫁ぐときは実家染め紋の羽織を仕立てて
和装桐ダンスに入れてくれました。
あまり着ることはありませんが、
両家の紋の入った黒の羽織は
ただ黒の紋付羽織ではない思いが
あり、大切にしています。
あとは人生の終わりに両家の羽織を
入れてもらいましょうと思っています。
色無地は一枚あると…といいますが、
実際には、明るいものと暗いものと、
2枚あるといいですね。
私は今、色喪用の無地を何色にするか、
ずっと悩んでいます。
親はお嫁入り道具の和ダンスには、
「一通り」入れてくれたものですね。
母も黒紋付きは入れてくれたのですが、
黒絵羽は、私が「着ないからいらない」と、
いったような気が…。
紋があると、なんとなく特別な気がしますね。
着物を着る機会がなく、数は多くはないですが着物がずっと箪笥の肥やしになっていました。
3人娘がおりまして、(高校生2人、中学生1人)卒業入学がこれから続くので、着物を着てみようと思い立ちました。
そして、黒羽織を着たいなと思いましたが、母の形見の黒絵羽は、それこそ身丈が短くて・・・
そこで長羽織を仕立てることにしました。
最初は憧れの黒羽織・・・地模様のある無地の一つ紋を考えていたのですが、使い道が限定されてしまう。
それで、自分なりに考えて割り切りも必要だと・・・
卒業入学で着る他に、小紋などに合わせてたまにはお出掛けしたい。
自分の都合の良いように解釈しました。
アンティークの羽織で飛び柄なのに1つ紋がついているもの、ありますよね。
絵羽柄じゃなく小紋柄なのに、紋がある。
そういう羽織を作ることにしました。
1つは黒地に小さめの瓢箪の飛び柄。2つ目はブルー地に小さめの扇の飛び柄。
両方ともシルバーの縫い紋を入れる。
黒は卒業式に、ブルーは入学式にと。
入卒式以外には、背守り(押し絵)を縫い付けておしゃれ紋にして。
実はもう注文しちゃったんですが・・・注文する時に、「入卒式に小紋柄は向きません。縫い紋なので、普段でもそのまま着用できます。」と、言われました。
紋がついていても、やはり略礼装にはならないんですね。
もう、自分なりに考えたことだったので、そのまま作ってもらうことにしました。
ただ、やはりあまりにも非常識・・・ということなら、式の時は羽織は脱ごうかと。
こちら北海道なので3月の体育館はやっぱり寒いのですけど。
ちょっと・・・変!ということでも、本人が分かっているか、分かっていないかでは違うと思うので、アドバイスいただけると幸いです。
①入卒式に一つ紋付き飛び柄の羽織はおかしいか?
②その羽織に訪問着や、紋なし色留袖(比翼もなく、訪問着として着る着物)を合わせるのはおかしいか?
③そもそも「飛び柄なのに1つ紋がついている羽織」ってどういう時に着るもの何でしょうか?
突然、不躾で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
余りにもおかしなことなら、コート代わりに着用して式では羽織を脱ごうと思います。
どうぞよろしくお願いします。
はじめまして。コメントありがとうございます。
ちょっと難しい質問ですね。いえ、答えは決まっているのですが、
今、着物を取り巻く環境の変化で「~です」と言い切れない部分が、
いろいろでてきていますから。
とりあえず、ご質問に一番基本的なお答えを書かせていただきます。
1、入卒に紋付き飛び小紋 これはNGです。
2、 訪問着等礼装着物には、原則羽織は着ません。
3、飛び小紋の紋付は、いわば贅沢なおしゃれ着の域をでません。
ということなのですが、ちょっと説明させていただきますと、
まず「飛び小紋」の羽織は紋が付いていてもいなくても、
単に小紋の羽織、つまりおしゃれ用の羽織です。
ただ、例えば洋服でいうとワンピース、という服でも、
紺のベルべットで白いレースの衿がついて…
というものなら、ちょっとお嬢様っぽい感じで、
持ち物やアクセを選べば、ちょっとしたご挨拶とか、
軽いティーパーティーなどそういう場面に着られます。
でも、木綿のギンガムチェックのワンピースだったら…
おのずと着られるのはごくカジュアルな場面ですよね。
飛び小紋の紋付は、この紺のベルベットのワンピースのレベル…
と言ったらわかりやすいでしょうか。
元々小紋というものは、着物に仕立てた場合、
色柄によって、改まったところにも着られるし、
下駄つっかけて近所にお買い物にも着られる…
そういう幅の広い融通のきくものです。
それに紋を付けても、一気に礼装にはなりません。
元々羽織そのものが、女性の着物の歴史の中では、
新しいものに入ります。
男が着るもの、であったためです。
やっと自由になって、羽織の「上着としての便利さ」が
重宝がられて、当たり前に着られるようになったわけですが、
元々黒の紋付は、男の正装です。
今や結婚式の仲人さんや父親も、男性は洋装になりましたが、
和装なら黒紋付きに羽織、が正式です。
横に並ぶ女性は、黒留袖、羽織はきませんでしょ。
