平絹のじゅばんです。色も柄もあまり見ないので入手しました。
これは傷みの具合によるのですが、できたらもう一度じゅばんにしたいと思っています。
実物は写真で見るより、もっとくたびれた感じです。
色はあまり見ない「水色」、和名で言うと「甕覗き」の少し赤みがある感じ…でしょうか。
布と柄から言って、元は着物だったのではないかという気もします。
あまり上質ではありませんので「家織り」かと思います。そうなると「染で華やかな柄」というのが定番ですから。
柄はこれもそんなにはない「桧扇」「市女笠」があります。
市女笠は、柄を「巾子(こじ)」と笠部分を分けて描いてますので「皿と伏せたそば猪口」みたいに見えますね。
傘部分の蝶なんか、おもしい意匠だと思います。
こちらの黒いもの…これがねぇ…最初は建物を遠くから見た図かなと思ったのですが、
それに「蝶足」がついてます。道具…とすれば…とよく見たら「棒」がついてる…ようにも見える…?
虫かご…ですかねぇ。平安時代から「虫の音」を楽しむ風習はありましたし。
貴族などは繊細な細工の虫かごに、鈴虫などいれて風流を楽しんだわけです。
この道具のまわりにひらりと流れているのは「布」ですが、元をたどれば「市女笠」についた布。
これを「虫の垂絹(たれぎぬ)」といいます。それで「虫」にかけたのかなぁと思っています。
当時の女性は顔を見せないのがエチケット、男性は見ないのがエチケットでしたから、
大きな笠をかぶってまわりに布が…簡易テントみたいですな。
これは中を見にくくするのと、本当に虫をよけるため。
市女笠については、過去記事のこちらをどうぞ。とんぼのイラストつき説明があります。
この「垂絹」部分の花柄、あまりみない「葵」ですね。葵といえば徳川…じゃなくて、
こういう場合は「神紋」を考えます。この葵、茎が二本k「二葉葵」で賀茂神社の神紋です。
またそばの花は「桐」と思われます。桐は皇室が十六八重菊の代替紋、あるいは副紋として使いました。
功績のあった家臣などに与えたりしたわけです。
さて、この黒いもの、なんだろなーと気になりますが、先に進みましょう。
本題の「繰り回し」のお話です。これ、最初は着物だったのかもしれません。
それはともかく、こういう色ですから汚れもヤケも目立つんですよね。
で、一度繰り回してじゅばんに縫い直した…けど、こういう色だからまた汚れちゃった。
でももったいないからまた洗い張りしてじゅばんにした…というところかな…。
袖口側に、元の縫い跡がありありと残っています。
これだけもったいながって使っていますから、最初の汚れもあるはず…と、
袖付けをちょっと解いてみました。ありましたー思いっきり汚れた跡が。
あとは部分的にヤケがありますが、下が薄い色なので、それほど目立ちません。
全体ヤケかどうか、揚げ部分を解いて見ましたが、ほとんど変わりませんでした。
おくみをつけたように縫ってありますけれど「つまみおくみ」。
背縫い側は、あけると汚れの線はありませんが、裾の裏側の返しの部分に背縫いと思しき部分があり、
そこがかなりの汚れ…つまりこれ、前後も変えてるってことですね。
袖も裏は別布がついています。単のじゅばんではムリだと思うので、薄い羽二重つけますかね。
こんなふうに何度も解いて、きれいにでるところをできるたげキレイに見せる。
これが和裁と着物の妙でもあります。長方形の集まりであればこそ、可能なこと。
今回は、この着物にとって何度目になるのかわからない繰り回しですが、
もう一度働いてもらいたいと思っています。
布力が残っていますように。
好きです。
布力があれば、素敵な長襦袢になりますね。
ほんとに優しい色なんですよね。
こういう色の襦袢はもっていないので、
着てみたいと思っています。