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詩と物語を紡ぎます

動けないつかささん

2022-07-18 00:00:00 | daily tsukasa
動けないつかささん

(つかさ、前屈みの不自然な姿勢で立ち尽くしている。その顔には苦悩の色が深く脂汗が滲んでいる

yukari:つかささーん!
tsukasa:………………。
yukari:?、つかささーん!
tsukasa:……ゆ、……ゆ、……。
yukari:?、どうした、ですか? その、くのう、を、きざまれた、ひようじようは。
(つかさ、何か言おうとしているが、言葉にならない)
yukari:し、が、かけない、ですか?
tsukasa:……詩も、……詩、も……。
yukari:?しも、しも?、……でんわ、かけたい、ですか?
(つかさの顎から脂汗が滴り落ちる)
yukari:……まあ、こうじゆんど、の、あぶら、が、あふれ、したたつてる。えねるぎーもんだい、かいけつ、ですねえ。
owl︰おや、これは? つかささん、まだ買い物には行かれてないので?
yukari:なん、ですと?
owl:あ、いや、かれこれ一時間ほど前に、買い物に行かれるとかおっしゃっていたかと。
yukari:あつ💡
(さぼてんゆかり、突然閃く!)
yukari:これは、さぼてんと、したことが……!
(ゆかり、全身の棘を逆立てる。棘と棘の間を凄まじい勢いで激しく飛び交う電波と素粒子、量子。周波数4096GIGAHzが開く)
yukari:つかささん!

【つかさ】
【守護霊さぼてんゆかり】
【フクロウ執事オウル】
【の】
【天使チャネリング】
【4096GIGAHz】

yukari:つかささん いつたいなにが あつたのか このちやねりんぐで おしえてたも
tsukasa:ミシッという 嫌な音して 激痛が 腰を駆け抜け 動くに動けず 嗚呼わたしの身体は stop motion
yukari:いたむのは こしの どのあたり
tsukasa:背骨の辺りがきりきりり 腰全体が あいててて
yukari:しばらく おて
yukari:おて❌  まて⭕

owl:もしかして、これは、人間がよく患う『ぎっくり腰』なのでは?
yukari:これは、なんともはや……。
owl:半妖の肉体にはふつう起こらないとされております。
(ゆかり、棘から火花を飛ばしながら思考・計算を何度も繰り返す)
yukari:はんよー、には、『つぼ』はないのですよね。
owl:そうです。当然の事ながら、つかささんにも『ツボ』は存在いたしません。
yukari:では『ひこー』をついてみましよう。
owl:は?『秘孔』ですか?それは余りに危険かと。秘孔は位置が混み合っている上に刺激の加減が難しい。下手すると、生命に関わりますぞ。
yukari:きけんは、がつてんしようちのすけ、やつてみなきや、わかりません。みすたーおうる、ひこーいがい、なにか、いいては、ありますか?
owl:……いいえ、ありません。
yukari:ゆかりが、ひこーを、つきます。ぎつくりごし、に、きく、ひこー、は、……
owl:義栗快復孔、ですね。
yukari:つかささん これからひこー つきますよ ちといたいかも がまんしてたも
tsukasa:お手柔らかに
(ゆかり、棘で義栗快復孔を突く)
yukari:あーたたたたたたた!
tsukasa:いーててててててて!
(つかさ、その場にがっくりと膝を付き、くず折れる)
yukari:つかささん!
owl:つかささん!
(つかさ、ぴくりとも動かない。ゆかりの後ろからあみださんがひょっこり顔を出す
amida:♬マイファニーバレンタイン
yukari:うわつ、あみださん! びつくりしたな、もう。
amida:よお、ゆかりちゃん、ひさしぶりやな。
yukari:なにしに、きたですか?
amida:うん?ご挨拶やなあ。近所にお迎えがあったんでな、そのついでにちょっと寄ってみたんや。つかさ、死んどるんやないか?息してないで。
yukari:いいえ、しんでません。
amida:そうか?秘孔は侮れん。義栗快復孔のすぐとなりの秘孔な、保栗安楽孔いうねん。一発でぽっくり逝っちゃうねんけど、間違えなかったか?
yukari:それは……。
amida:つかさ、な。わしはすっきゃ。たまさか半妖に生まれついたが故に、普通の人間と違う事に気付いてしまって。いつも独りぽっちで悩んで、悩んで。せっかく出来た仙人掌の友達にも先立たれて。
yukari:あみださん、やめてください、つかささんは、しんでなんかいない。
amida:Johdoが池の畔でつかさの様子、一緒に見てたやろ。毎日泣いて泣いて。死にたいって。
yukari:わすれません、しゆごれいめんきよをとつたのは、つかささんのそばに、ずつといるために……えぐつえぐつ。
amida:よしよし、ちゃんと、Johdoまで連れてったる。未来永劫、供養は絶やさへんから。
yukari:だいじよーぶです、しんでませんから。つかささんはしなないです。しぬはずないです。つかささんは、ゆかりといきると、やくそくしたです。だから、かつてにしなないです。ぜつたい、つかささんは、しなないのです!
(あみださん、倒れているつかさの腰を二度三度撫でる。何事もなかったかのように起き上がるつかさ。泣き出すゆかり)
amida:うんうん、あの秘孔は難しいんや。ゆかりちゃん、よう頑張った。最後の一撃だけがほんの0.5mmずれたんやな。泣かんでええ、泣かんでええ。チャレンジがなければ、前に進めへん。わしからつかさへの還暦祝いや。ほなまたなあ。
♬わしのーおちゃめなバレンタイン
(西の空に消えていくあみださん)



