にぎやかな柄です。花柄の薄い紋綸子、たぶん羽裏用。
裂れ取りで「四季の風景や庭園」の柄が並んでいます。
これは「襲の着物」の中着に使われていたものです。
襲の着物といっても、留袖タイプなどのハデなものではなく、
ごく普段用に着られていたもののようです。
昔は「重ねて着ることで防寒」していましたので、そういう着物もあります。
本体はこちら、これは2007.10.13の記事でご紹介しています。
その記事にも書いてあるのですが、これには全体に綿が入っていました。
かなり古くて、縫い目などから綿がモロモロと出てきていましたので、
解きもお願いしたのですが、綿を取ったら柄も無地もものすごく薄い生地でした。
特に無地(実は細かい柄アリ)は、あまりの薄さに染めではなく織りかと、
ルーペを引っ張り出してみてみましたところ、どうやら薄い一越のような。
夏ちりめんみたいな感じでしょうか。
元はざらついていたのに、洗い張りしたらしなやかになりました。
さて、これものすごく安かったんですが、こんなふうにしたらいいだろうなぁと
考えたまま、また「放置」して、この秋やっと頼みました。
長かったねぇ、ごめんなさいよぉ…。
で、こちらが完成品、丈が長~い、おくみつきの道中着、というよりコートですねぇ。
同じように見えますが、前の柄なんか違うのわかります?
(写真の大きさが違っててみづらいですね、すみません)
できあがってみたら、なんたって「薄い」んです。
柄のあるところは薄いのはわかっていましたが、平絹よりは厚みがあったし、
無地っぽいところの綿を取れば、バランスはそんなでもないだろう、
なんてことは思っていたのですが、
こんなに薄いとは思いませんでしたので、びっくり。
内側から見たところ、裏を通して表地が透けて見えてます。
いえ「なんだこれ…」ではなくて、かえってよかった…です。
袷ではあるけれど、薄くてとても軽いんです。
戸棚をほりほりしてみつけた古い羽裏使いました。
なんか「くらげ」みたいですけど、これでも「松」、さかさまになってますが…。
左上にぱらぱら見えてる点は「金」なんですが、すでに「変色」…。
それにしてもですねぇ…いやぁ、今回は「ものを頼むときにはよぉく考えよう」と
つくづく思ったのです。
元々が中着ですから、それを道中着にするんだったら、まぁ衿のうしろに
ツギがきて…程度は考えたのですけれど…。
頼み方があまりにも曖昧で、和裁士さんに「多大なご迷惑」をおかけしました。
ずいぶん、ご苦労されて、パズルのように組み合わせてくださいました。
たとえばこれは右前の内側、つなぎ目です。
しかも、写真ではわかりにくいのですが、色あせもあって、
あまりに違う色の部分を、内側にちゃんと隠してくれているんです。
こちらは衿、内側でずーーっと全部ついであります。
右前の途中でついであるので、衿の真後ろのつぎはありません。
ちょっと縦長で見づらいですが。
中綿が厄介だったので、自分で解かなかったのですが、
解きながら見ると、ここが衿になって…とか、イメージできるのです。
それがロクに寸法も測らず「昔の半天みたいにツギハギでいいの。
胴と袖に柄を使って、後は無地を適当につなぎ合わせてくれればいいから」
すんごい無責任でしょ。
完成品を見てまず、その薄さにびっくり…そして、できあがりを見れば、
あぁワタシはなんとむちゃくちゃなことをのぞんだのだろう…と。
糸穴などもあったと思います。前後は入れ替え、わかりづらいのですが、
よく見ると、中着だったときと、これになってから身ごろの柄が違います。
今まで前身ごろだったところを後ろにまわしたわけですね。
更に袖なんですが、私は簡単に「袖も柄布入れて」と言ってしまいました。
入れられるわけないんです。袖はもともと柄布ではなくて、無地なんですから。
それなのに「中着」という先入観から
(中着はたいがい胴と同じ柄布が使われます)
広げて確かめもせずに、そう言ってしまったんです。
ただ、どこでついでくれてもいい、ツギハギでいいから、
と、それだけはお願いしたので、中着のときは、袖には柄布がなかったのに
ちゃんと柄布が袖に来てます。
これは肩山でついであるんです。胴を短くした残りで、ついでくれたわけです。
その胴から切り出す、というのも、そのままでは大きく取れないので、
