小笠原の観光的価値について
『世界自然遺産・小笠原諸島』それは、自然の美しさ、釣りやダイビングなどのアウトドアの楽しみは大変に魅力がある場所である。
それでは、この魅力ある地にお客様の求める価値が釣り合っているのか考えてみる。
ここへの旅行というものが、この場所の自然環境、宿泊、食事やサービスについてどのくらいの癒し、よろこびや感動があって、それに費やす時間、費用が上回っているのだろうか。
つまり、お客様がどのくらいの満足度が得られるのかということである。
極論をいえば、一度行った人の口から、「もう一回行きたい。」「これは価値があった。」という言葉が出るか。あるいは、「もう行かない。」「行く価値がない。」ということになるかということだろう。
それでは、まず、出かけるための準備であるが、現在は最低で6日間の日程が必要である。そのうち、船による往復の移動時間が51時間(船中2泊で2日以上)の時間を使ってしまう。この日程を絞り出すには、半年も前から仕事のやり繰りをして休暇を取るような調整が必要な場合もある。しかし、この地を訪けるためには、予約は2か月前という枠が決められており自由にならない。理由は「燃油サーチャージ」ともっともらしいが、航空機にしても長ければ7か月前には予約が可能である。この点について、代案や改善の工夫はなしで、ただ、お客様に押しつけられるのはつらいものである。2等船室以外のチケットを購入するためには、発売日の発売時刻前に寝袋をもってならばなければ手に入らないこともあるようである。
一方、お客様は、大変な努力や上司や同僚に懇願をして、生み出した貴重な休日に予約がとれないことを考えて、家族や仲間の旅行であれば、参加メンバーはそれぞれが、「小笠原行」が不可能になったことを考えて、他の行先を探すなんて余計なストレスを抱え込んでしまうことだってある。もし、この「小笠原行」がなきものになった場合のダメージは極めて大きい。
更に、予約がとれて費用を考えると往復の船料金が2等船室で55,000円くらい、特等で140,000円弱、そこに本来の目的の宿泊、食事やオプショナルツアー料金はみなければならない。頼るべき移動手段「おがさわら丸」に片道25時間以上も閉じ込められていて、この料金である。また、大勢の人が利用する2等船室は大部屋で利用時間が長いためストレスもあることだろう。国内の島に渡る他の航路であれば、長くても2時間程度であり、2等席でもおしゃべり、読書やTV視聴などでストレスは少ない。この短時間運行の船舶の発想で運行されているような船なのである。
また、航行時間が長いせいか2等船室の複雑なにおいが残っているのは、どうも気になって仕方がなかった。
さて、結果的に・・・
『小笠原の価値』=『自然環境、宿泊、食事やサービスその他観光的価値<費やす時間、コスト、長期休暇』・・・というようなことになり、持ち出すものが多い割に得るものが少ない。というような不等式になってしまう可能性もある。
この古い船「おがさわら丸」はお客様の選択肢を失くし、「予約制限」、「競争のない料金設定」、「時間の束縛」をしている。ここは、いわば独占的で競争原理が働かない、強腰ビジネスであることは否めないし、そのことは関係者の態度や発言でも局所で感じる人は少なくないだろう。まさに売り手市場なのだろうか。
小笠原の価値を高めるためには、ここを外して行くことが、小笠原の自然との調和と発展のためのポイントになっているのではないか。例えば、この島に飛行機が飛べば、2時間以下で、快適な移動ができ、この料金で充分にお釣りがきそうである。多分、島に住まわれておられる方は、このことに気づかれておられ、他の交通手段を切望される方も多いこのではないでしょうか。
最後に『世界自然遺産・小笠原諸島』を保持、整備しながら、多くの人に訪れていただきたい場所ではあることは間違いない。変わらないものを残すために変わることを応援したい。
おがさわら丸デッキ(上2枚)、2等船室(左下)と特1等船室(右下)
特2等船室(上)とレストラン