京都弁護士会 死刑制度調査検討プロジェクトチームの主催で、
成城大学法学部の指宿信教授をお招きして、「死刑制度と被害者保護運動」について講演していただきました。
指宿先生からは、はじめにアメリカにおける死刑の現状についてのお話しがあり、
死刑廃止州が増えていること、死刑判決、死刑執行数が減っていること、
世論調査の結果ではこの17年で死刑賛成が86%から61%に減り、死刑反対が16%から35%と増えていることが報告されました。
被害者保護運動についても、アメリカで1960年代から始まった被害者保護運動のあゆみについて解説されました。
被害者学、社会学などの研究成果の報告があり、死刑廃止運動が近代理性主義的司法観の完結的な物語であるのに対して、被害者保護・権利運動は近代理性主義に基づく人権論に対する「挑戦」と位置付ける研究があるとの解説がありました。
また、被害者保護運動は、それ自体で支持されてきたわけではなく、1980年代から始まったペナル・ポピュリズムを背景としているとのことです。
安全と安定を保障できなくなった現代社会において、世論形成を支配してきたエリートに対する人々の幻滅を背景とし、”普通の人々”の観点から、刑罰制度にも発言がなされるようになり、犯罪被害者の発言が専門家の抽象的な発言を圧倒するようになってきたと分析されているのだそうです。
上記のように、近代理性主義をめぐって対立するかの死刑廃止と被害者保護ですが、
修復的司法観(加害者と被害者の対話と和解)、治療的司法の導入、ペナル・ポピュリズムに対抗するために刑罰思想を教える法教育によって、両運動は止揚されることが可能なのではないかとの提言がなされました。
また、どのような社会を目指すのか、どのような社会構造を目指すのかということを考えなければならないとお話しされました。
そして、死刑廃止運動は、被害者保護運動とはまったく独立した政治運動として展開されるべきであるとまとめられました。
死刑存廃の議論は、特に被害者問題との関係で極めて感情的な議論になります。
今回の指宿先生の講演で、冷静に、論理的に考える道筋が示されたと感謝しています。
すばらしい講演でした。
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