まず前後を入れ替え、前になる部分を下にひっぱり、
新しく衿肩あきをつけて、元の衿肩あきは、おくみと衿で
縫いこめられる位置にして隠してしまったというわけです。
だから表には元の衿肩あきの切れ目は出ていません。
これで前が後ろより長くなり、その分を袖にまわしたというわけです。
肩山の袖のツギです。柄がこういう柄なので目立ちませんね。
本当に、よくぞ作ってくれました…です。
こういうことができるのが、着物のいいところです。
こんなパズルみたいな、こんなペラペラ薄いものを、
よくもまぁ「こんな面倒なもの、できません」って、断らなかったものです。
プロの気概と腕前に、もぅほんっとに脱帽しました。
ところでこれ、着るの?なデキですねぇ。
実際、呉服屋さんも、私の希望を聞いて「それってどうよ」な反応だったのです。
昔なら珍しくもない端縫いモノでも、
今着たら「ガウンみたい?」「半天みたい?」。
でも、できあがったら「おもしろいねぇ、いいねぇ」と、言ってくれました。
これはあくまで「普段の上着程度」です。下は紬の着物やもんぺの予定。
服の上にも着られます、私なら着ちゃう。それならイケると思うのです。
最初に中着で見たとき、このままではなんにも使えない、
襦袢に作り変えるには、面白みがない、だったらコートでしょ、と思ったのです。
こんな古着の使い方もあるってことで…。
裂れ取りで「四季の風景や庭園」の柄が並んでいます。
これは「襲の着物」の中着に使われていたものです。
襲の着物といっても、留袖タイプなどのハデなものではなく、
ごく普段用に着られていたもののようです。
昔は「重ねて着ることで防寒」していましたので、そういう着物もあります。
本体はこちら、これは2007.10.13の記事でご紹介しています。
その記事にも書いてあるのですが、これには全体に綿が入っていました。
かなり古くて、縫い目などから綿がモロモロと出てきていましたので、
解きもお願いしたのですが、綿を取ったら柄も無地もものすごく薄い生地でした。
特に無地(実は細かい柄アリ)は、あまりの薄さに染めではなく織りかと、
ルーペを引っ張り出してみてみましたところ、どうやら薄い一越のような。
夏ちりめんみたいな感じでしょうか。
元はざらついていたのに、洗い張りしたらしなやかになりました。
さて、これものすごく安かったんですが、こんなふうにしたらいいだろうなぁと
考えたまま、また「放置」して、この秋やっと頼みました。
長かったねぇ、ごめんなさいよぉ…。
で、こちらが完成品、丈が長~い、おくみつきの道中着、というよりコートですねぇ。
同じように見えますが、前の柄なんか違うのわかります?
(写真の大きさが違っててみづらいですね、すみません)
できあがってみたら、なんたって「薄い」んです。
柄のあるところは薄いのはわかっていましたが、平絹よりは厚みがあったし、
無地っぽいところの綿を取れば、バランスはそんなでもないだろう、
なんてことは思っていたのですが、
こんなに薄いとは思いませんでしたので、びっくり。
内側から見たところ、裏を通して表地が透けて見えてます。
いえ「なんだこれ…」ではなくて、かえってよかった…です。
袷ではあるけれど、薄くてとても軽いんです。
戸棚をほりほりしてみつけた古い羽裏使いました。
なんか「くらげ」みたいですけど、これでも「松」、さかさまになってますが…。
左上にぱらぱら見えてる点は「金」なんですが、すでに「変色」…。
それにしてもですねぇ…いやぁ、今回は「ものを頼むときにはよぉく考えよう」と
つくづく思ったのです。
元々が中着ですから、それを道中着にするんだったら、まぁ衿のうしろに
ツギがきて…程度は考えたのですけれど…。
頼み方があまりにも曖昧で、和裁士さんに「多大なご迷惑」をおかけしました。
ずいぶん、ご苦労されて、パズルのように組み合わせてくださいました。
たとえばこれは右前の内側、つなぎ目です。
しかも、写真ではわかりにくいのですが、色あせもあって、
あまりに違う色の部分を、内側にちゃんと隠してくれているんです。
こちらは衿、内側でずーーっと全部ついであります。
右前の途中でついであるので、衿の真後ろのつぎはありません。
ちょっと縦長で見づらいですが。
中綿が厄介だったので、自分で解かなかったのですが、
解きながら見ると、ここが衿になって…とか、イメージできるのです。
