江戸城は皇居と呼ばれるようになった。
そして今も社宅はある。
もちろん、皇居の中だ。
少なくとも30数年前にはあった。
父親が急死して社宅を母娘は退去しなくてはならなくなった。
急いでマンションを購入して出たけれど
皇居内で礼儀作法を指南していた母親が新たにマンションで指南を続けていたのかはわからない。
娘はほか弁とはなんですの?と聞くくらいどこか浮世離れはしていた。
そんな彼女に悪い男が近づいたのだ。
妻子がいた。
しかも500万も彼女に借りて返さなかった。
住む世界が違う人だといつも思っていたが「恋」は悲しいくらいに平等に訪れるらしい。
そして幸福になるとは限らないのだ。
穏やかに彼女が暮らしているといいなと時々、考える。