ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物の色あわせ

2019-03-15 00:26:17 | 着物・古布

 

私、洋装のテキではありません。洋装も大好きですから。似合うかどうかは別としてーーー。

写真は昭和30年代くらいの飛び小紋。着てみたかったですねぇ。

 

さて、先日来、和装の色の使い方のお話しをしております。

これも先日書きましたが、洋装はデザインが強みです。  

デザインがあるものは、同じ色柄の生地を使っても、年代別にデザインをかえることができます。

デザインが決まったら、次に色です。つまり、年齢的なことやその人の雰囲気などは、

まずデザインによって決め、次にその組み合わせの中で色あわせをするわけです。

着物ではデザインの変えようがないので、まず年齢で着物の色を決め、あとはそれにあわせて、になり、

帯や小物の色を考える…つまり最初から色柄がメインになるのです。

          

学校で習いました「色相環」と呼ばれるもの。12色からもっと細かいものまでありますが、

大雑把なら12色、少し細かく比較したければ24色くらいでOKです。コレは24色。

 

         

 

色あわせで、洋装は同系色のコーデとか、近い色のコーデが多いです。

たとえばこの前の「涼子さん」みたいに「寒色系」とか、「暖色系」とかに偏って決める…。

上の色相環でいうなら、たとえば真上のライムのような薄緑を使うとしたら、その左側とか右側とか。

着物の場合は逆に、割と「補色の組み合わせ」「逆位置系」の色をよく使います。

 

補色と言う言葉はご存知と思いますが、補色は、上の図で1色選んだとき、反対側の色、ですね。

この組み合わせは「互いに鮮やかに見せ合う」という作用があります。

よく言えば「目立たせる」ですが、悪く言うと「ワル目立ち」?使い方に注意が必要です。

上の色相環でいうと、赤系と青や緑系、黄色系と青、紫系とか、これで洋服の組み合わせとなると

ちょっとキツすぎて、使い方難しいですよね。

ちょっと実験です。 こちらの図を10秒くらいジーっとみてください。そしてすぐ右の白いところを見てください。

 

   

 

どうですか?左の図と逆で、真ん中が青、外が黄色に近い色が見えましたでしょ。

補色残像といいます。補色と言うのは互いにとても目立たせあうんですね。 

 

補色の組み合わせ、あるいは補色に近い組み合わせ、着物なら「紫の着物に黄色や緑系の帯」

「赤い着物に緑や青系の帯」「青系や紺系の着物にオレンジの帯」など、当たり前にあります。

逆にそういう使い方をすることのほうが多いです。お互いに際立たせるんですね。

それと体全体を覆う大きな面積を無地もしくは無地感覚の一色でまとめてしまうと、着物はつまらないのです。

着物は無地以外、ほとんどが「柄 on 柄」です。

柄のある着物に柄のある帯を締め、時にはその上にさらに、柄のある羽織を着る…

それにさらに互いに目立たせあう色を使う…和装の組み合わせは考えてみるとすごいんです。

 

着物と帯の組み合わせを洋服感覚で「グループっぽい組み合わせ」にしてしまうと、

洋装なら素敵な組み合わせなのに、着物だとインパクトのない組み合わせになります。

ジミな着物なら帯をハデに、あるいはどちらもジミなら小物を華やかに…は、そういう違いから来る着方です。

着物レンタルのお店からの画像です。お二人とも20代と思われる、とてもかわいらしい女性ですが、

向かって左のかた、この組み合わせでうしろから見たら「おばぁちゃんと孫」になってしまいます。

年代で言えば、私以上の組み合わせです。

 

                  

 

このモスグリーンは、20代で着るにはちと老けすぎの色です。たとえば帯を赤くしてもムリがあります。

緑系が好きで帯が黒ならせめて着物はもう少し明度、彩度をあげたグリーンに…。

 

     

 

つまり、まず面積ひろい着物を年代に合わせる、そして帯の色…です。

黒い帯は使い方によって「化ける」色です。この緑だとちょっと大人っぽくなりますから、

この場合は小物に右のようにピンク系を使えば「「落ち着き」より「かわいらしさ」をアピールできます。

右側のかた、これでもいい組み合わせですが、着物が無地ですから、全体にちと寂しい印象ですね。

せっかく着物でおでかけなのですから、帯に柄のあるものを使ったほうが華やかです。  

 

こちらも左のかた、これも50代60代でもいい色です。もう少し赤みを強くする方がしっくりくるとおもいませんか。

お顔をぼかしてあるので難しいかもしれませんが、いずれも20代、それも前半のかたと思われます。

お世辞でなく、みなさんほんとに美人さんでかわいらしい方ばかりです。それだけに「惜しい…」。

 

 

 

右のかたは着物はジミですが、着方しだいで実年齢でもいける色です。

そういうときは帯を若く…。

 

                 

 

今回は着物と帯だけですが、小物も大事です。そして更に大事なのが「八掛」。

今回は見えていませんので、話しませんでしたが、八掛は袖口の内側と同じ色です。

これがとても重要で、ジミ目の着物を若いかたが着るときは、八掛も若い色にしないと、

またまた「おばあさんからもらったのを、そのまんま…」になってしまいます。

レンタルの着物は、最初についていたものをそのまま使っていることが多いでしょう。

たとえば上のジミなモスグリーンの着物の八掛は、おそらくクリーム色かグリーンの薄いものだと思います。

この着物の年代にあわせてあるはずですから。なのでしかたないですが、だからこそ、若い色の着物がいいのです。

大して見えるところではない…と油断してしまうのですが、八掛で着物の印象は大きく変わります。

過去記事で使った画像ですが、私物の更紗小紋。地色は紺系ですが、いろんな色が入っています。

年齢に応じて、中の1色をとる感じで八掛を変えてきました。最初の朱30代くらいまで。

からし色で50代まできましたが、そのあと紺に変えました。

今この状態、そろそろ最後の色…の年代ですが、実は年齢的に少しハデになっている気がしていますので、

グレーでもいいかなと思っています。八掛で印象がかわるでしょう?

