ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

有名なヒーローですが…

2009-11-28 12:00:01 | 本・マンガ・絵
いえいえパクリ本ではありません。ちゃんと「やなせたかし」氏の本です。
これは「裏表紙」、表はこちらで、本はこれです。

あんぱんまん (キンダーおはなしえほん傑作選 8)
やなせ たかし
フレーベル館

このアイテムの詳細を見る


これ、ずっと探していたんです。これが「元祖・アンパンマン」です。
1979年に発行、これは去年の7月発行の第58刷判。
いや、そんなに出ているとは知りませんでした。
何回も刷られているとは知らずに、けっこう古本屋さんなど探してました。

これを最初に見たのは、初版が出てからたぶん6~7年あとです。
えーと息子が2歳くらいのころ。
息子と一緒に通っていた「障害児療育センター」で、
ときどき本棚から出しては、息子に見せていました。
ほかにも有名な「はらぺこあおむし」などの本もありましたが、
なんだかこれが私、とても好きだったのです。
何回か絵などが変わっているとのことですので、
まるまるこの通りだったかといわれると、記憶に自信がないのですが、
中に、旅人に自分を食べてくれと、頭を差し出す場面があって、
それが印象として残っていました。

この本は、ヒーローの名前も「ひらがな」ですし、ジャムおじさんも
ただの「ぱんづくりのおじさん」で名前はありません。
当然バタコさんもチーズもいないし、もちろん「ばいきんまん」もいません。
なにより、今のテレビ用の3頭身ではなく、普通の人間の感じです。
(中のあんぱんまんは、この表紙の絵よりもっと背高に描かれています)
ストーリーは、砂漠を行く旅人がおなかをすかして倒れていると、
彼が飛んできて「僕の顔を食べなさい」と食べさせ、
次に森の中で道に迷った男の子にも、顔を食べさせる…。
今のアニメでも、時々食べさせてますが、頭の上っ面くらいのもの。
この本ではせーだいに食べさせちゃうのです。
ほとんど半分になった顔のまま、男の子を背中に乗せて空を飛び、
うちまで送っていきます。
その後、パンやのおじさんの家の煙突から帰還して、
新しい顔を作ってもらい(そのときの彼は「首ナシ」ですわっています)、
新しいあんぱん顔をのせると、またおなかのすいた人を助けに飛び立つ…というもの。

ウィキによれば、ですが、実は発刊当初、大人には酷評だったとか。
確かに、あんぱんとはいえ、顔半分なくなっていたり首ナシになったりでは、
ちょっと不気味とおもうかもしれません。
また「残酷だ」とかなんとか、見た目で大人が言ったのかもしれません。
でも、徐々に子どもたちには人気者になっていったんですね。
このあんぱんまんは、マントにツギもあたっています。
ちっともカッコよくないんですよ。

この本のあとがき、やなせ氏はこんなことを書いています。

「子どもたちとおんなじに、ぼくもスーパーマンや仮面ものが大好きなのですが、
いつもふしぎにおもうのは、大格闘しても着ているものが破れないし汚れない、
だれのためにたたかっているのかわからないということです。
ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、
そしてそのために必ず自分も深く傷つくものです。
(中略)
あんぱんまんはやけこげだらけのボロボロの、こげ茶色のマントを着て、
ひっそりと、はずかしそうに登場します。
(中略)
さて、こんなあんぱんまんを、子どもたちは、好きになってくれるでしょうか。
それとも、やはり、テレビの人気者のほうがいいですか」

私は、今テレビで放映されている三頭身のアンパンマンは、
あまり好きではありません。もし、この「元祖」を読んでいなかったら、
さまざまな「ナントカマン」や「ナントカ・ファィブ」などのヒーローと、
おんなじ系列で、かえって気にもならなかったかもしれません。
「元祖」を知っていたからこそ、違和感があって好きになれないのだと思います。
アンパンマンに出てくるキャラクターをご存知ですか?
しょくパンマン、ロールパンナ、メロンパンナ、カレーパンダ、
てんどんまん、おむすびまん、かまめしどん、ナガネギマン…。
こうなると「なんでもアリ」です。
息子に買った本に「おともだち」が載っていて、
らーめんてんしにドリアン王女、アボガドじいや、てっかのまきちゃん…
なんてのもいることを知りました。
子どもたちのために、身近でおいしいものをどんどんキャラクターに入れて、
物語をひろげているのかもしれませんが、なんかなぁと思ってみています。
ストーリーは、いつもばいきんまんがやってきて悪いことをして、
それをアンパンマンが、一度は顔をべちょべちょにされて、顔をとりかえてもらって、
そしてやっつける…というストーリーです。
悪いのはばいきんまんの「すること」、いじわるとか破壊とか身勝手とか…。
そういう意味なのかもしれません。
毎度アンパンマンが、水や泥で顔を汚されることが、
「自分だって傷つく」ということの表現なんでしょうか…。
でも、最初に生まれた「あんぱんまん」は、たった一人で困っている人を助ける、
それも格闘ではなく「食べてください」で…。
顔が半分欠けたりして残酷…なのでしょうか、
毎度ばいきんまんが、モノを壊したり誰かをぐるぐる巻きにして捕まえたり、
最後に「アンパーンチ」で、彼が空のかなたへ飛んでいくことは、
残酷ではないのでしょうか。

