ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

伝えていくこと

2009-02-26 18:17:39 | 着物・古布
もうギリギリになりましたが、やっとお雛様を出しました。
なんたって小さいのが数あるものですから、毎年一仕事です。
いやいや、大きければ大きいだけ、それもまたタイヘンですよね。
お道具は大きくて後ろが見えなくなるので、写真撮るため下げました。
今年の新顔は、この間の「ハマグリ雛」、新顔なので今頃「自己紹介」かな。
バサマからのも飾りました。屏風がまだ出ていません。
セリフは「実家系お内裏様」ってことで…あっウチもか?





さて、ここ数日「着物のしきたり」みたいなこと書いてきました。
コメントもいろいろいただいて、やはり住んでいる地域や場所柄によって、
いろいろだなぁと思いました。
郷に入っては郷に従えで、なじんでいくには「ウチと違う」と思っても、
あわせていかなければならないこともありますでしょう。
それでも日本人が作り上げてきた「衣装に思いをこめる」ということ自体は、
なくしたくないですよね。

コメントを拝見したとき、ふと思い出す風景や、親のやっていたこと、
親の言っていたこと、というのがありました。
実はそれって結構大事なんじゃないかと思うんです。
いえ、今の人が子供に何も残していない、伝えていないというのではなく、
「残すもの、伝えるものが違う」ということ。
もちろんそれは、時代が変わるのですから内容が変わるのは、当然のことです。
ただ、何と言いますか「スッポリ抜け落ちた部分」があるような気がして
どうも寂しいのです。それは戦後という、今までになかった時代であり、
またその中で「核家族」が当たり前になっていった、
そういうことも関係しているのだと思います。

私が子供のころ、いえかなり大きなっても母がよく「○○がよう言うてた」と、
「おじぃちゃんおばぁちゃんの言ったこと」
「がっこのせんせが言ったこと」「お寺のおしょうさんが言ったこと」
「近所の年寄りが言ったこと」と、人の言葉を引き合いに出して、
説教したり、何かを教えたりしてくれました。
そしてまた、何かにつけて「あのころは」と思い出話をしてくれました。
そういうのは、やっぱり家族とか近隣というものが、もっと身近で、
時にはわずらわしいくらいに、たくさんの「摩擦」があったからだと思います。

昨日いただいたコメントで「土葬」でお墓に行く前にわらじを作り、
それを向こうで燃やしてはだしで帰る…と拝見しました。
すぐに思い出したのは、母方の祖母のこと。

祖母は、四人の子供のうち末っ子の母だけが一人横浜だったために
自分が寝付いたとき「あのこは遠いさかい、危篤になっても知らせんでええ、
ちっさいの(私のこと)もいよるし、呼ぶのは葬式のときにしぃや」と、
意識の確かなうちに、何度も伯父伯母に言ったそうです。
約束どおり、母には「ハハシス、ソウギ○○ヒ」の電報がついたと。

「昔は土葬やったから、穴にお棺が下ろされて、土が掛けられるのが
悲しかった。生きてるうちに、もういっぺんおうて(会って)おきたかった」と、
何十年たっても言います。
そのとき「お棺はみんなで運ぶよって、縄かけんねん。
その縄を家に持って帰って、家の屋根にポーンと投げてのせる、
その縄が雨風にさらされてだんだん朽ちていく、
縄の形がのうなったら(なくなったら)、そのころには生まれ変わったはるねん、
○○のあばちゃん(おばちゃんのこと)がそう教えてくれてん」
そんな話しを子供のころから、何べんも聞かされました。
一周忌に行って屋根の縄がもう形もなくなるほど崩れているのを見て
「あぁおかちゃんももう、どこぞに生まれかわらはったんやなぁ」と
そう思った、さみしかったけど、ホッとする思いもあったと…。