 

  

  

 

おまけ…着物と帯のコーデ、こちらも私物です。着物の縞がちょっと色がピンクっぽく見えますが、

実際は薄茶系です。今の年ならこんなコーデですが…

 

              

 

もし娘がいたらこんな感じ。

 

     

 

着物は「カタチ」でデザインするのではなく、色柄でデザインして着るのが楽しいのですね。

私も若いときは、茶とか黒とかグレーとか、そういう色の服が好きで、ジミ好みでした。

だから今のかたが、大人の色を選ぶのは、とてもよくわかるのです。

それを着物に持ち込むと、大人になりすぎてしまう??のですね。

洋装の感覚とは別の感覚を持つように、がんばっていただきたいものと思います。

こんな画像を見つけました。これもレンタル着物です。いいですね、若々しいです。

細かいことはいろいろありますが、とりあえず、着物の色のチョイスと帯のチョイス、かわいいです。

左のかたの着物は「銘仙」と思います。ポップが標準、みたいな織物です。

こういうハジケた感じ、昭和も戦前のハヤリものです。

右のブルー着物はは帯かえてもギリギリ30までくらいですかね。左はもう20代も半ばまで。

どちらもおはしょりできてないようですね。

昔の古着は平均身長が今より低いですから、短いものが多いです。おはしょりとれなくても仕方ないですね。

 

              

 

いかがでしょうか。洋服とは違うのよ…という意味はなかなか理解していただくのは難しいかと思うのですが、

洋服には洋服の楽しみ方がある、着物には着物の楽しみ方がある…と、そこから出発してほしいのです。


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4 コメント

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Unknown ()
2019-03-16 09:41:32
素敵な記事をありがとうございます。
食い入るように拝見しました。
色あわせって本当に楽しいのですね!こんなにも印象が変わるのだと目から鱗です。特に黒い帯にピンクの小物をあわせるところなんてマジックみたい!!
こんなにワクワクしながらブログを拝読できて幸せでした。
返信する
Unknown (とんぼ)
2019-03-16 20:05:39
馬様

お役に立つことがあって何よりです。
これは基本中の基本…みたいなもので、
いろんなハズし方もあれば、
着物だって同系色でまとめることもあれば…です。
若いうちはとにかくどこかに「かわいらしい色」を
入れてほしいと思います。
実は「帯揚げ帯締め」をたくさん持つことも、
着物を楽しむコツなんです。
今はネットで正絹でも安価なものもありますから、
いろいろ持っていると、バリエーションが広がります。
返信する
ちょっとタメイキがでます。 (はなおもだか)
2019-04-06 19:45:56
またまた素敵な記事をありがとうございます。

こうやって具体的にみせてくださる方、サイト、なかなかありませんので、着物で言うところの地味・派手感がなかなか理解できないが現状だと思います。(それに地味派手に関しては、昔の写真もちょっとアテにならないところもありますし…40代より全部おばあさん、的な感じが多かったと思います。私の祖母は80代までずっと綺麗な色を着ていましたが。)

私は実家の母のところで着物を着る度に地味なキモノだ!といわれ続けてきていましたが、最近やっと、なんとなく、やはり母は正しかった!と思うようになりました。母とて、日常に着物を着ていた世代、環境ではないのですが、育ってゆく過程で着物姿、しかも老若男女の着物姿を無意識のうちにでもたくさん見ていた、その影響が大きいと思います。

私の場合、着物姿の人を頻繁に目にしていたのは、記憶にあるかないかの幼少時のみ、そしてその姿は年配の女性が多かった・・・というこ都がありますが、それでも、幼少期に実際に見ていた(意識せずに)ことの影響って大きいな、と思います。

そしてもちろん、とんぼさんのブログの着物話のお陰もあります。初めは意味もあまりわからず幾度も読み返していましたが(笑)。

もっともまだまだ修行中です。そして、その過程が楽しいのです。

雑誌やテレビ、そして着物業界の方々には、何とか「着物の美学」を伝えるために、もう少し頑張ってほしいと思うのですが・・・。

身近に動く、生きた手本を見ることができないのに、たまに着物経験値のある方々から「地味ね」といわれるとやれ否定されたの着物警察だのもう着物は着ない…だの、ある意味3歳児的反応が多いのも、今や最後の砦の感のあるネットの情報でも、きちんとした今までの知識を伝えてくださる、とんぼさんのようなサイトをあまり見かけないことが本当に残念です。

返信する
Unknown (とんぼ)
2019-04-07 12:46:00
はなおもだか様

お褒めの言葉、こちらこそ感謝申し上げます。
実体験と言うのは、本当に大切なことだと思います。
意識していなくても、毎日眼にしたり耳にしたりしていることの積み重ね、ですね。
それがいつのまにか知識や経験として積み重なることは、
しらないうちに「基礎」みたいなものが出来てくるのではと、
そんな風に思うのです。
私の同年代の友人知人は、すでに「嫁入りのときに持たされたけど、
着られないからそのままタンスの肥やし…」です。
伝統につまらないこだわりをもつのではなく、基礎を踏まえる、という意味で、
古いことを聞いていただきたいと思う今日この頃です。
今後ともよろしくお願いいたします。
返信する

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