私は出版界のこともよくわかりませんし、今のやなせ氏が、
そういうことについてどうお考えなのかはわかりませんが、
私としてはアンパンマンには、ほんとはずっと一人で、ボロマントで、
はずかしそうに登場して、顔を食べさせてあげながら、
助けて飛んでいってほしかった…なんて思っています。

最近のアニメや「戦隊モノ」ですか、あれは、ほんとに代わり映えしない、
見た目の姿と名前だけが変わって、やっていることは同じ…。
いえ、それぞれに作者の思いや、テーマはあるのでしょうが、
なんだか「格闘」「戦闘」を出さないと、友情だの団結だのを表せない?
昔の「母を訪ねて…」とか「ハイジ」とか、そういった物語で、
人として大切なこととか、がんばるべきこととか、そういことを
感じ取らせるのは、手が古いのでしょうか。
あんてぃーく?あんぱんまんに「お久しぶり」といいながら、
そんなことを考えました。



コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 懸案の道中着・完成 | トップ | 秋もかけあし… »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2009-11-28 15:09:33
最近こういうのを見る機会もないですが、
昔と違って心にしみる少年少女向きの
アニメは少ないですね。
私も戦うヒーローより思いやりの心を育てる
アニメをしてほしいなと思います。
返信する
最近のアニメ (登夢)
2009-11-28 17:13:30
いやいや、そうおっしゃる方に限って、最近のアニメをご覧になってないのではないでしょうか?
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-28 17:39:13
陽花様
以前のような、いろんなジャンル、
というのがなくなりましたね。
選択肢が少ない気がします。
「日本昔話」なんか、復活してほしいなぁ…。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-28 17:58:56
登夢様
わかりにくい書き方だったらごめんなさい。
私は全部のアニメをみているわけではないけれど
これでも結構見ているほうだと思います。
息子は知的に障害が重いので、
物語を理解することはできないのですが、
アニメは平面的で色がはっきりしているから
視覚的に楽しめるので…一緒に見てます。

私は「最初にアンパンマンをヒーローにする」
年代の子供たちに、もう少し選択肢がほしい、
とまぁそんなことを思っているわけです。
ちなみに、私が好きなのは原作が先ですが
「夏目友人帳」です。
返信する
懐かしい。 (ann)
2009-11-28 23:22:07
と言っても、私が「アンパンマン」の世代では
無いのですが。。。(滝汗)

誰かのお子さんか、甥っ子辺りが持っていたのかな?
この絵覚えています。そして内容も。

初めて読んだときは、「月の兎」を思い出しました。
旅人で空腹のおじいさんに何か食べ物を探して
来てあげようと、キツネとサルとウサギが
食べ物を探しに行って、キツネとサルは食べ物を
持って来られるのだけれど、ウサギは持ってこられなくって
焚き火の中に身を投げて、わが身を食べてもらおうとしたお話しです。

そこまで、命がけで人のために尽くすのは大袈裟だけれど、
「あんぱんまん」の優しい気持ちで、悪役がいなくても
ヒーローになれることがとってもいい絵本だと
思った記憶があります。

アニメになったら、それはそれでアリなのかも知れませんが、
私にはやはり絵本の「あんぱんまん」が好きでした。

甥っ子が見ていたアニメの「アンパンマン」で、
キャラクターが多すぎて、覚えきれなかった
苦い経験もありますが(汗)。

「こども日本昔話」懐かしいなぁ~。
「坊やぁ~良い子だねんねしな♪」今でも
しっかり歌えます。
ナレーションも素敵でしたよね。

ハイジ。。。そう、「カルピスこども劇場」の
時代から見てましたねぇ~。
最初は「山ねずみロッキーチャック」だったと
記憶しています。
名作がアニメ化されていましたよね。
「フランダースの犬」で泣いたり。。。
「母をたずねて三千里」で泣いたり(泣いてばっかじゃん)。
感動できる作品が多かったですよね。

戦わなくても、誰でもヒーローになれる、
そんな夢のあるアニメ無いかなぁ~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-29 20:26:29
ann様
「戦わなくてもヒーロー」…いいですよね。
私も、なんやかやと「戦う場面」があるのは
どうも見ていて疲れます。
まぁスポーツの試合なら、まだいいんですが。

日本のお話でも「安寿と厨子王」とか、
けっこうドラマになるものは
あると思うんですが、今の子供たちには
ウケない…のかなぁ。
というより、大人が選んで、見せてあげたいと思うのですよ。
もっといろんなアニメが放映されるといいですね。
返信する

コメントを投稿

本・マンガ・絵」カテゴリの最新記事