それがロクに寸法も測らず「昔の半天みたいにツギハギでいいの。
胴と袖に柄を使って、後は無地を適当につなぎ合わせてくれればいいから」
すんごい無責任でしょ。
完成品を見てまず、その薄さにびっくり…そして、できあがりを見れば、
あぁワタシはなんとむちゃくちゃなことをのぞんだのだろう…と。
糸穴などもあったと思います。前後は入れ替え、わかりづらいのですが、
よく見ると、中着だったときと、これになってから身ごろの柄が違います。
今まで前身ごろだったところを後ろにまわしたわけですね。
更に袖なんですが、私は簡単に「袖も柄布入れて」と言ってしまいました。
入れられるわけないんです。袖はもともと柄布ではなくて、無地なんですから。
それなのに「中着」という先入観から
(中着はたいがい胴と同じ柄布が使われます)
広げて確かめもせずに、そう言ってしまったんです。
ただ、どこでついでくれてもいい、ツギハギでいいから、
と、それだけはお願いしたので、中着のときは、袖には柄布がなかったのに
ちゃんと柄布が袖に来てます。
これは肩山でついであるんです。胴を短くした残りで、ついでくれたわけです。
その胴から切り出す、というのも、そのままでは大きく取れないので、
まず前後を入れ替え、前になる部分を下にひっぱり、
新しく衿肩あきをつけて、元の衿肩あきは、おくみと衿で
縫いこめられる位置にして隠してしまったというわけです。
だから表には元の衿肩あきの切れ目は出ていません。
これで前が後ろより長くなり、その分を袖にまわしたというわけです。
肩山の袖のツギです。柄がこういう柄なので目立ちませんね。
本当に、よくぞ作ってくれました…です。
こういうことができるのが、着物のいいところです。
こんなパズルみたいな、こんなペラペラ薄いものを、
よくもまぁ「こんな面倒なもの、できません」って、断らなかったものです。
プロの気概と腕前に、もぅほんっとに脱帽しました。
ところでこれ、着るの?なデキですねぇ。
実際、呉服屋さんも、私の希望を聞いて「それってどうよ」な反応だったのです。
昔なら珍しくもない端縫いモノでも、
今着たら「ガウンみたい?」「半天みたい?」。
でも、できあがったら「おもしろいねぇ、いいねぇ」と、言ってくれました。
これはあくまで「普段の上着程度」です。下は紬の着物やもんぺの予定。
服の上にも着られます、私なら着ちゃう。それならイケると思うのです。
最初に中着で見たとき、このままではなんにも使えない、
襦袢に作り変えるには、面白みがない、だったらコートでしょ、と思ったのです。
こんな古着の使い方もあるってことで…。
オンリーワンですもの。
この下にかるさんを穿いたとんぼ様想像出来ます。すてきです!
プロの和裁士さんはすごいですね~
普通のお仕立ての倍は頂かないと・・・って
言われませんでしたか。
こちらでは初めましてですね。
いつも読み逃げでごめんなさい。
すごい!こんな風に繰り回し出来るんですね。
プロの技ですね。とても素敵でお洒落な道中着だと
思います。かっこいいなぁ~。世界で一枚だけの道中着。
たった一枚の着物の繰り回しに頭を悩ませていた私には
目から鱗の記事でした。
いつも勉強させていただいておりますが、
今日もとっても勉強になりました。
いやぁ、ガウンみたいに見えちゃうかなー
なんて思っています。
仕立て代、正直なところ
「そんなわけだから割り増しで」って
言われるかと思ったのですが、
言われませんでした。
何度も呉服屋さんと話し合ったらしいんですけど、
「こんなおもしろい発想をするお客さんは、
はじめてだ」って、楽しんでくれたんですと。
「この仕事やれてよかった」って。
なんかうれしくなりました。
その呉服屋さんのお抱えお針子さんの中でも、
こういう仕事をやれる人は、
3人しかいないそうです。
「普通の和裁よりめんどくさくなるものは
受け付けない」って言う人もいるらしいです。
寂しいですね。
はい、いらっしゃいませ!
着物の繰り回しは、昔の女たちにとっては
当たり前のこと。確かにめんどくさかったり、
昔なら「モノがない」ってことがあったりしても、
これをどうやったら「次に使えるものになるかな」と
考えたり作ったりするのは、楽しかったと思います。
いろいろ楽しく悩んでくださいね。