ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物と腕時計

2015-07-03 17:25:54 | 着物・古布

 

まぁ毎日更新していたものが、ずいぶんと「おさぼり魔」になっておりましてすみません。

とりあえず、お天気にもふりまわされつつ、なんとか元気にあれこれ、追いまくられております。

なんでこうも細かい用事が湧いてくる?分身の術ができたらなぁ…の日々、

やっと少し、着物関係話題です。

 

先日、腕時計を修理に出しました。まだ見積もりが出ていないので、

いつ戻ってくるか…そのまえにオーバーホールだけで動くのかも、未定ですが…(グスン…)。

 

さて、みなさんは着物をお召しで、腕時計を見るとき、どんなふうになさいますか?

先日よそ様のサイトでのお話、TVで『着物での時計(文字盤のある方)は、手首の内側にして時間を見る。

これは脇があがって身八つ口が開かないようにするため』というお話があったそうです。

確かに…着物は腕を上げたりヒジを上げたりすると、身八つ口があいているため、

中がチラリと見えますね。だから男性のように時計を手の甲側にしていると、

それを見ようとしてヒジがあがって、身八つ口から見えてしまう…んーちとオーバーかなぁ…。

かなりあげないと、袂がつながってますからそんなには見えないと思います。

男性の場合は、例えばスーツだとYシャツの袖で時計が隠れてしまうことが多いから、

一度腕をぐっと伸ばしてシャツがあがるようにして、そのままヒジを曲げるわけです。

ヒジテツ…のスタイルてすねぇ。だからかなり腕は上がります。元々男性の方が動作は大きいですしね。

女性は手の甲側に時計をしていても、そんなにヒジをつき出したりしないと思います。

だから、身八つ口から見えるか見えないか…という実際のことより「万が一見えることのないように」という

これは「しぐさ」として、和装も洋装も女性らしく、しとやかに…の意味合いの方が強いと思われます。

 

それと…洋服の影響なのか、最近裄が長い着物を好む方が増えている…と、

呉服屋の奥さんが言ってました。極端な方は、手を下した状態で、手の甲にかかるようにと。

十二単の御姫様じゃないんですから…。

着物の裄は、手を横にあげた状態で測ります。洋装は手をおろした状態で測ります。

これは、仕上がると、手をおろしたときに手首が隠れるか隠れないかの違いになります。

着物はそれでなくても腕が上げにくかったり、袖(袂)があったりして、手を伸ばして何かをとるとか、

手元で何かをするというときは、手首まで着物で隠れるような状態では、作業しづらいし汚れます。

普通に測った裄丈で、普通に着て、手首のぐりぐりにかかるかかからないかの長さであれば、

腕時計に限らず、なにかと煩わしい思いをしなくて済むと思いますがねぇ。

 

ところで元々「身八つ口」ってなんだ?…ですが、検索すると、どうもピンとこない…

つまり「何で開いてるか」、ではなく「開いているためにどう使うか」の説明だったり、

おおざっぱに「やがてこうなった」…が多いです。もちろん着物を体に添わせるためとか、

そういう理由はそのどれもが間違いではありません。

また「授乳しやすい」とか、ちょっと砕けて「手を入れやすい(男性のため)」なんてことも。

でも、いずれにしても「そのために開いている」…というのは私はどうもなぁと思っています。

だって着物のカタチというのは、必要に合わせて変わってきているから。

 

私は専門家ではありませんので、ここから先のお話は、あくまで私が

「いろいろ資料なんか見ていると、こういうことだと思う」ということを書きます。

 

着物は、いわゆる「十二単」の一番下の「小袖」が発展して表着になった、と言われています。

小袖は、いつも言いますが「袖そのものが小さいのではなく『袖口』が小さいもの」。

つまり、十二単の袖のように、全部フルオープンではない、ということです。あれは「大袖」といいます。

その手首の詰まったものが、表着として色柄つけられて着始められたわけです。こんな感じ。

        

          

 

この小袖は、今とは違う形です。身幅はとても広く直線的、袖着けはぐるりと全部ついてて、

今の身八つ口のようなアキもないし、袖の「振り」もありません。

着方は今よりずっとグズグズです。髪を結っていませんから衿は今ほど抜きません。

帯は細くて今より下に締めます。

さて…時代が下がるにしたがって、髪を結うとか、帯が広くなるとか…

そうなったら何がどうなるか…着物は身巾がだんだん狭くなり、グズっと着るより、

身に添わせるようになる、衿を抜いたとき、身丈が短いと前ばかりが上がるので身丈を長くする…

帯が太くなって腰ではなく、バスト下までくる…そうなると、袖つけが全部縫ってあると、

帯が上に締められません。だから袖の下の部分が身頃から離れたわけです。

そのへんを絵にすると…帯が広くなれば、右の赤丸部分が、当然きつくなります。

 

  

 

身頃から離れた袖は、やがて少しずつ長くなりそれが「振り」となりました。

髪型もあれこれが華やかに変化する中で、「振り」という自由を得た袖は、

今度は長さを付けることができるわけです。

「日本の女性風俗史」という本の表紙に、ちょうどいい写真がありました。

左上はダボッとした着物をゆるりと着て、長い分は、帯の上にはしょる形でブラウジングさせてます。

やがて着物は細くなり、帯幅が広がり、袖の振りができました…まんまの写真です。

ついでのことに言いますと、昔の着物は「裄」も短いですね。

これは昔の絵などにも残っています。袖が分かれてからもしばらくは裄も短かったようです。

つまり、少しずつ少しずつ、着やすいほうへと変化していったわけです。

 

