「時期」なんちゃって、いつも「終わるころ」になって書くので間が抜けてます。すみません。
この時期になると、卒業式などで「袴をはくのに、着物は振袖でもいいかどうか」、
そんな質問を見るわけです。
だいたい「かまいません」とか「いいんじゃないですか」みたいな答えがあり、
レンタルなどでは「おすすめ」したりしています。
私は、やめたほうがいいと思っています。
「振袖」は女性の第一正装です。
では「袴姿」は?…元をただせば「女学生の制服」。なので元々「学生としての正装」ですね。
今でも、たとえば冠婚葬祭のおり、学校の制服は正装として通用します。
もうひとつは職業婦人が、その職業上の立場で出席する際の正装です。
だから卒業式に、女性教師が袴姿で参列するわけです。
学生の制服として袴を着用するなら、制服らしい姿が一番です。
たとえばセーラー服に、ふりふりのレース飾りをつけたら、
ブレザータイプの上着に、ラメラメの刺繍がついていたら…
ちぐはぐに見えませんか?
制服と呼ばれるものは、余計な装飾を付けず、制服本来の姿のままが正装です。
袴を学生の正装として着るなら、振袖は「セーラー服にふりふりレース」じゃないかと
私はそう思っています。
もう一つ言うなら、振袖の袖の長さは、袴には合いません。バランス悪いです。
では「女性の袴」ってなぁに…。
最初に女性が今のような形に近い袴を穿いていたのは、平安時代の宮中女官が筆頭。
緋袴と言われましたが、年齢で色分けされたりしていました。緋袴はあの巫女さんの袴です。
16歳までは濃色(こきいろ)、という紫色でした。このころの女官の袴はは引きずる「長袴」。
(後年、宮中でも、裾をズボンのようにカットした「切袴」になりました)
やがて時代とともに「女性の袴」はなくなり、それの変化したものが使われたりしましたが、
長い年月のうちに、基本「袴は男のもの」になりました。
長くそのままできましたし、男性の正装は公家も武士も形は違えどもずっと「袴着用」でした。
なので、今度は逆に「女が袴を穿くことは、特別な場合(宮仕え、神職など)を除いて許されない」と、
そういう流れになったわけです。
次に一般の女性が袴をはくようになったのは、維新以後、明治に入ってからで、
これは「女性の進学」「女性の社会進出」が始まったからです。
明治天皇の御后、昭憲皇太后は、女性にも学問が必要であることを唱え、
女学校の設立などにも、ご尽力なさった方です。学校という場所は、それまでの寺子屋形式ではなく、
椅子と机の洋風生活。授業もただおしとやかに正座してやるものばかりではありません。
で、動きの少ない着物では、学生生活に不都合…ということから、女性の袴着用となったわけですが、
当然最初は男の袴を拝借です。「女が袴を穿くなんぞ」と目くじら立てる向きもあったようですが、
女性がどんどん強くなっていった時代ですからして「フンッ!」とばかりに蹴散らして、
女性は袴を脱がなかったわけです。
やがて、男袴ではなく、女性用の袴が考案されました。
本来女袴は、短く着つけるのが普通です。普通の着物は、裾から足首は見えたら野暮、ですが、
袴の場合は、足袋とその上の足が少し見えるくらいでも構わないし、そのほうがすっきりします。
元々が「活発に動ける和装」として考案されたものなのですから、
エレガントでありながら、スポーティーであるところが魅力なのです。
明治時代の写真などを見ると、靴を履いて、袴を今のミディ丈位に短く着つけているものもあります。
宝塚歌劇団の卒業式などは、黒紋付きに袴ですが、袴は女袴で、みんな足首がかすかに見えるほど
短く着つけています。かっこいいです。
女学校で袴が制服として採用されたとき、宮中の袴の色を基本に考案されたそうです。
それで海老茶の袴が、他校でも流行したそうで、彼女たちを紫式部になぞらえて、
「海老茶式部」と呼びました。また跡見女学校では、紫をつかったそうで、
こちらは赤染衛門になぞらえて「紫衛門」とよばれたそうな。
なんか命名は逆みたいに思いますが…。
とりあえず、女学生が袴を穿いて闊歩する様は、
それまで女性や若い娘は、おしとやかに楚々として外歩きもあまりしない…だったものが、
靴を履いたり、自転車に乗ったり…活発になってきたことで、
今ふうに言うなら「まったく近頃の娘は…」というように、揶揄されたりしたそうです。
さて、そんな歴史を持つ「女学生の袴」です。
それだけでも私は振袖は合わない…と思いますねぇ。
きれいなものを着たければ、振袖を普通に着ればよろしいし、
学生としての正装で出たいというなら、スタンダードに色無地か、柄なら小紋、
袖は二尺まで…が、キマリゴト、の前にバランスのよさ…だと思いますし、
ファッションとしても、一番素敵に見えると思います。
歴史等の細かいことをいわなかったとしても、袴と振袖は、バランスがよくありません。
振袖で袴をはくと、袖ばかりがダラダラと長くて、シマリがなくなります。
それに振袖は、全体の色柄の華やかさをみせるもので、肝心の一番柄のいいところを隠すのは、
私から見れば「無粋」としか言いようがありません。
袴は行燈であっても、ロングスカートではありません。
洋服にも「それなりの着方」というものがあります。