 🎶わたしのおちやめなばれんたいん……
朝早くからゆかりちゃんが歌っている。フクロウ執事のオウルがバタバタと朝餉の用意をしている。
 つかささん、あさですよ、おきてるですか? かお、あらうですよ。
 つかささん、おはようございます。今朝の朝餉は、ご飯、浅蜊と和布と豆腐の具沢山味噌汁、梅干、です。それでは自然の恵みに感謝していただきましょう。
 どうしたですか?つかささん、なにか、いいことでも?
 何だかすごい夢をね、見ちゃったんですよ。
 
 今日も、一人の半妖と一体の守護霊と一柱の精霊は街の片隅でひっそりと、でも面白可笑しく暮らしているのです。

 ……そんなわけで、つかさは腰痛に見舞われながらも、本日還暦を迎えました。
 皆さん、ありがとうございます。


writenby 2022/07/18
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戻り梅雨、いない蝉、守宮さん

2022-07-13 23:00:00 | daily tsukasa
戻り梅雨、いない蝉、守宮さん

yukari:つかささん!
tsukasa:ゆかりちゃん!
yukari:ああ、また、あめが、ふつてきたようです。
tsukasa:蒸し暑いですね。
yukari:おてんきおねーさんが、もどりづゆ、て、いつてました。
tsukasa:典型的な戻り梅雨の形ではありますね。
yukari:でも、ふべんですね、もどりづゆつて。『めんつゆ』のほうが、つかいかつてが、いいです。
tsukasa:……そうですね。納豆にも使えますものねえ。



tsukasa:ゆかりちゃん!
yukari:つかささん!
tsukasa:蝉の声を全く聞かないし、姿も見ないんだが。
yukari:さあ。ひしよ、にでも、いつてるんじやあ、ないですか?
tsukasa:なら、いいんだけれど。ただ、抜け殻さえ見ないというのが、気になって、ねえ。
yukari:……うわさ、なんですが、えいがの『シン・ウルトラマン』に、でてた、せいじん、は、みんなほんもので、しゆつえんりよう、がわりに、『せみ・てんぷら・ていしよく』を、たべていた、とか、いない、とか。
tsukasa:……ゾクゾクするねえ。
yukari:つかささんも、いかがです?、『せみ・てん・てい』おひとつ。
tsukasa:……遠慮、して、おきます。
yukari:では、おやすみなさい。
tsukasa:おやすみなさい。
owl:……江ノ電は、速いよう!……zzz
yukari:びつくり、した。  
  
yamori:ああ、今夜も魔窟は、平和だねえ、よしよし。







七夕 ――織姫愛歌

2022-07-07 18:15:00 | uta
 ――織姫愛歌
   全六首

ゆあみして
ゆかたあてやか
うすけしよう
いさこきいてん
あなたかもとへ

 湯浴みして浴衣艶やか薄化粧
 いざ漕ぎ出ん彦星《あなた》がもとへ


かわらさる
すかしきゑかお
なつかしく
ないてしまいし
あまのかわはん

 変わらざる清しき笑顔懐かしく
 泣いてしまいし天の河畔


ひみなりと
わかてりようりを
たいらげて
われおりいとしと
なくひこいとしや

 美味なりと我が手料理を平らげて
 我織姫愛しと泣く彦星愛しや


ひこやひこ
おりのわかまま
きいてたも
あさまてねすに
おりめててたも

  彦星や彦星織姫の我儘聞いて給
  朝まで寝ずに織姫愛でて給


ひこかほか
たれにもゆるさし
このはたに
ひこよなんしか
らくいんをおせ

  彦星が他誰にも許さじこの肌に
  彦星よ汝が烙印を押せ


きぬきぬは
いまもむかしも
さみしかり
ひこほしおりひめ
やまぬくちづけ

  後朝は今も昔も寂しかり
  彦星織姫止まぬ口付け



written:2022/07/07


雨音

2022-07-04 19:20:00 | poem



ⅰ. あまね


夜が明けて間もない【空】では
点在していた青が急速に消えて
音も無いまま【雨】がぱらつき
それは確実に月曜日の朝を湿し
駅にゆく人が増えた舗道を湿し
あろうことかわたしまでも湿し
何と駅前ベンチを本降りに浸し
雨音の響きは【あまねのうた】
水の匂いの【ハミング】だとか
滴の弾ける【スキャット】など
音色に包み抱かれ束の間微睡み
石榴か木通のように夢を喰んだ


written:2017/10/25
     【再掲載】



Ⅱ.あまね 短歌三首

めをとじて
ねむりがふちに
たたずめば
あまねのうたの
きこえこすかな


眼を閉じて眠りが淵に佇めば
あまねのうたの聞こえ越すかな




あめかほり
きりさめこさめ
ふりはじめ
あまねのゑみて
かけゆくすがた


雨香り霧雨小雨振り始め
あまねの笑みて掛け行く姿




ものかげに
かくれひつそり
うたいをる
はじらひおとめ
あめふりあまね


物陰に隠れひっそり謳ひをる
恥じらひ乙女雨降り雨音


written 2022/07/04