声
あのひとの声を、
聴いていると、
とても深い、
深い、深い、
深い海の底で、
じっと息を潜め、
抱き締められて、
包み込まれて、
指の腹が
爪の先が、
てのひら、が、
さはさは、と、
さは、さはと、
髪を撫で乱し、
素肌を産毛を擽っては、
内臓の奥へ、奥へと、
そは、そはと、
そはそは、と、
精神の底の底まで、
沁み込んでいく、
あのひとの声の、
波動、周波数?
否今迄知らなかった
無償の愛そのものが、
心臓に刺さる一欠片の、
無関心な闇を手放し、
一粒の、頬伝う涙に、
光が灯ったことを、
わたしは知ったのです。
written
2023/02/18,19,20.
2023/03/04,05,06,07,08.
photograghed
2023/02/23,24.
rewritten
2023/03/09.
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お天気お姉さん『崩壊』
【土曜日の遅い朝、ようやく浅い眠りから覚め、むっくり起き上がるつかさ。まだ半分眠っている様子で、独り言を言う】
tsukasa:ふにゃ、まりまし金魚ですか? リトル・ミーのドロンパ? ろっちかに決れれくれらいと、ライライライ、蝉人間の思う壺でしょうが!
yukari:つかささん。
tsukasa:いや、わしゃ、ショウガ焼きになりとぅ、な、ふにゃふにゃ、ばり、ねこ。。。
【布団の上に座ったまま、また眠りに落ちそうなのを、ゆかりが起こそうとしている】
yukari:つかささん!おきるですよ!
tsukasa:ふん、ぎん、まぐろ。。。はにゃはにゃ、小判こばんろ、ロイロイ、ロイ・ジェームス・こばーん、レス、ういマダーム。。。
yukari:このごろ、つかささんの、ねおきが、わるくて、こまりますね、やれやれ。ねぼけてないで、おきるです!
【ゆかり、棘で思い切りつかさを刺す】
ぎゃあああああっ!
【三十分後、洗顔等終えてすっかり目の覚めたつかさ、ネットの星占いを見ている】
yukari:つかささんは、うらないを、きにするですか?
tsukasa:良い運勢が出たら励みにして、悪いのは信じません。
yukari:それが、いちばん、ですね。きようの、うんせいは、どうですか?
tsukasa:笑いの絶えない一日になるでしょう、と。
yukari:まあ、ふふふ。それでは、ぶらんちに、しましようか。
【突然キッチンから、フクロウ執事オウルの笑い声がする。オウル、リビングに転がり込んできてバッサバッサと羽ばたきながら大笑いする】
owl:つかささん、こいつは傑作です! お天気お姉さんが、お天気お姉さんが、あっはっはっはっはっは……。
yukari:……なんでしよう?
tsukasa:?
owl:この写真送った人、はっはっはっはっはっ、昼食に焼きそば作ったってコメント送っているのに、はっはっはっはっはっ、写真の見た目はオムライスで、はっはっはっはっはっ、じゃあ、オム焼きそばかと思ったら、ケチャップで「チャハーン」って書いてるし、はっはっはっはっはっ、しかもチャーハンじゃなくて、チャハーン! ですよ、はっはっはっはっはっ、そしたら、お天気お姉さんのツボにハマってお姉さんが『崩壊』した、はっはっはっはっはっ……
yukari:なんという、あつはつはつはつはつ……
tsukasa:放送事故ですか、はっはっはっはっはっ……
owl:昼食は、『チャハーン』にしますか?はっはっはっはっはっ……
【星占い通り、今日は笑いが絶えません】
tsukasa:はっはっはっはっはっ、まいったなあ、チャハーンが頭から、離れないよ、あっはっはっはっはっはっ……
yukari:はつはつはつはつはつ、チャハーン、あつはつはつはつはつはつ……
tsukasa & yukari & owl :あっはっはっはっはっは……はっはっはっはっはっ……。
【いつまで続くのでしょう、か?】
ロウバイ
毎年この季節になると咲くのが楽しみな蠟梅があった。それが、――去年の暮れだったか、大胆に枝が切られてしまっていて、もう駄目なんじゃないか、って思ってた。
他人さまのごく狭い庭に生えていた樹だから、文句を言う義理も筋合も、全くないのが何だか無性に口惜しかった。
だからか。今年もまた無事咲いていたのを見かけた時には、心踊った。精一杯背伸びをして夢中になってスマホのカメラを向けていると、いきなり後ろから「ふ〜ん、蠟梅撮ってるんだぁ〜」という声の不意打ち。白髪頭にキャップをかぶった黒縁眼鏡の小父さんが笑ってる。
小心者のわたしは狼狽し心臓が、
♥ばく♥ばく♥ばく♥ばく♥おーわだ♥ばく♥
だったことは、内緒だ。
えだうたれ
もはやさけじと
らくたんの
われおどろかし
らふばいのさく
枝打たれ
もはや咲けじと
落胆の
我驚かし
蠟梅の咲く
つかささんとゆかりちゃん、恵方巻きを大いに喰らう
yukari & tsukasa:お寿司屋さんで『マグロ海鮮恵方巻き』を買っちゃったぞ〜!