サラリーマンで、プレタのスーツが合ってなくて、上着の襟が抜けていたり、袖口がやたら長かったり、
そんな人がいます。なんとなくしまりがなくて、イマイチですよね。
草履が隠れるほど長い袴は、それと同じ感覚です。
今は「袴」そのものを見なれませんから、どうやって着るのかも、自由になっているようで
「ブーツの時は短く着つける」なんて書いてあるところもあります。
袴は短く着て、かかとの高い草履をはくと、かっこいいんです。
かかとの高い草履を履けるのも、若いうちですしねぇ。
とまぁ、オバさんのグチと言われてしまえばそれまでですが、
はいからさん、のイメージで束髪に大きな赤いリボン、矢絣の小袖に短く着つけた袴、
そして編上げのブーツ…そんな姿が、一番初々しくて、かわいらしい門出の姿だと、
私は思っています。えぇ、もうゼッタイ自分ができないという「ヒガミ」も込めて…。
丈の長さとか、後ろ紐のリボンの結び位置とか、理想とはほど遠いですが、あれは業者側から指定があって…仕方ないですね。
私がいいなあと思うのは、卒業式ですから、紋付き色無地に袴、ブーツなら足首がしっかり見える長さ、草履なら浴衣程度の丈、リボンはちゃんと紐より一寸下あたり、という感じなんですが。
ご自分の着物を持ってくる場合、振袖になるのは仕方ないかなあとも思います。
お母様も一生物の訪問着しか持ってない可能性も高いですし、そうするとレンタルの小振袖に負けない華やかさを持つ着物といえば振袖くらいになるでしょう。
レンタルの着物の質と値段を見ると、振袖を持っていたらそれを着たいという気持ちが分かりますし、振袖を買ったら1回でも多く着たいという気持ちもあると思います。
振袖なら帯付きでとは思いますが、卒業式の日は結構忙しくて式のあと手続であちこち動き回らないといけないようなので、帯付きでは結構しんどいだろうから振袖に袴はいいのかなあと思います。
実はうちの娘も振袖に袴を合わせました。
娘の振袖は柄のない無地風の一寸変わったものだったので違和感がなかったのですが、考えもせずに合わせてしまった!!!
なんとなく、これでいいかと着せてしまいました。我ながらショック。。。 でした(笑)。
式服なのだから、袴には色無地、と決まっていて、
指定のレンタル業者はそのとおり、ピンク中心の柔らかな色揃え。
レンタルの袴に短め編み上げブーツ、ハイカラさん気分で出席したのが懐かしい。
華美にならぬように、と添えられていましたが、謝恩会は、振袖もOK。
式当日に2回、着付けてもらうのは疲れるので、実際に着て来た人は少なく、自分もワンピースでした。
柄物に袴なら、そのまま、謝恩会に2(3?)次会まででしょうね。
趣旨はわかっていても、少しうらやましかったものです。
ところで、かかとの高い草履ですが、背が低いと、店頭ですすめられることがあります。
年齢と共に履くのを控える方がよいのか、体力的に楽な方がよいということなのか、どちらなのでしょうか。
結局業者指定とか、親の気持ちとか、
そういうことが優先されるのでしょうけれど、
それが私は残念だと思っています。
学生として最後の卒業という式典に着るもの、
というスタンスがしっかり納得できれば、
何を着るべきかは、おのずとわかる…と思う私が
とてつつもなくかたくて古いのでしょうね。
中学高校で、制服のあるところは、
そのままで出るでしょう。
大学やそれ以外になると、とたんに卒業式が
卒業イベントになるというのが、どうにもねぇです。
いえいえ、キマリゴトとしては、袴には無地、が
基本とされていますが、今はもうそんなうるさいことは
いわなくなってますし。
もし私が今卒業だったら…濃い緑の無地に紺の袴で
でたいものだと思っています。
あるべき姿…の卒業式だと思います。
謝恩会…それがあるからというのも、
振袖のほうが、の理由になるのでしょうね。
ささっと着替えられないから、写真に残るから、
現代の理由は、昔にはなかったことですから、
こちらの意識も変えなきゃいけないのでしょうねぇ。
草履の高さですが、お祝い事の場合は、
中年でもかかとの高いものを履きます。
草履は、ハイヒールのように、
背の低さをカバーするために履くものではなく、
着ているものとのバランスです。
いい着物で礼装の時は高め、
紬や小紋などは低め…が目安です。
年と共に低め、というのは確かにあります。
ゲタのように台が平らではなく、
前に向けて下がっていますから、
靴で言うと、ローヒールが好きとか、
かかとは4センチが歩きやすいとか、
その人によっても違います。
私はあまり低すぎて、ゲタみたいに平らに近いのは、
足が疲れます。
草履の場合、靴のように前は同じでかかとだけ
8センチだのとなることはありません。
前も同時に少し高くなります。
そうすると履物のボリュームが多くなって、
地面からの着物の高さが変わるわけです。
そのバランスということですね。
すてきなお話ですね。うれしいです。
私は、卒業式は華やかであるより清楚であり、
なんというか「凛とした姿」のほうが、
らしい、と思うのです。
振袖を着ることがないからと言いますが、
機会はあると思うのです。
初もうでだって、友達の結婚式だって…。
でも、結局お金がかかるとか、
自分で着られないとかで、
振袖は成人式のコスチューム、
これではもったいないです。