戦後、ようやく落ち着いた暮らしができるようになっても、
着物はなかなか大変でしたから、
ちょっとしたご挨拶などに、男物の黒紋付きをまねて、
普通の着物の上にそれを着たら「改まった感じになる」
というところから、女性の黒紋付きが始まったわけです。
それが少しずつ形を変えて、柄のないものは「弔事用」
絵羽柄のある黒は「慶事用」になり、
やがて「紋がついて無くても、黒の絵羽ならお祝い用に
なってきたわけです。
また、元々着るなせら色無地や付け下げ訪問着がふさわしいけれど、
そんないい着物はなかなか…ということで、
普通の小紋に黒絵羽を羽織ることで、
ちょっと格をあげて「略礼装」とする…と、
これはだれがいったわけでもなく、着物の歴史の中で、
社会が多様化してきたために考え出されたこと。
何度か書いていますが、近所のお通夜には縞の着物に、
黒の一つ紋の羽織、でお焼香に行ってもよかったのです。
それが少しずつ余裕が出てきたら、じゃ色無地あるんだから、色無地の上に黒絵羽で…
なんてことになってしまいました。
実は、とてもイレギュラーな着方なのです。
本来入卒以外の場面で、礼装に羽織を着ることはありません。
留袖や訪問着の場合、防寒で着るなら「道行き」です。
ここでめんどうなこと…のお話になりますが、
今、着物のことが本当にわからなくなっているわけです。
私は今年67歳ですが、同じ年の友人知人で、
着物を着られる人は限られます。
まして着物のしきたりだの決まり事だのになると、私がいつも質問される側です。
今20代の方が、知りたくて聞いても「お母さんではわからない」
「おばぁちゃんでもわからない」という年代なんですね。
実は呉服屋さんでもまちまちだったりすることがあります。
紋がついていれば飛び小紋でも紋付、という方もいます。
それは「紋がついていれば」を優先事項とした考えです。
小紋ってなんだろう、羽織ってなんだろうと考えれば、
紋が付いていても、小紋は小紋…
という答えになります。
周囲の方もわからなかったり、誰かに聞いたことで
ずっとそれを信じていたりする場合が多いですし、
最初から「そんなこといいじゃない」と考える方もいます。
いつも言っていますが「式」と名のつくところは、
自分がオシャレを楽しむ場所ではありません。
何のために着るのか、を優先するべきと思います。
相手のことを考える、場合を考える…。
実は、今回のレンタルのことでも、問題があって、
相手のお宅のひとと合わせるとか合わせないとか…。
昔からの「ふつう」なら、三親等までは黒留、ですんでいたものを、
妹のほうが先に嫁に行くとか、30すぎて振袖は着たくないとか、
いろんな状況で、変えた方がよかったり、変えざるをえなかったり…。
今、そんな状況です。
なので、まずは何をどこまでハズしたら失礼にならないか、
そんなことを考えなければならない時代なんですね。
入卒ともなれば、たくさんの保護者の方がお見えになられるでしょう。
その中で「あれはおかしい」という人もいるかもしれないし、
今の時代、いいじゃない、という人もいれば…ではありませんか。
その中で、私は「緩めたくない部分」を、伝えていきたくて、
それを書き続けているわけです。
答えになっているかどうかわかりませんが、
この程度でお許しください。
とてもスッキリしました。
「飛び小紋の紋付は、紺のベルベットのワンピース」・・・すごく分かりやすかったです。
当初、まずはタンスの肥やしになっている着物を着ようと思いました。
入学卒業式に黒羽織も着てみたかったです。
でも、ひとつの羽織を欲張っていろいろに着られたら・・・と思ってしまったんです。
①、②、③の質問の答えは・・・実は「やっぱり」と思いました。そうじゃないかとは薄々思っていたので。
やはり入学卒業式には、飛び小紋の紋付羽織はやめておこうと思います。
色無地か訪問着にしようと思います。
そして、また無地や江戸小紋柄の一つ紋付羽織も作りたいと思いました。
数少ない着物ですが、今までタンスの肥やしにしてきたので新しく着物は作らないで、羽織を作って楽しみたいと思います。
とんぼさんのブログ、これからも楽しみにしています。
ありがとうございました。
少しはお役にたてたようで嬉しいです。
ところで、紋を付けることにこだわっておられるようですが、
羽織に紋を付けると、また着る場合が狭くなります。
背中にひとつ、なにかアクセントとして、
というなら「遊び紋」にしておくか、
縫い取りにしておくと、どうにも紋がジャマで
着る機会が減る…なんてときに、
とってしまうこともできますよ。
染め抜き紋は、消すのにたいへん手間とお金がかかります。
2歳ずつ離れた3人娘の卒業入学が毎年続きます。(受験が毎年・・・)
紋は縫い紋にしますね。
ありがとうございます!
そういう理由でしたか。
それでは紋が必要ですね。
いずれあれこれ忙しい年月を過ごされた後は、
普段に着物をお召しになってください。
その時は自由な羽織も必要になりますね。