ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

宝尽くし

2009-12-03 12:10:06 | 着物・古布
写真はまたしても「昔の記事の使いまわし」、遠山柄留袖で、宝尽くしです。

先日せっかく「宝尽くし」の柄の写真を撮りましたので…。
この「宝尽くし」については、以前も書いていますが、
なんたって、ただダラダラとと続けてきましたので、
古い記事をご存知ない方もおられると思いまして…。
おまけにカテゴリーがいい加減なので、書いた本人が
過去の記事探しに苦労しています。

さて、宝尽くしの柄ですが、文字通りおめでたい柄です。
「宝物」というと、私なんぞはすぐ、パイレーツ・オブ・カリビアンなんかの
「大きな箱をあけると金貨銀貨にダイヤの王冠、ルビーやエメラルドの
ネックレスや錫…」なんていう、キンキンキラキラを想像してしまうのですが、
先日の「鍵」の記事でも書きましたが、日本の場合は「宝」というと、
それの持つ意味などに重点を置くわけです。
もちろん、たからもの、という意味ではいろいろとあるのですけれど、
とりあえず「宝尽くし柄」の場合は、仏教的思想からきている、
「ものの持つ意味」が宝とされています。

先日「鍵」については、お話いたしました。蔵をたくさん持つほどの
富裕な身になるように…ですね。
そのほか、宝尽くしには「巾着、分銅、丁子、七宝、打出の小槌、宝珠
隠れ蓑(笠)」などがあります。
実際には「これだけである」という決まりはなく、
またひとつの名前が別の呼び方だったりと、ややこしい柄です。
ありったけ使われる場合もあれば、いくつか取り出したりもあります。
できるだけ写真つきで…
こちらの五つ、順番に行きますと、

A「宝巻」
B「隠れ笠」
C「宝珠」
D「打出の小槌」
E「七宝」


   


「宝巻」は、要するに今で言う「書物」のこと。
書物を読み書きすることは、いわば「知性と教養」、
つまりは「知恵を授かる」ということですね。

「隠れ笠」は「隠れ蓑」の方が比較的よく見ます。これは両方使われています。
トップ写真の向かって左側の山の一番下にツタの葉みたいな形のものが「蓑」です。
これは元々「天狗」の宝物といわれています。
ひとつには、そういう「人ならぬものが使って、人にはできないことをする」
ということから「秀でた才能を得る」というような意味と、
もうひとつは、天狗の隠れ蓑は、かぶったりまとったりすると、
姿が見えなくなるところから「厄災から身を隠して守ってくれる」という意味。

「宝珠」は、炎の形をしていて、仏画などでもよく見ます。
龍の持ち物とも言われていますが、元々は「法具」です。
思いのままに財宝を出すことができるとか、意のままに人生を過ごせるとか、
そういった「夢をかなえるもの」といわれています。

「打出の小槌」、一寸法師で有名ですね。振ると好きなものが出てくる…。
元々「槌」ですから、のみとか小刀とか、何かをたたくための道具です。
つまり「モノを作り出すための道具」ということで、
好きなものが出てくる…大黒様の持ち物でもありますから、
出てくるのは「いいもの」というわけです。

「七宝」、これが一番ややこしいのですが、字のとおり「七つの宝」のこと、
七宝のあの形は、そのすべてをあらわす…シンボルマークみたいなもんですかね。
その「七宝」は、これがまた宗派によって違ったりします。
一応ポピュラーなところで「金、銀、瑠璃(るり)、玻璃(はり)、
珊瑚(さんご)、瑪瑙(めのう)、硨磲(しゃこ)もしくは真珠」
瑠璃はラピスラズリ、玻璃はガラスの別名ではありますが「水晶」のこと。
珊瑚、瑪瑙はそのまんまです。
硨磲(しゃこ)は、これ難しい字ですので、登録しておいてよかったです。
シャコ貝のことですね。何が価値なのかわかりませんが、
深い海の底で、あれだけ大きな体を持つ貝、ということで、
珍重されたのかもしれません。元々「貝」は、白蝶貝など、
その内側の虹色に輝く部分を、螺鈿などにも使いましたから、
身近でフシギな美しさをもったものだったのでしょうね。
真珠と言う場合は、「七珍」と呼ばれる貴重なもの、のことになりますが、
真珠って、今の私たちが見ても「フシギ」なものですよね。
次はこちらです。

F「金嚢(巾着)」
G「分銅」
H「丁子」





「金嚢」は見たまんま、お金など貴重品を入れる袋、巾着。
日本では800年代から貨幣もありましたが、
砂金や、金銀の粒などでのやりとりもありましたので、
こういうものには、価値の高いものをいれたのでしょうね。

「分銅」は「秤」で使われる「おもり」です。
昔、金銀は「重さ」で取引されましたから、分銅をたくさん使うということは、
それだけ金銀などがたくさんある、ということです。

「丁子」はクローブのことですね。丁子に限らず、昔大陸からわたってきたもので
今は当たり前に使われているもの、お茶、砂糖なども、元は「薬」や「香料」として
使われたものです。たいへん高価で貴重であったため「宝物」とされたわけです。