悲しい話ばっかりですから、おめでたいほうのお話しもしますと、
近くで嫁入りの話しが出ると、まずは「お店開き」…。
イトコもそうでしたが、お祝いに来た人に「タンスのご開帳」…。
伯母は、とにかく引き出しを埋めねば、と(何しろ三人娘でして…)
あの「疋田絞り」でせっせとお金を稼ぎ、みごとに三人送り出しました。
私は年が近くて一番仲のいいイトコのときに行ったのですが、
伯母が「ほんなら見たってな」と、タンスをフルオープンしてくれまして、
留袖、喪服、訪問着、小紋、紬、ウール、それぞれの帯に長襦袢、
うそつきに下着類…帯揚げ帯締め、腰紐にいたるまで、
真新しいものがキッチリ…「ありゃーてぇへんだわこりゃ」と思いました。

私の時も、まぁそこそこやってもらいましたが、あれにゃ負ける…。
そして母は、なぜか「ええしきたりやから」と、郷に入っても郷に従わず…?
「結納」のとき「扇箱」なるものを、京都から取り寄せました。
元々扇箱は、末広一本入れて、年賀の配り物とかに使われたそうですが、
母の田舎では、お祝いをいただいたお返しにこれを送るのだそうで。
もちろん「記念に」で、相手と我が家の二つしか買いませんでしたが。
そうそう、饅頭配るしきたりもあちらのものなのに(今でもそうです)
饅頭袱紗も持たされました。

さてさて、いろんなしきたりや、習慣があって、
また伝わらなかったこともあって、更にこれからも本当はこれがいいんだけど、
と思っていることも、何十年か経ったら忘れられていくのでしょう。

洋装が当たり前になった現在、着物のしきたりは忘れられ、
洋装のしきたりは「はいってきたけどほんとのところはどーなのよ」状態。
でも、しきたりについてかかれていることを読めば、
洋装についても「お通夜はブラックフォーマルでなくてよい」と書かれています。
この書き方も「黒でなくてもかまいません」ではなく
「全身真っ黒では失礼に当たります、なぜか…」と書かれていれば、と思います。
すでに変えていきようがないほど「ブラックお通夜」はほぼ定着しています。
このままいくのでしょうね。

だから、と思うのです、気持ちってことを。
大切なことは、やっぱり心ですよね。

「木の皿」というお話しをご存知かと思いますが、
若い夫婦が、年老いた父親に「汚す、壊す」と、木の皿に食事をいれ、
部屋の片隅で食事をさせる、ある日夫婦の一人息子が盛んに木を削って
何か作っている、何を作っているのかと聞いたところ
「お父さんとお母さんが年をとったときに使うお皿だ」と答える。
夫婦は、自分たちのマチガイに気づき、父親を食卓に戻し、
同じように食事をさせ、そのあとは大切に扱った…というお話です。
ひねくれてとれば「自分たちのためだもんねー」ですが、
要するに「子供は親のマネをする」ですよね。
背中を見て育つともいいます、子をみれば親がわかるともいいます。
葬儀の会場で、濃い茶系の小紋に黒紋付羽織の女性を見て、
「なにあれ、着物なんか着ちゃって、黒じゃないよあの着物、
黒い羽織きりゃいいってもんじゃないよね」といってた若いお母さん。
教えられてない悲しさ、残念です。
あなたのその「喪は黒しかない」という思い込みがこわいのだと
それに気がついてほしいと思いました。そして、
「あれでもいいんですよ」と教えられなかった私が、自分で情けなかったです。
ほんとにすみませんでした…あのときの人。
こんなふうにブログであれこれ書くのは、ちょっとでも発信したいから…。
こうなんですよ、ということ、こうしたらどうでしょねということ、
それを今やるべきときなのかもしれません。

コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ここまできたら、シメは喪服? | トップ | シメのシメ?お足元のお話し... »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2009-02-26 19:41:22
今年もきれいにお雛様勢ぞろいですね。
お忙しいにも関わらずこまめにされるのには
感心します。

親戚のお通夜でご近所の婦人会?とかで
観音経をあげに来られましたが、その中に
2~3人は地味目な着物に黒紋付の羽織を
着ておられました。
そんな姿を見てホッとしたのを覚えています。
返信する
お雛様・・・ (りら)
2009-02-27 10:30:54
ふと気づけば、もう3月なのですよねぇ。
お雛様、今年は着られるかな?になってしまいました。

