ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

藤娘柄の振袖

2012-01-29 10:32:43 | 着物・古布

 

たぶん「踊り」の衣装か、もしくは芸妓さん関係の方の着物だと思うんですが…。

何しろこの柄で、染めの五つ紋です。

前は「藤娘」…別にそれだけのこと? 

 

   

      

いえいえ、ちょっとぐるりと回ってみましょう。

左の脇からうしろに回ると…おや、若い「鷹匠」さんです。

 

      

 

そのまま後ろに行くと…釣鐘に…七つ道具しょった弁慶?「釣鐘弁慶」ですね。

 

         

 

このアタリでお分かりの方もいらっしゃるでしょうね。

この柄「大津絵」の縁起絵を並べたもの…です。

もう少し回って右前は…縦長になっちゃいましたが、左は大きな「矢」を持った武者。これは「矢の根」と言います。

立っているのは「槍持ち奴」。

 

               

 

袂にはひょうたんに「奉賀帳」。「奉賀帳」というのは、寄進帳ともいわれるもの、

社寺の修復などに掛かるお金などを、寄進してくれた人の氏名と金額、物品などを記したものです。

ひょうたんは、大津絵では「ひょうたんなまず」で、なまずとセットなのですが、

さすがに振袖には「なまず」はねぇ…だったのでしょうね。

 

             

 

大振袖で、こんなに長いです。

 

                   

 

「絵」としてのうまさといいますか、品…みたいなものでいうと、中の上…くらいかなと思っています。

ただ、大津絵そのものが、昔の漫画みたいな絵がおおいですからね。

大津絵の題材を、着物の柄として「日本画のように描いてみました」みたいな、中途半端な感じがします。

 

ところどころに飛んでいる三角は「鱗」かと思ったのですが、大津、というところから、

比叡山など、京都との境にある山を表しているのだと思います。

地色の鮮やかな水色も、水運の要であったことから「琵琶湖の水の色」ではないかと。

裏は紅絹、この鮮やかさがなんともなまめかしいですね。

 

                

 

大津絵は、大津が宿場町として栄えていたころの「みやげもの」として人気があったもので、

元々は仏画から始まったといわれる「意味をもつ絵」。

大津絵については、なんどか書いておりますので、こちら、とか、こちら…ご覧下さい。

 

先に書きましたように、ひどい色あせもあり、汚れやシミも…で、再生させるのはちと不可能。

柄部分に全部糊置いて、地色だけ濃い色に染め替えれば…ですが、そうなるといくらかかることやら…です。

紋の部分もありますからねぇ。

元々「これは大津絵が題材だわ」という、そのおもしろさだけで、入手したものです。

たぶん、こういう柄は、あまり出ないと思いますので。

 

見事な錦紗縮緬です。贅沢な振袖だったでしょうね。

例えばこの振袖が、今完全な状態で残っていたのだとしてら、そりゃぁかなりの価格になると思います。

だからといって、今成人式に、この振袖を着る方はいないでしょう。

幸か不幸か、とても着られないダメージだらけで、かろうじて柄の部分だけはきれい…という状態です。

だからこそのお値段で入手できたわけですが、この着物だって、華やかなときを過ごした時間は

ちゃんとあったはずなんですよね。人間にたとえるのはおかしいかもしれませんが、

どんな栄光を背負っていても、最後に誰にも知られず橋の下で看取られもせずなくなるような…

そんな最後は寂しくて悲しいです。

着物も、いつの間にか人知れずボロになって朽ち果てるのは、同じ気がするのです。

使って使って、もうどうにもならなくなって、人の手で始末してあげる…それが、

自然に対する感謝でもあると思います。

この着物は、着物として着るのはもうできないランクです。

柄を生かして…というような、素晴しいアイデアがあれば、それで生かしてあげることもひとつ、

そうでなければ、年寄りが、若いころの華やかだったころ、一番よかった時代を繰り返し語るのをきくようなキモチで、

この着物を眺めて、大事にしまって、お疲れ様と言ってあげようと思うのです。

そういうものばかりが多い我が家ですが、これも人と同じで、出会う縁(えにし)で、出会ったのだと、

そんなふうに思っています。これも年のせいなのでしょうかねぇ。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
凄い! (naorin)
2012-01-29 11:20:39
はじめまして!
ついついタイトルにつられ 読んでいますと、
わぁ~!凄い!!振袖ですね!
思わず コメントしちゃいました。
返信する
みごとですね (えみこ)
2012-01-29 11:35:14
どんな人が、どんな感じで着たのだろうか…。想像するだけでもたのしいです。
たくさんの人の手を経て、とんぼさんの手にわたって
着物としては寿命でも、しあわせだと思います。
舞台衣装だとしたら、袖の紅絹がひらひらして
きっと美しかったでしょう。
返信する
うわーーーー!! (りら)
2012-01-29 15:30:55
またまた悶絶・・・・うーーーむ、バッタリ・・・・

漫画チックに見えますのに、お顔つきなどはとっても凝っていて、面白いですねぇ。
ホントにこういう昔の感性ってのは何処に行って・・・・っと、毎回のご唱和になってしまいます~。
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Unknown (陽花)
2012-01-29 23:03:54
何かの時だけの為に誂える着物って
すごく贅沢で、とっても真似は出来ま
せんが、このお着物は何度袖を通された
んでしょうね。
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こちらこそ (とんぼ)
2012-01-30 15:31:41
naorin様

はじめまして、コメントありがとうございます。
すごい振袖ですよね。
舞台や、踊りなどでは、きっと映えたことでしょう。
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Unknown (とんぼ)
2012-01-30 15:33:13
えみこ様

びんつけ油のにおいもしてきそうです。
これを着ていた人は、今いくつかなーなんて、
いろいろかんがえています。
お疲れの着物ですから、いいたとう紙に入れて
休ませてあげたいです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-01-30 15:37:25
りら様

お気をたしかにっ!!

いい加減のように見えて、お顔はきれい、
奴さんなんて見事です。
今はねぇ…いまは…いまは…
今日はエコーをかけてみました。
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-01-30 15:39:19
陽花様

ほんとに誂え…なんて、何度もできない贅沢ですね。
たぶんそんなには着られていないのではないかと思います。
キレイだったら…と思いますが、それだとたぶんウン十万…ですね。
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Unknown ()
2012-02-01 01:08:39
昔はこの様な絵柄を着こなせる方がいらっしゃったんですねぇ
今でしたら どなたが・・・

やはり とんぼさん?

着物もとんぼさんに引き取られて幸せですね
返信する
Unknown (とんぼ)
2012-02-01 14:27:39
惠様

花柳界のかたでも、こういう縁起物みたいなのは、
着ないんじゃないでしょうか。
私…状態よかったら着ちゃうとこですが、病院に連れて行かれそう…?!
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