熱と湿気ではち切れそうな風が重たく背中を打つ。乾く暇のない汗を拭って見上げた、黄昏直前の空は、
あの日の色、をしていた。
東京駅のホームで受け取った、大切なひとが旅立った知らせは、喧騒の中、一直線に私の心を射抜いた。
瞑目し、開いた眼に飛び込んだものは、抜けるような『夏空の青』だった。
次の瞬間、朝から三十度を超えた東京の空は、目眩と共に急速に色を失った。
東京の好天が幻のように、新幹線は幾つかの雨を潜り、故郷は音のない霧雨に濡れていた。
何一つ、あのひとに報いることはできなかった。なのに、あのひとは私を責めることなく、神々しいまでに誇らしげな美しい顔で眠っていた。
お母さん。
お母さん。
あれから九年、経ちました。
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2018/07/15 16:10
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