月の都 太陽の檻

主に、鬼滅の刃二次創作サイトお知らせ用。
『月の都 太陽の檻』
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『久遠の笛の音よ』・弐・

2022-02-15 11:58:22 | ss:novelー継国巌勝―

サイトUPしてからお知らせで載せるほどの文量もなければ走り書きなので、こちらにそのまま掲載することにしました。

気ままなSSです。夢で見たとある風景。

巌勝さん、何を思ってたんだろうか…

 

*****

『久遠(くおん)の笛の音(ね)よ』・弐・

 

 巌勝(みちかつ)は、使い切った懐紙を脇へ置くと日輪刀を掲げた。握った柄が目線の高さまで上り、手首を返す。刃が室内の光を拾って二度ほど反射すると、

「…」

 眼差しが満足そうに揺らいだ。表情は、大して変わらなかった。

 鞘に収め、立ち上がると刀置きに向かう。手元から離れた時小さな音がしたが、刀が、ほっと一息ついたように見えた。

「…」

 格子を開け放った狭い一室に風が通る。

 庭の楓の葉擦れの音が耳に届き、青葉が一枚、軒下に流れてきた。

 後れ毛が戦(そよ)いで誘われるようにそちらを向くと、ひだまりが、まだ若く散った葉を包むように照らしていた。

 何気なく縁側まで寄って――だが、部屋の敷居は跨がなかった――陰と陽の境目近くに腰を落ち着ける。

 仄かな光が隣から漏れ出てくるが、闇色の姿はそのまま変わらず、巌勝は、対照的な青葉をじっと見つめた。

 風がまた吹いた。

 今度は肌身にまで感じるそれを、受け止めるように天を仰ぐ。

 自然と瞼が閉じて滔々と流れていく時間を感じると、巌勝の面は、微かに穏やかになった。

 ふ…と、胡座をかいた膝元に、重みを感じる。袴を通してじんわりと温もりが伝わって来、

『……』

 微かに目を丸くして視線を落とすと、

「…ねこ」

 思わず呟いた。

『野良か?』

 その割には、ふてぶてしい。

 見ず知らずの人間の足の輪に入ってくるとは、いい度胸だ。

 野良猫が、顔が歪むほどに大きなあくびを一つ、かいた。

『このまま寝る気か?』

 思うが、嫌な気はしない。

 どこからこの鬼狩りの里へ迷い込んできたのか、皆目見当もつかない。だが、何となく似たような境遇を思って、巌勝は、ふ…と口の端を上げるとまた蒼穹を見上げた。

 ゆったりと流れていく皐月の薄い雲。

 戦ぐ風に前髪が揺れて、心地よかった。

 野良猫の静かな吐息が聞こえて、知らず、手が、丸い背に伸びる。そっと尻の方まで撫でて、

「にゃ」

 濁声で見上げられた面に、視線を合わせた。

「あ」

『嫌だったか?』

 思ったが、それきり、また、丸くなる。

 尻尾が大きく揺れて、それがなんだか催促されているようで、巌勝は、小さく笑うとまた撫でた。

 満足そうな、二度目のあくびに顔が綻ぶ。

 撫でる動作だけはゆったりと途切れず、また、天を仰いだ。

 

 鬼になる、あの運命の日。

 その、一月前のことだった。

 

・弐・完

 

 

 

 

 

*****

日夏家の大きなにゃんこ…いやわんこ(だな。性格上)も目を覚ましましたなww

このまま今日は拉致られそう。

天気もいいし、ドライブかねえ……

 


novel更新『継国さん。』第四話:鬼灯

2022-02-15 10:09:16 | moon&sun:novel

『継国さん。』

第四話:鬼灯(ほおずき)

・弐・~躑躅の章~

UPしました♪

 

第四話は日夏にとっても新しい挑戦だったのですけど(ホラー系)、ま~あ。なかなか。文章で「恐怖」を表現するのは難しいものです。それを痛感した一作でしたね…リベンジそろそろしたくなってきたなあ。

第四話は全体通してホラー系。苦手な方はブラウザバックを推奨いたします;;;

 

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月の都 太陽の檻

*サイトTOPからのnovelのみ、これまでの粗筋。が記載されています。

 

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『継国さん。』第四話:鬼灯

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月の都 太陽の檻『継国さん。』

 

【粗筋】

 漸く重い腰を上げてスマートフォンを購入した縁壱。

 嬉しいおまけがついてきて、彼は、半ば強制的に兄・巌勝を巻き込む事に成功、胡蝶姉妹と四人で旅行することになった。

 だが、その前の週より、カナエの身には不吉なことが立て続けに起こる。

 察した縁壱は、胡蝶姉妹に祓えのまじないを掛けておくが…。

 導かれたのか、迷い込んだのか。

 その答えを知るのはまだ、『依頼主』と直接会話を交わした巌勝のみだ。

 だが彼は、ギリギリまで二人には依頼のことは告げず――――

 四人は。

 明治・大正の頃より栄華を誇り、浪漫溢れる、

『鬼灯旅館』

 に辿り着いたのだった――――。

【注意】

 こちらの作品は、継国兄弟を中心に独自設定で進みます。

 全章通して、キャラ達の心情を読み解くのに原作一読推奨していますが、双子救済色強め(章が進むにつれ割と甘々)な、双子にとって優しい世界です。

 何より、柱達の設定がフリーダム。

 鬼殺隊至上主義の皆様、双子愛妄想が苦手な皆様には大変申し訳なく。ブラウザバックを推奨いたします。

 本作品では、どちらかというと鬼愛が強いです。

 罪を許され生まれ変わった巌勝さんと、兄上がやっぱり大好きな縁壱さんとのあり得ない日常。

 不思議なお話に絡めて紡いでいけたらと思います。

 二人の性格が性格なので、毎回、ドタバタするほど騒ぐには至らないようですが、日を追う毎に、二人の関係にも変化が訪れて…。

 次第に、あの頃とは違った未来を紡ぎ始めます。

 やがて二人は、大きな渦に巻き込まれ…。

 一体どんな結末を、選び取るのか。

 どうぞ長い目で、見守ってやって下さい。

 

 

ごゆるりとどうぞ~♪

ご訪問ありがとうございました!