ロウバイ
毎年この季節になると咲くのが楽しみな蠟梅があった。それが、――去年の暮れだったか、大胆に枝が切られてしまっていて、もう駄目なんじゃないか、って思ってた。
他人さまのごく狭い庭に生えていた樹だから、文句を言う義理も筋合も、全くないのが何だか無性に口惜しかった。
だからか。今年もまた無事咲いていたのを見かけた時には、心踊った。精一杯背伸びをして夢中になってスマホのカメラを向けていると、いきなり後ろから「ふ〜ん、蠟梅撮ってるんだぁ〜」という声の不意打ち。白髪頭にキャップをかぶった黒縁眼鏡の小父さんが笑ってる。
小心者のわたしは狼狽し心臓が、
♥ばく♥ばく♥ばく♥ばく♥おーわだ♥ばく♥
だったことは、内緒だ。
えだうたれ
もはやさけじと
らくたんの
われおどろかし
らふばいのさく
枝打たれ
もはや咲けじと
落胆の
我驚かし
蠟梅の咲く
白髪頭の爺さんも、嬉しかったのではないかと思います。
それに
地上で生きている草木も野鳥も、誰のものでもないですしね。
こんばんは、お久しぶりでございます!
白髪頭のおじさん、わたしより三〜四歳若そうだったので敢えて叔父さんと呼んだ次第です。
都会は都会なりに面倒くさいことが多くて疲はれます。まんまる雀のお気楽さが羨ましい。