というわけで、なんか判じ物、こじつけ、といった感もありますが、
自分や家族の、ありとあらゆる幸せを願って使われた柄。
今よりずっと、豊かさも健康も備えや打つ手のなかった時代、
どうか無事で、どうか豊かに…という思いは、
今よりずっと切実だったのかもしれません。

この留袖は、肝心の柄のすぐ上が、ばっさり切れているもの。
以前ほしいとおっしゃるかたもいらしたのですが、
そのまま立ち消えになりました。
とてもいい柄なので、ちょっと何か作ってみようかなと…、
だからね、12月だってぇの、やることがいっぱいあるでしょーよ…。
アタシの心の中には「天使と悪魔」じゃなくて、
「のーてんきのアタシと、いまだにか~ちゃんの教えにヒビるアタシ」がいるんです。





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12 コメント

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Unknown (陽花)
2009-12-03 18:26:30
おめでたい柄ですねぇ・・・と言っても
全部柄の名前と意味が分かる人って少ない
でしょうね。私は見ても説明出来ませんわ。

勾玉もあるし、梅も竹もあるけど松はどこに
あるのかと探してみましたが、分かりません。

素敵な柄なのに留袖にならないなんて、本当に
もったいないですね。
返信する
Unknown (みつわ)
2009-12-03 22:32:02
とんぼさんは本当によくご存知ですねぇ。これからも色々教えて下さい。もう一枚残っているのが、時は江戸…橋の近くで男性に腕をかけて引きずり込もうとしている女性が描かれているのがあるのですが、無口で本の虫だった義父に敬虔なクリスチャンだった義母が選んだのがなんかおかしい。今日図書館に行ったら「きものの文様」と「着物のえほん」発見!どちらもおもしろそう!
返信する
大好物です^^ (おつう)
2009-12-04 00:37:17
大好きなんです、宝尽くし。

お目出度くて細かくて、見ていて飽きません。
中国にも宝尽くしはありますが、隠れ蓑と隠れ笠が入っているのは日本だけと聞いたので、それらが入っているものが特に好きです。

先日、韓国の民間の伝統の風呂敷「ポジャギ」を見る機会があったのですが、七宝紋が入ってましたね~
やはりルーツは大陸だなあ・・と興味深く拝見しました。

金嚢・丁子・打ち出の小槌とか楽しいですね。
周りに鶴と亀甲花紋と松竹梅が散るとさらに楽しいです。

ずっと昔から伝わってきた形・変化した形とかわらない形、これからも伝わっていくといいですよね。

いいもの見せて頂きました、ありがとうございました^^
返信する
宝巻~なんて (蒔 糊美)
2009-12-04 10:57:26
 なにが「6」じゃ? 「9」が どーしたんぢゃっ? と思ってました。
思っても調べもせず・・・な私です。 コチラでお勉強させていただきました☆
 意味や込められた思いは置いといて(置クナー!)
ひとつひとつの柄が十分かわぃぃのに
それがどっさりんこと固まってる宝尽くし♪ わたしも大好物です~❤ 

 同じ重さではないでしょうが、玩具柄もかわぃくて大スキです。
ァ・・・子ども限定ですね。 ・・・どしてもダメか?

 「か~ちゃんの教え」。 すばらすィ~。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-12-04 22:23:58
陽花様
そうなんです、松がねぇ…よく探せばあるのかなとか、
何か松葉みたいなのになっているのかなとか、
いろいろ見たんですけど…。
もったいないですよね。

タペストリーにしようと、
あわせる布を出してきました。
さて、お正月まで間に合うのか知らん…。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-12-04 22:25:56
みつわ様
いやぁなんて「小粋」な図柄でしょ。
なんだかほほえましいですね。

着物の柄は奥が深くておもしろいです。
また柄がわかると、着物の楽しみ方も
増えますので、ぜひいろいろ見てください。
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Unknown (とんぼ)
2009-12-04 22:27:58
おつう様
日本の文化は、ほんとに「遠くから
流れてきたのだなぁ」とつくづく思います。
宝尽くしは、ほんとに楽しいです。
ひとつふたつよりいっぱいあるほうが
いいですねぇ。
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Unknown (とんぼ)
2009-12-04 22:32:03
蒔 糊美様
あはは、「6.9」…勾玉ですね。
そうみえますよねぇ。
玩具柄も、ものによって大人に使われますよ。
ちいさいですけどね。

かーちゃんの教えは、それを守れないことが
ははは…なのですー。
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Unknown (やのめ)
2009-12-05 01:08:56
こんばんは
松は、後ろのモノクロの山にある、サボテンみたいなのだと思います。手前の山の、鶴の右側。ちょろっと尻尾みたいのが出ているので、根付きの松でしょうか?素敵な柄なので、何かに活用できるといいですね。
返信する
Unknown (haco)
2009-12-05 04:03:06
宝尽くし柄は全く持っていないので、帯ででも欲しいのですけれど…
見ていて飽きませんね。

私も宝といえば「大判小判がざっくざく~」を思い浮かべてしまいます。
必要なのは宝巻とかじゃないのかいな?ああ、恥ずかしい…
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