残香
仄かな芳香が空間を淡く彩っている。金木犀の並木は花を殆ど落としていた。にも関わらず未だ香りは途切れていない。
小学校中学年くらいの少女が背伸びをして、葉を掻き分けて凝視し、目を閉じて香りに浸っている。
僅かばかり花が残っているのだ。それは義理堅く世話好きな金木犀らしい心遣いだった。
少女と目が合うと、彼女は屈託なくわたしに尋ねてきた。
おじさん、いつも何を書いてるの?
詩を書いています。
そうなんだ、詩人?
はい、詩人です。
少女は、いい顔で笑った。わたしも笑みを返した。そして少女は駆け去って行った。
2017/09/30
12:30 pm
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