           

 

ちなみに、右女性の「帯下のおはしょり」は、帯を締めてからたくし上げたもの、

ここから更に先におはしょりを作るようになるのは、もっとずっとあとの明治になってから…。

 

つまり…身八つ口の元々の理由は、袖が全部つかなくなったから…。

全部くっついていると、袖下が開いてない分、ひきつれて着づらかったわけですね。

今より衿を抜いていた時代の袖つけは、今より小さい、つまり身頃とつながっている部分が、

短い…アンティークなどでも時々見かけます。上の左下の赤い着物の袖つけもやや小さく見えます。

あまり上まで開いているので、着ると脇の中が見えてしまう…ので、ちょっと袖けを縫い足す感じです。

これも、衿を多く抜くため、着たときの肩線が、より後ろにさがるわけですから、

その分、脇がツレないように袖は身頃から離れるわけです。

 

必要に応じて、開いた・広がった…ということで、あけてみたらいろいろ使い道が広がった…

ではないかと、私はそう思っています。つまり何かに使うためにあけたというより、

着物を着るために都合よく形を変えたら、ほかに使い道が出てきた…ということ、だと。

 

着物の進化は、着られなくなったことで、それまで以上に変わるための時間が

かかるようになってしまいました。というより「変わりようがない」状態で止まってる…。

順当に普通に着られ続けていたら「このほうがいいよね」も、順当に変わったと思うのですが、

元々の着物のことがわからなくなっているために、なんだかとんでもない変わりようを

突然したりするんですね。

まず基本があって、それをどうかえていくか…は「好きなら何やったっていいじゃない?」とは、

ちょっと違うものだと、私は思っています。

あぁ久しぶりに着物のお話しましたー。


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8 コメント

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Unknown (陽花)
2015-07-03 22:29:59
お忙しいのは存じていましたがしばらく更新が
無いのは寂しくて・・・お疲れが出ているのかと
心配でした。
やっぱり着物話題はいいですね。
返信する
Unknown (古布遊び)
2015-07-04 08:24:01
ここしばらく更新がなかったのでどうされたのだろうと思っておりました。
お元気そうで何よりです~

最近は裄が本当に長いですね。
若いころに作った着物は短いーーでも何だかこの頃はもう少し長いほうがいいなあと気分的は思うのですが。。。
あまりに長いのもどうかなと、、、悩みどころですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2015-07-04 18:28:39
陽花様

いろいろご心配、ありがとうございます。
いろいろ生活が変化しました。
主人がいなくなっただけで、
あれこれあるものですわ。
いろいろぼちぼち書き溜めてますので、
ゆるゆるお付き合いください。
返信する
Unknown (とんぼ)
2015-07-04 18:32:27
古布遊び様

ご心配ありがとうございます。
元気でっせー。

裄は昔通り測れば、着たときに着易く、
見た目も慣れているものなのですが…。
古着の見事にツンツルテンもいれば、
御姫様みたいに長いのもいれば…です。
私も若い時のものは、自分の方が
肉付きよくなった分、そちらにとられて、
あれっ短い…があります。
全部仕立て直すか、自分が痩せるか…
ムリな方は…どっちもですぅ…。
返信する
Unknown (なな吉)
2015-07-05 05:52:56
どうも~そのよそ様のサイトです。
身八口の出現、なるほどですね~
着物が日常着だったころはそうして変化・進化し続けていたのですね。

裄は長いのよりちょっと短めのほうが私はこざっぱりしていて好きです。
長いともっさりして見える気がするのです。
いやただ単に小さい私が裄の長い着物を着ているといかにも大きいのを無理に着ているように見えるから。。。
返信する
はじめまして。 (みどり)
2015-07-07 22:07:27
時々、読ませていただいております。
裄のことですが、やはり長くなりましたね。
私もなぜなのか考えたことがあります。
洋服感覚で着るからということもありますし、着物が普段着ではなく、礼服もしくはおしゃれ着になってしまって、着物を着て家事をするということが無くなってしまったからなのかとか。
長い裄が当たり前になると、古い着物が着られないので私としては困ります。
返信する
Unknown (とんぼ)
2015-07-12 16:14:14
なな吉様

お返事遅れてすみません。
寄る年波で…グズっておりました。

着物のカタチのあれこれって、なくてもいいんじゃないとか
そういうこともあるんですが、結局それもあっての着物かな、
なんて思っています。
裄の長いのは、どうも私なんぞはだらしなく見える気がして…。
母の言葉を借りれば「おひぃ様でもあるまいに」…です。
自分にとってのちょうどいい丈というのは、動きも考えなきゃ
何ですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2015-07-12 16:20:10
みどり様

お返事遅くなってすみません。

確かに、着物で家事仕事をすることは、
無いに等しい方が多いでしょうけれど、
ちょっとコーヒー飲むとか…そんな日常のしぐさでも、
長い袖口は、うっとおしいものだと思うのですが…。
「目に慣れる」ということは大切なことで、
例えばジーンズなら、公園の階段に座って
アイス食べていても、なんか自然でいいなぁと思うけど、
イブニングドレスみたいなのでそれをしたら
「なんであのかっこうで」と思います。
洋装では、そういうことが目に慣れて」いますから
判断できるのですが、
着物の「普通の感じ」というのがなかなか見られないから、
イメージを新しく作ってしまうのでしょうね。
長いほうがかっこいいとか…。
着物が途切れてしまったということは、そんなところでも、
変化の違いが出てしまうのだと思います。
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