yukari:つかささん!
tsukasa:ゆかりちゃん!
yukari:とうとう、このひが、やつてきたのですね!
tsukasa:そうです、わが魔窟始まって以来の快挙ですよ。
yukari:くろぐろと、ふつとい、ごりつぱな、おすがた。
tsukasa:鈍い光を発して、堂々たる威厳に満ちたその姿の、何と、力強いことか!
yukari:もう、だめ、です。くらくら、しちやう!
tsukasa:つかさも我慢の限界!です。
yukari & tsukasa:お寿司屋さんで『マグロ海鮮恵方巻き』を買っちゃったぞ〜!
yukari:しかも、にほんも!
tsukasa:四千円もしちゃいましたけど。
yukari:むふふふ。それにしても、つかささんが、おすしやさんに、つてをもつている、とはおもいませんでしたよ。しかも、おむかいの、いえが、すしやの、たいしようの、うちだつたとは。
tsukasa:実は命の恩人なのですよ。
yukari:ええつ!
tsukasa:もう何年前でしょうか? 外出した時、当時飲んでる精神のお薬の副作用が出てしまって。
yukari:ふむふむ。
tsukasa:何とかこの近くまでは辿り着いたのですが、もう一歩も動けなくなってしまって、倒れてしまいました。
yukari:ふむふむ。
tsukasa:気が遠くなりかけた時に、鮨屋の女将さんが通りかかったんですね。
yukari:さっきの、こがらで、きれいなあのかたですか?
tsukasa:そうです。助けて下さいとお願いしたんです。それで肩を借りて移動し始めたのですが、わたしの力がすっかり萎えてしまっていて、なかなか進めません。
yukari:ふむふむ、ふむふむ、つかささんは、いがいと、がたいがよい、ですもんねえ、おんなのちから、では、きついかも。
tsukasa:そこに店の片付けを終わらせた大将が追い付いて、わたしを軽く抱えると魔窟まで運んでくれたんです。以来懇意にしていただいているんですよ。
yukari:そうだったんですか。
tsukasa:お正月に食べた特上寿司も大将の店のものですよ。
yukari:!、あのおいしい、おすしが! はやく、たべたいです!
tsukasa:夕飯には早いですが、早速いただきましょう!
yukari:つかささん、ことしの、えほうは?
tsukasa:あ? 訊くの忘れた。えーと、確か南南東のはずです。
yukari:なんなんとうは、あっち、です。
それでは。
tsukasa & yukari:いただきまーす!はむはむ、ぐもぐも、はむはむ、ぐもぐも。
【マグロ海鮮恵方巻きの美味しさに思わず笑みが溢れる、つかさとゆかり】
yukari:あー♥おいしー!
tsukasa:赤身は漬けで中トロは山葵マヨネーズ。これが交互に胡瓜やレタスを纏ってシャリとともに口の中に描く食感と味たるや、素晴らしい!
yukari & tsukasa:たまりませーん。はむはむ、ぐもぐも、はむはむ、ぐもぐも……。
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yukari:それにしても、おうるは、どこにいったのでしようか? なまの、さかなは、くちにあわないって、おしようがつも、おすしに、てをつけずに、どつかに、いつてましたね。
tsukasa:今回は何だか秘湯の温泉巡りをするって言ってましたけどねえ。
yukari:やまで、こおつていなければ、いいけど。
tsukasa:大丈夫でしょう、森の智慧の塊だから。
【その頃オウルは、、、一人、山で鹿と猪を狩り、その疲れを温泉で癒やしながら『特製ジビエ恵方巻き』を堪能していたのだった】
owl:猛禽類の特権、でございますよ。