たまたまコメントでいただきまして、そういえば知らないヒトはきになるかな…と思いまして。
「ぐしじつけ」とか「しつけ」のお話です。
礼装着物を出す時間がなかったので、写真は小紋、裾には「飾りじつけ」、松葉ですね。
先に一言「しつけ」は「仕付け」なので、「し」なのですが、ヒトによって「ぐし」など前に言葉が来ると
「○びつけ」と発音する方もいらっしゃいます。言いやすいから代わったんですね。同じ意味ですので。
「ぐしじつけ」は留袖の裾や袖口の、ごくこまっかーい縫い目の白糸、
あれはぞべ糸といいます。それで縫ってあるもの。
普通、仕立てあがった着物を見ると、上の写真のように、裾や袖のグルリに
ざくざくとした縫い目(二目落としなどいろいろ)で、あちこちとめつけてあります。
これはほんとの「しつけ」ですから、取って着ないと恥ずかしいです。
「取り除いたしつけ糸」を母は「解きそ」といいました。
昔のヒトは、仕立て下ろしの着物に、この解きその取り忘れがあると
裸であるいているより恥ずかしいことだ…といったものです。(私はよくぶらさがっていたりするので要注意です)
写真の小紋の袖口ですが、こんな感じにザクザク。(何年このまま置いてあることか…)
でも「ぐしじつけ」は「取らないもの」というのが、現在の多数意見です。
留袖などの格の高い着物は「総ぐし」といって 袖口、裾、褄下、掛け衿、内揚げ の5箇所にかけます。
普通の着物であればちりめんや綸子などの絹物のときに部分的に使われます。
最近のたとえば上の小紋のようなものは、内揚げに「ぐしじつけ」がしてありませんが、
ちょっと昔の着物だと、ちりめんモノは、よく内揚げにも「ぐしじつけ」がしてあります。
どこにつけるかは、縫い手のキモチ、といったらへんですが、面倒でもぐしじつけにしておけば、
布がたぶったりずれたりしないのできれいですから。
元々は白のぞべ糸が基本ですが、舞台衣装などや、装飾として必要な場合は
目立つ色にしたり、逆に生地に近い色を使ったりもします。
このあたりがヒトによって、また着物によってよっていろいろなんですね。
「しつけ縫い」については、2007年に記事を書いていまして、そこから丸々コピってきました。
手抜きですみません。
<平じつけ> 表・裏、同じように目が出るよう縫う。きせをかけるときに使う。
3センチくらいでザクザク、なのですが、「目を揃える、場合」と
「大小にする場合」があって「大小」は裏の目は2~3ミリくらい
表は3~4センチくらい、これは「一目落とし」とも言われます。
帯の場合は目を揃えるほう、羽織の衿の仮じつけは「大小の目」のほう、
と目的によって使い分けます。
<二目落とし・三目落とし> これは、縫い目の並びが説明図などで使う
「一点鎖線」「二点鎖線」と同じようになります。
図にするとこんな感じ、「-」が長い縫い目、「・」が小さい縫い目です。
二目落とし 「-・-・-・-・-」
三目落とし 「-・・-・・-・・-」
<両面じつけ> 「落とし」と似ていますが、こちらは「・-・ ・-・ ・-・」。
これ、図のとおりに縫うと表と裏が同じ縫い目になります。
これは帯の飾りじつけなどに使われます。
<ぐしじつけ> 留袖などの袖口に白い糸で細かく縫ってあるあれです。
極端なことを言えば、たとえば和裁の先生の中でも
「しつけはどこまでいってもしつけ、ぐしであろうと、つけたまま着るべきではない」とおっしゃる方もいます。
「ぐしじつけ」もしなくてもいいように縫うのがウデ、という考え方もあります。
だからしつけは切る前にすべてとってしまってかまわない、という意見もあります。
ただ、どうしても「伝承」されてくることは「多数決意見」が多いわけで、
母は「昔はしつけはみんな取ったもんやけど、このごろは『ぐし』は取らへんで」といいました。
留袖など礼装の真っ白なぐしじつけは「取らない」とするのが今は普通になっています。
でも、喪服の場合は、ぐしじつけを「する」「しない」が地方地域で違ったりもするんですね、これが…。
その場合は、郷に入っては…ですね。
元々「ぐしじつけ」というのは「きせ」が戻ったり「ふき」が飛び出したりするのを抑えるもの。
たとえば洋裁の場合、縫い代はほとんど左右に開きます。
最近はロックミシンしながらカットというものが多いので、片側に倒れているものもありますが、
基本、縫い代は割る、のが洋裁です、このときちゃんと左右に均等に広げます。
着物の場合は開かず(開く部分もあります)片側をほんの少し縫い目の上にのせるようにします。これが「きせ」です。
