ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

年末にしあがってきた着物

2007-01-03 14:11:53 | 着物・古布

実はこれ「ナゾの反物」…だったんです。
もう4年くらい前だと思うのですが、オークションを見ていたら
「絞りの着物『らしい』反物」として、くしゃっと巻いた状態ででてました。
つまり「絞り」のところまでやって染めてない状態。
どうも「花柄」らしいということだけは分かるのですが、
なにしろ全部手絞りで、糸はあっちこっち出てるし、
縮まっちゃってて、柄の感じも全体の雰囲気もわからないのです。
でも長さはある、虫食いや破れはない…難は「絹特有の色変わり」。
出品された方も、ご自分のものではないので、
とにかく「絞りだけ終わってる絹の反物」とだけ説明。
染めてみたら、どこか大きなミスがあって反物にならないのかもしれません。
そういうものでしたので、価格はほんっとにアホみたいに安いお値段でしたし、
誰も入札してきませんでした。終了間際までさんざん迷いましたが、
とにかく絹であることと長さがあることは分かっています。
もし着物にならなくても襦袢にでもできる、と思ったので落札しました。
それと、絞りを解いた柄を見てみたいってのもありました。子供みたいですが。

届いてみると、やはり全体がうっすら黄ばんでいます。シミはないのですが、
外側になっていた部分は全体になんとなく薄汚れています。でもいい紋綸子!
さてどーしよーか…と考えてみたものの、分からないことだらけ、
で、そのままいつしか他のものと一緒に反物の棚に置いて、
見るたびに「なんとかせにゃなー」と思っていました。
昨年夏の終わりに「そのまま置いといてもなんにもならない、ムダになる」
と思い立ち、いつもいろいろ教えていただく呉服屋さんに相談して
持ちかえってもらい、染屋さんに見ていただくことになりました。
そこで分かったのは「けっこうなモノ」だということ、絹の質もいいものだし、
「絞りが柄の一部」ではなく、絞りで全部柄にしているかなり柄の多い訪問着、
このまま濃い色に染めれば、黄ばみも薄汚れも大丈夫だ…ということでした。
それならば染めてみようと…なにしろ「元が安い」のですから…。
最初紫かこげ茶・海老茶…と色を出したら、「染屋さんと呉服屋さんのカン」で、
「この着物は、柄に合わせたら紺がいい」ということになったといわれました。
どんな柄かは解いてみなければ分からないのですが、私はその「カン」を
信じることにしまして、あまり着たことのない「紺」に染めてもらったのです。
それが年末少し前に届きまして、呉服屋さんが「ハデだけどイケるわよ」と。
そのときはあけてみただけでしたので、今日お福ちゃんに着てもらいました。
こんな柄だったんです。





まだ仕付け糸も取っていない状態なので、帯はしめずに
感じが分かる程度に帯揚げを縛ってみました。
これだけ柄が飛んでいて、ちょっと小紋っぽく見えるのですが、
しっかり訪問着です。横の柄もちゃんとあっています。





ずいぶん柄が大きくて多いので、若い人が赤とかピンクに染めるつもり…
だったのではないかと思います。絞りは染め直しができませんから、
もし染まっていたら、着られない着物になってしまうところでした。
柄が少しうるさい気がしますが、訪問着といっても気楽に着れば楽しいのでは、
なぁんて思っています。柄がひろがって「八重桜」だとわかりました。

もう40年も前、絞りをやっていた伯母が薄暗い部屋で背を丸めて、
独特の形に伸ばしたツメを使い、目にも留まらぬ速さで
疋田絞りをしていた姿をふっと思い出しました。
伯母の絞ったものは、ご皇室、宮様のお召し物にも使われたと聞いています。
それでも伯母自身はみやびな方々に御眼にかかることもなく、
自身で美しい絞りの着物を着ることもなく、その絞りで残したお金で
三人の娘を育て上げました。
この着物もどこかの誰かが、伯母のように黙々と続けてくれた作業の賜物。
絞りを終えたきり、染められないままおそらく20年くらいは
そのままおかれていたのではないでしょうか。
縁というものは不思議なものです。こんなおばさんのところへ
予定よりシブい色に染められてくるのは、本意ではなかったかもしれませんが、
糸にくくられて、整然と並んだ絞りの粒を抱えたまま縮こまっている反物を
見ていたら、どうしてもひろげてみたい…と思ったのです。
これを絞ってくださったかたに感謝しつつ、大切に着ていこうと思います。


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7 コメント

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Unknown (とんぼ)
2007-01-04 18:06:53
nagisa様
紺という色に、あまりなじみがなかったのですが、
こうして形になると着てみたいと思いました。
神様からの贈り物なら尚のこと、
大切にしなくちゃと思います。
着物という形にしてよかったです。
返信する
いいですねえ (nagisa)
2007-01-04 10:37:46
これをお召しになったトンボさんにぜひお会いしたいです。しゃっきりしていい色になりましたねえ。
これだけ着物を愛しているとんぼさんに着物の神様がくださったのですよ、きっと。
返信する
Unknown (とんぼ)
2007-01-04 02:17:41
ぶりねぇ様
ほぼ実物に近いと思います。綸子なので、
光があたると白っぽくなってしまうんですよね。
フォトショのつかいこなせてない私には、
ここまでで精一杯?!
お茶に関してはホントに「素養」がないもので、
「こういう着物」というオーソドックスな知識しか
ありません。こちらこそお手柔らかにですぅ!

陽花様
本当に手間かかるんですよね。
現実の作業を見ていて「これでいくらの手間賃?」
なんて、子供心にも思ってました。
ホントもこれを絞った人に「こんなふうに
染めあがりましたよ」って、見てもらいたいですね。

うまこ様
あけましておめでとうございます。
紺という色には、なぜか苦手意識があったのですが
こうしてみると、使い勝手のいい色なんですね。
春よりすこーし前から、着てみたいと思っています。

zizi様
小紋感覚で、ぜひ着たいと思っています。
これに合う帯を考えなきゃ!(あるのか?)

返信する
素敵なお色に染まりました (zizi)
2007-01-03 21:44:04
ちょっとまえ、一竹さんの辻が花がブームだったことを思い出しました。嫁入り訪問着もこのような紺色です。

とんぼ様、是非 お召しになって下さいませ
返信する
謹賀新年 (うまこ)
2007-01-03 21:42:00
こいつは春から縁起が・・・いいですよね~
重宝しそうな色と柄の訪問着ですね。
訪問着然とはしていなく、でも訪問着ですし。
桜で春に着てよし、桜さくらしていないので、
春以外でも良し。
柄は派手やかでも色は落ち着いているし。
帯でまた幅が広がりそうですね。
返信する
Unknown (陽花)
2007-01-03 21:30:17
疋田絞りなんて、本当に大変手間の掛かる
手作業ですものね。
一生懸命絞りをされた方が着物になったのを見て
おられたら、大層喜ばれている事と思います。
それにしても、絞りって糸をはずして広げてみないと
どんな柄か分からないというのも不思議ですね~。
返信する
これ、ええやないの~♪♪ (ぶり)
2007-01-03 21:16:03
ハデというより、パキッとしてて、似合うと思う♪

画像どおりの深い紺色だとすると、よく似た感じの
小紋あるのですが、大概の帯が合うので、
お茶のお稽古で、ほんに、重宝してます♪
格や柄を合わせてるのかと、突っ込まれそうですが、
そんなん、私には、当然すぎますわ~(^^;
まぁ、お手柔らかにぃ、願いますぅ♪
返信する

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