以前、着物はリフォームというより「繰り回し」の方がやっぱりピッタリする…と書いたことがあります。
つまり「やりくりして、どうにかする」ってことですね。
着物から洋服にするのはリフォームがピッタリですが、元々着物は和装ものに作り変えていたわけです。
写真は、以前にも出していますが「両褄柄の振袖」それも五つ紋のついたものの繰り回し。
じゅばんになっています。
これは、地がさめやすい紫ですから、よくよく見れば、あっちこっちがこんなにヤケたり褪せたりです。
このじゅばん、繰り回すときに前後を入れ替えています。
つまり、元は前身頃だったところを後ろ身頃にしているわけで、
直線裁ちでどこも切り落とさない、着物の仕立てだからこそ出来る作り直しです。
こちらが今の「前」、つまり元は後ろ身頃。おくみはたぶん衿を半分にしたもの。
こちらが後ろ、元々は前身頃だったもの。刺繍もところどころに入っていて豪華です。
きれいに写っていますが、実際には経年の汚れ感…があります。でもいい柄です。
後ろ身頃の上の方。黄色の線が背縫いと衿の折り線、
前後を反対にしたので、背中の左右に紋があります。
袖は無双。つまり、長い振袖をそのまま半分に折り、さらにそれを無双として袖にしたもの。
裏も華やかです。
こうしてみると、この着物には、おくみ分と掛け衿分、そして共八掛分がありません。
きっともう傷んでいたか、別のものに使われたのでしょう。
これは錦紗です。今、こんな錦紗の着物はありません。
錦紗というのは錦紗ちりめん、つまり「強撚糸」を使っていますので縮みます。
ただ、非常に細い糸を密にして織っているので、見た目は綸子のような光沢もあり、薄くしなやかで
紋綸子のように地模様も入れられます。紋錦紗と言いますが、このじゅばんも地紋入り、花籠ですね。
今、よく使われるちりめんは、一越や梨地などで、少し厚みがあります。
錦紗は「てれてれ」としてほんとに薄手でしなやか、大正時代にたいへんはやったのですが、
今は使い方も限られ、もしこういう感じの「錦紗の着物」を頼もうとしたら、
たいへん高価なものになるそうです。
そういう薄手のものが、さらに着込まれてシナシナになっていますから、じゅばんには最適。
古着でも、元は華やかな錦紗の着物がじゅばんになっているものを、よく見かけます。
着物をじゅばんにするのも、繰り回しの一種ですが、今の着物はどうでしょう。
着こんで着こんで、着倒して、シナシナにしないと、今のちりめんは、しっかりしてますからねぇ。
これはほんとにそのまま着たいところなのですが、さすがに裏地もしっかり変色していますし、
はずして洗い張りしても、布力が心配で、たぶん「縫い直し」は断わられると思います。
それでも、こんなじゅばん、ほしいなぁと思います。柄のきれいなところをできるだけとって、
二部式でもいいから、作ってみたいですね。
とりあえず、解きに回すことにします。
捨てることなく使い切る…着物はそれができるものだと、つくづく思います。
こんな肌触りのいいじゅばん、贅沢ですねぇ。
和裁できて当たり前の時代がありましたから、
今は考えられない「リメイク」です。
今の時代、銘仙は貴重ですから大事にしてくださいね。
おくみがない…と、簡単に書いてしまってすみません。
ちゃんと残っていない…という意味でして、
おくみと、衿と、共八掛と…と、アチコチからカットして
つないであるようです。
よく見ると、けっこう細かく、つないでありました。
じゅばんにしてからも、けっこう着られていたみたいで、
お尻の縫い目がわらってるし、裾の擦り切れ箇所も
みつけちゃいました。
袖はなんとかいけそうです。
二部式でもいいし、他の着物の似たようなものを
ついでみるのも楽しいですね。
いずれにしても、にぎやかなじゅばんになりそうです。
ほんとにしなやかです。
すでにお尻のあたり…ちょっと怪しいんですよ。
なんとか使えるところがあるといいんですが。
先人の知恵…といいますが、こんなすごいものは、
そうそうない知恵だと思います。
私くらいのトシになると、自分の娘時代のもの…と、
それの繰り回しを考えますが、
なぜかいとこのところに行ってたりして…。
それでも、長く着られるのが着物のまたいいところですね。
たぶん外国にはないものだと思います。
こんなことを考え付いたことが、すごいですね。
実物の色はあちこち褪せたり、
ちょっとシミがあったりするのですが
なんとか「和」の方にしたいと思っています。
衽がないのでしたら、もしかしたら八掛?
二部式だと、袖は使えそうだから上は大丈夫、下は裾辺りは使えるとしてお尻の辺とかは別布になるかもしれませんね。
古いつぎはぎの襦袢みたいな、そんなものができたら、それはそれで楽しそうです。
見ているだけでも着やすそうです。
布力あるといいですね。
数年内ににわかにきものを着初めた私のようなものにとって、「繰り回し」て着ることは憧れですが、それ以前に繰り回すほどに着込む…これがまず難しいことになっています(泣)
一枚の着物を解くとまたもとの反物に戻るというのはすごいなあといつも感心します。
だからこそまた次の命が吹き込まれるのですね。ほかの国にこのようなものがあるのかなあと思います。
お写真の襦袢も素晴らしいですね。
表に来ていたものが今度は中に着るものに変身するとはーーそして今度は何になるのでしょうか!