また「ふき」は、裾や袖口にちょっとだけ見えているもの。これも洋服とは逆で、洋服は裏地が表に出ないように、
たとえばスーツの袖口などは1~2センチほども裏地を控えて縫います。
フキは、裏地を表まで出すわけですが、だぶだぶと出すぎてしまうと困るわけです。
じゃアイロンで抑えちゃえば…いえいえフキは「つぶさない」のが基本。
だからちょっとふっくらのぞいているのがくずれないように、ぐしをかけるんですね。
普通の着物の場合は、仕立てた着物をお客様にお届けするまでの間に、
縫い目を落ち着かせ、型崩れを防ぐために大きな針目であちこちしつけをかけておくわけです。
自分で仕立てたときは、すぐに着ないで「おし」をかけて、縫い目や折り目を落ち着かせます。
着物をしまうときも、フキがつぶれないように重ねるのがいいのです。
昔は裾などはフキ綿をたっぷり入れてかなりふっくらさせたものなのですが、今では花嫁衣裳くらいのものですね。
最近は「ふっくら」は、はやらないらしく、綿ではなく布だけ…のペタンコです。さみしいですわ。
和裁は元々学校で習うものではなく、親から教わるものでした。
得意でない親は近所の和裁のうまい人のところで習わせたりしましたが、
その先生とても、別に和裁学校へ行ったわけではなく、親や姑に習ったわけです。
いい着物を着る暮らしなら当然、裃や袴の縫い方も覚えたでしょうし、
庶民なら袴なんぞ縫うよりは、おとうちゃんの印半纏が縫えたほうがいいわけですね。
つまり、みんな「その家流」だったわけです。やがて個人で和裁教室をひらくことになっても、
その人は自分が習った先生、のやり方を教えるわけですから、
大筋基本は同じでも、細かいところはちがっていたりもします。
和裁師には国家試験がありますが、別に免状なしでひとさまの着物を縫ってお金を稼いでも、
詐欺師でつかまることもなければ、無認可でやっていると訴えられることもありません。
食品や薬品を使う仕事は(たとえば料理を教えるなど)、免状がないとできない職業もありますが、
和裁、着付けは免状なしでもできる、つまりこれは「実力の世界」なんですね。
その先生が「しつけなんてものは着るときは取るものだ、取っても崩れないように縫うのがウデだ」と
そういって実践しているなら、それもひとつの考え方だと思います。
ただ、前述のように「多数決」が通りのよいのが世間様というものです。
見た目きれいだから取らない…でもよし、私はこの先生の考え方に賛成、と少数派にはいるもよし。
どちらにしても、自分で選ぶことと、選ぶからには理由をちゃんと理解していることが大切だと思うのです。
そしていつもいうことですが、着物は衣装です。
それを着る目的には、まずいつの場合も「礼」の心があるべきだと思います。
写真の小紋は、ちょっと前まで「なんかハデになっちゃったかな…早く着なきゃな」
なんて思っていたんですけれど、最近は「これから着られるじゃん」と、思うようになりました。
ちょっと八掛の色がこのままでいいかどうか、思案してみましょう。
それから、写真の小紋すてきですね。ちょっとアンティークな感じで。ほしいわ~~~こんな着物
縮緬など柔らかものは、揚げの部分
目立たない糸でぐし縫いします。
手のかれた先生はそういう事をする
必要が無いお仕立てされるんですね。
素敵な小紋ですね。
プロのお仕立てはしつけまで綺麗に
揃っていますね。
ちょうど少し前に「ぐしびつけ」(母はそう言います(^^;)の話題があがっていました。
母には、訪問着など格のある着物は付けておくものと言われていて、そうしていましたが、今は留袖以外では取る傾向にあるらしいです。つけたままは古い考えになってきているとか。
でも母が縫ったものだし、とても細かくて美しい縫い目なので、古いと思われるだけなら別にいいかと。
その方にも、そういう傾向にあるというだけで地方によって人によっても違うから、お母様が縫ったものならぜひそのままで!と言われました。
他に和裁士の方がおっしゃっていたのは、紬にも付けてなんて言われることがあり、それは違うだろう、と。
まあ、決まりがある訳ではないし、着て行く場所や相手に失礼にならなければ、柔軟に考えてよいですよね。
だんだん変わっていくんですよね。
あの縫い目はほんとに細かくてきれいです。
それを装飾としてつけておいても、
ちっともかまわないと思います。
袖は…そりゃ丁寧すぎー。
でも、つけたがる人もいるのだそうですよ。
解くときの面倒さをかんがえなはれって。
あっ、それも今は人任せですもんね。
きれいに楽しく、そして礼儀正しく、
言ってみりゃ当たり前なんですよね。