さて、以前にも書きましたが、このお話は本来「ハンス・ウイルヘルム」が書いた童話です。それを久山太市さんが訳しています。
絵本は、もともと言葉の数が少ないですから、詩や短歌・俳句のように、読み手の想像に任せられる部分が多くなります。また、このお話の場合、挿絵も「ハンス・ウイルヘルム」ですから、挿絵にもかなりのメッセージが込められていると思われます。
すると、それらのメッセージを、(どう日本語にするか。)それも、(絵本らしく少ない文字数で。)というのが難しいし、その訳しかた一つによって印象が可なり違ってくることが予想できます。
久山太市さんについて、興味をもったので調べてみました。どういう経歴の方かはよく分かりませんでした。
しかし、「ハンス・ウイルヘルム」の他に、アンソニー・ブラウン、 ジュリア・ドナルドソン、ジョナサン・アレン、サム・ロイドなど多くの作家の絵本の翻訳をてがけ、ちょっと調べただけでも軽く40冊以上見つかりました。
ということは、売れっ子「訳者」なわけです。
元々の作者の物語も良いのですが、この久山太市さんの訳に魅せられて読まれている部分も多く、だから出版社はこの人に次々に訳を頼むのでしょう。
そう思って、原文を見てみます。
「ぼく」「ぼくたち」「みんな」についてはすでにこちらに書いたことがあります。
http://blog.goo.ne.jp/totoro822/e/452486684076a385f797e2d43ac252bc
今回調べたのは、私の気になる「言ってやった。」が原文でどうなっているかです。
言ってやればよかったのに、誰も言ってやらなかった。
they never told her.
言ってやった。
I would say to her
毎晩エルフに、言ってやっていたからね。
I had told her every night
となっています。
ですから、「ハンス・ウイルヘルム」の文からは「目下の者に、その利益になることをしてあげる。」といったニュアンスはあまり伝わってきません。
この辺りは、久山太市さんなりの解釈なのだと思います。
私は英語はちんぷんかんぷんなのでよく分かりません。
久山さんは、きっと、原文のニュアンスをどう日本語に直して、作者の意図を読者に伝えるか、何日も何日も辞書を片手に考え抜いてこの言葉にしたのでしょう。
「ずうっと,ずっと,大好きだよ」
の記事をいつも読ませていただいています。
私も,1年生にどう授業しようかと,いろいろと参考にさせていただいています。
これくらい深く読みに挑めたら,授業は感動的なものになるでしょうね。
日頃の自分を振り返って、どきっとさせられます。