たぶん「踊り」の衣装か、もしくは芸妓さん関係の方の着物だと思うんですが…。
何しろこの柄で、染めの五つ紋です。
前は「藤娘」…別にそれだけのこと?
いえいえ、ちょっとぐるりと回ってみましょう。
左の脇からうしろに回ると…おや、若い「鷹匠」さんです。
そのまま後ろに行くと…釣鐘に…七つ道具しょった弁慶?「釣鐘弁慶」ですね。
このアタリでお分かりの方もいらっしゃるでしょうね。
この柄「大津絵」の縁起絵を並べたもの…です。
もう少し回って右前は…縦長になっちゃいましたが、左は大きな「矢」を持った武者。これは「矢の根」と言います。
立っているのは「槍持ち奴」。
袂にはひょうたんに「奉賀帳」。「奉賀帳」というのは、寄進帳ともいわれるもの、
社寺の修復などに掛かるお金などを、寄進してくれた人の氏名と金額、物品などを記したものです。
ひょうたんは、大津絵では「ひょうたんなまず」で、なまずとセットなのですが、
さすがに振袖には「なまず」はねぇ…だったのでしょうね。
大振袖で、こんなに長いです。
「絵」としてのうまさといいますか、品…みたいなものでいうと、中の上…くらいかなと思っています。
ただ、大津絵そのものが、昔の漫画みたいな絵がおおいですからね。
大津絵の題材を、着物の柄として「日本画のように描いてみました」みたいな、中途半端な感じがします。
ところどころに飛んでいる三角は「鱗」かと思ったのですが、大津、というところから、
比叡山など、京都との境にある山を表しているのだと思います。
地色の鮮やかな水色も、水運の要であったことから「琵琶湖の水の色」ではないかと。
裏は紅絹、この鮮やかさがなんともなまめかしいですね。
大津絵は、大津が宿場町として栄えていたころの「みやげもの」として人気があったもので、
元々は仏画から始まったといわれる「意味をもつ絵」。
大津絵については、なんどか書いておりますので、こちら、とか、こちら…ご覧下さい。
先に書きましたように、ひどい色あせもあり、汚れやシミも…で、再生させるのはちと不可能。
柄部分に全部糊置いて、地色だけ濃い色に染め替えれば…ですが、そうなるといくらかかることやら…です。
紋の部分もありますからねぇ。
元々「これは大津絵が題材だわ」という、そのおもしろさだけで、入手したものです。
たぶん、こういう柄は、あまり出ないと思いますので。
見事な錦紗縮緬です。贅沢な振袖だったでしょうね。
例えばこの振袖が、今完全な状態で残っていたのだとしてら、そりゃぁかなりの価格になると思います。
だからといって、今成人式に、この振袖を着る方はいないでしょう。
幸か不幸か、とても着られないダメージだらけで、かろうじて柄の部分だけはきれい…という状態です。
だからこそのお値段で入手できたわけですが、この着物だって、華やかなときを過ごした時間は
ちゃんとあったはずなんですよね。人間にたとえるのはおかしいかもしれませんが、
どんな栄光を背負っていても、最後に誰にも知られず橋の下で看取られもせずなくなるような…
そんな最後は寂しくて悲しいです。
着物も、いつの間にか人知れずボロになって朽ち果てるのは、同じ気がするのです。
使って使って、もうどうにもならなくなって、人の手で始末してあげる…それが、
自然に対する感謝でもあると思います。
この着物は、着物として着るのはもうできないランクです。
柄を生かして…というような、素晴しいアイデアがあれば、それで生かしてあげることもひとつ、
そうでなければ、年寄りが、若いころの華やかだったころ、一番よかった時代を繰り返し語るのをきくようなキモチで、
この着物を眺めて、大事にしまって、お疲れ様と言ってあげようと思うのです。
そういうものばかりが多い我が家ですが、これも人と同じで、出会う縁(えにし)で、出会ったのだと、
そんなふうに思っています。これも年のせいなのでしょうかねぇ。
ついついタイトルにつられ 読んでいますと、
わぁ~!凄い!!振袖ですね!
思わず コメントしちゃいました。
たくさんの人の手を経て、とんぼさんの手にわたって
着物としては寿命でも、しあわせだと思います。
舞台衣装だとしたら、袖の紅絹がひらひらして
きっと美しかったでしょう。
漫画チックに見えますのに、お顔つきなどはとっても凝っていて、面白いですねぇ。
ホントにこういう昔の感性ってのは何処に行って・・・・っと、毎回のご唱和になってしまいます~。
すごく贅沢で、とっても真似は出来ま
せんが、このお着物は何度袖を通された
んでしょうね。
はじめまして、コメントありがとうございます。
すごい振袖ですよね。
舞台や、踊りなどでは、きっと映えたことでしょう。
びんつけ油のにおいもしてきそうです。
これを着ていた人は、今いくつかなーなんて、
いろいろかんがえています。
お疲れの着物ですから、いいたとう紙に入れて
休ませてあげたいです。
お気をたしかにっ!!
いい加減のように見えて、お顔はきれい、
奴さんなんて見事です。
今はねぇ…いまは…いまは…
今日はエコーをかけてみました。
ほんとに誂え…なんて、何度もできない贅沢ですね。
たぶんそんなには着られていないのではないかと思います。
キレイだったら…と思いますが、それだとたぶんウン十万…ですね。
今でしたら どなたが・・・
やはり とんぼさん?
着物もとんぼさんに引き取られて幸せですね
花柳界のかたでも、こういう縁起物みたいなのは、
着ないんじゃないでしょうか。
私…状態よかったら着ちゃうとこですが、病院に連れて行かれそう…?!