「大和物語」には幼くして母を亡くし、叔母に育てられた男の話が出てきます。
男は結婚しますが、その意地悪な嫁の口車に乗り、唆されて育ての叔母を疎ましく思い、
山に捨ててきてしまうのです。
しかし男はその山にかかる美しい月を見て、後悔の念に苛まれます。
わが心 なぐさめかねつ 更科や 姨捨山に 照る月を見て
(私の心は慰めきれない。この更科の姨捨山に照る月を見ては)
と歌を詠み叔母を連れ戻すというお話です。
また、この更科の地は有名な古典「更級日記」の書名とても有名です。
作者菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)晩年、甥が訪ねて来てくれた時にその嬉しさに、
月も出でで 闇にくれたる 姨捨に なにとて今宵 たづね来つらむ
(有名な更科の月も出ていなくて闇世の中のこのような姨捨山に捨てられた私のような者のところへどうして今夜は訪ねて来てくれたの?)
と読んだことがその書名の由来になっています。
「大和物語」の故事からここは月の名所とされるようになっていたのですね。
そんな古典文学で有名な更科の地は文人たちのあこがれ。
かの松尾芭蕉もこの地を旅して「更科紀行」という俳文を書いています。
→参考HP【松尾芭蕉のページへ】
さらに詳しくはこちらへ。
→「私の芭蕉紀行」すごい写真ブログのページへ
十六夜(いざよひ)もまだ更科の郡(こほり)哉
御託が過ぎました。
さっそく見ていきましょう。
まずはこの地の「佐良志奈(さらしな)神社」です。
創建は一説には5世紀とも言われる日本最古クラスの神社です。
こんなに交通の往来の激しい場所にあるのですが。
道路から一段低い場所が境内です。
もともとなのか、道路があとから作ったのかはよくわかりません。
残念ながら古文書は消失とのこと。しかし、古い神社には違いありません。
お参りをしてから更級見物と行きましょう。
「姨捨山」のふもとには戸倉上山田温泉という温泉街があります。
温泉にはこんなロマンチックな昔話が。
「姨捨山」に上るには、その温泉街から急峻な山道を登っていきます。
まあ、車で登れるのですが、結構狭い山道を延々と15分ほど登ります。
ようやく登山口。駐車場も広いです。
なぜこうも駐車場広いんだろう…?道はあんなに狭いのに。
↓で、案内板です。ハイキングコースです。
ちなみに、この山は地元では「姨捨山」なんて呼ばれていません。縁起でもない名前だからですかね…?
正式名は「冠着山」(かむりきやま)。
天の岩戸伝説で有名な田力男之命が旅の途中、ここであまりに月がきれいなので冠を直して着け直したという伝説からです。
→参考HPへ(wikiのページへ)
さて、登山開始。(なんだ、また「~登ってきました」シリーズか、と思われそう…)
とはいえ、オフロード車ならまだ結構登れそう。
しかし、たった1.1kmだからなあ…。車使うのももったいないよ…。
けっこう車でも行けそうですね。
多分車ではここまで。
残り600mだから、半分こられちゃうんだ、うわあ、もったいない。
せっかくの山道、楽しまなくちゃ。
矢印もあるし、
整備されていて、登りやすい。
分岐しているけど、すぐに合流する。
迷わない、親切な山道。
階段もあるし。
少し狭いところもあるけど。
岩です。
山頂までもうすぐ。
山の案内もある。
日本アルプスの山々、登ってみたいけどなあ…。
もうすぐ終わりかな~~。
明るくなってきた。山頂っぽい。
山頂の前に祠を発見。
ずいぶん古そう。
拝んでいきましょう。
山頂に到着。
神社があります。回り込んで鳥居からの一枚。
今回からの登山道では神社の裏手に出ます。もう一つの登山道からは正面に出られるようですね。
お堂の中です。けっこう、近代的。
昔の看板もありましたよ。
山頂によくある銅製の方角と山々を描いたやつ。
内容です。
景色はまあまあ。割と木があるので、眺望は開けていませんが。
雲の上には出られるくらいです。
夏なので、入道雲が多い。
曇ってきました。
登山は30分弱で登れます。じつにあっけない…。
本当に初心者向けですね。
ちなみに、更級は棚田も有名だそう。
高速道路で「姨捨SA」を降りてすぐに、棚田の景色が広がります。
遙かな山には積乱雲。雷がこの日は鳴っていました。
棚田。
一つ一つの耕地の面積は小さいのです。
昔の人はすごいですよね。こんなものを作るとは…。
美しい眺め。
遙かなる山々。
厚い雲。この日は残念ながら雨で、月は見られませんでした。
「更科の月」
↑こんなのが撮りたかったんですがね…。本当に無念。
芭蕉のようにはいきませんでしたよ。
【撮影日:2018/8/14~15】
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