気づいたことを伝えるって、なかなか難しいことですよねぇ。
父の葬儀のとき、真っ赤な口紅をつけて来ていた方がいたのですが、その方のお母様(70代)もご一緒でしたし「うわ!」と思いましたが、勿論言えませんでした。
陰で言うくらいなら・・・とも思いましたが、こういう立場の違いというのも難しいことですねぇ。

要らない物はなくなっても良いのでは?と思うこともありますが、守って行きたい決まりごともやっぱりあります。
とんぼさんがこうして伝えようとされていること、私自身も勉強になりますし、大事なことだと思います。
返信する
今年は間に合わなかったです^^; (えみこ)
2009-02-27 11:56:29
引っ越して、ささやかに飾れる空間ができたので
探してみたものの…見つからず。今年の大河ドラマにひっかけて
高校の先輩からいただいた「愛」の文字入り大理石の置物を
どかーん!と鎮座させました。来年こそは、とんぼさんの所みたいに
かわいらしいおひなさま、飾りたいです。
返信する
伝えることは難しいですね (こいけ)
2009-02-27 18:27:35
本当にかわいいお雛様ですね。すてきです。

ところで、ブラックフォーマルって、とても便利ですが、略礼装ですよね。
とんぼさまの書かれた方は、自分も略礼装だという感覚がないのでしょう。

略でない礼装は、男性なら五つ紋黒紋付羽織袴、燕尾服やモーニング、女性は五つ紋黒紋付、留袖。女性の洋装はちょっと現実的ではありませんが、ローブデコルテやローブモンタントといったロングドレスでしょうか。

知識だけでなく、「略式で失礼します」という感覚も伝わらないのだなと思いました。
返信する
おひな様 (花蛙)
2009-02-27 18:48:26
今年も飾らなかった。
おひな様押し入れで泣いてるな。

口紅のことで思い出しました。
私は祖母の葬儀のときサンゴの数珠を持って行ってしまいました。
法事には良いが葬儀にはいけないと後で知りました。
母は数珠を嫌い、持たないので矢張り知らなかったそうです。

此処を読んでると温故知新です
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-02-27 22:11:09
陽花様
かざったとたんに冬に逆戻りです。
ホワイトクリスマスじゃなくて、
ホワイトひな祭りにならないように
祈っています。

私なんかも、渋い着物に黒羽織とか、
黒い帯とか、みなれていますから、
なんかホッとしますねぇ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-02-27 22:14:15
りら様
今日はさぶかったですー。
おひなさまもたいへん?

およっとおもうことありますね。
我が家も祖父の葬儀のときに、
義理の伯母が口紅マッカッカで、
ひんしゅく買ってました。
祖母は「育ちがわかる」って…。
大事なことは、どこまでいっても大事、
と思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-02-27 22:20:27
えみこ様
出そうと思うと、気合入れないと
出せません。さーっ出すぞぉーーっ!みたいな。
イトコが嫁いだのが旧家で、三代分飾る…。
それもりーっぱな7段飾りばっかし。
お蔵から出すので、出すにしまうに
大騒ぎだったそうです。
お姑さんがなくなったとたんに
「今後はやらない」にしたんですと。
それもまたちと寂しい??
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-02-27 22:24:42
こいけ様
お雛様はなぜか増える…。
もらう買う作る…当たり前ですがな。

洋装については、結婚式に
ブラックフォーマルを着なくなって、
益々えぇかげんみたいですね。
「平服で」と書かれていたからと、
ジーパンの人がいた、という話を聞きます。
日本語も外来語も「不自由」ですわ。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-02-27 22:35:02
花蛙様
お雛様は、長いこと飾れなかったのですが、
ここ10年はやっとです。
行けず後家になるような娘もいないんですが、
なぜかバタバタと片付けます。

お数珠も色がありますねぇ。
水晶とか菩提樹がいいそうですが、
お高いですよね。
珊瑚の場合、白珊瑚はいいと聞いています。
赤は「血赤」と呼ばれるし、
いけないんでしょうか。
私のは実はオットのより高い石系です。へへへ
返信する

コメントを投稿

着物・古布」カテゴリの最新記事