V=4/3πr³

詩と物語を紡ぎます

perfume

2020-02-26 22:00:00 | poem
 空は
 際どい温もりで
 気怠く雲に覆われ

 春の
 もう一つの顔を
 見せ付けてやまない



 乙女心は
 時に気紛れ
 時に頑な

 ………だけど

 ennuiという名の
 perfumeはまだ
 わたしには着こなせない



 だから今夜
 あの淡い香りは
 その小瓶ごと

 そうよ今夜
 この花の下から
 雨に流すわ



written
20/02/26

隠れん坊

2020-02-24 00:45:00 | poem
   1.南南西

 昔はこの辺りの路地も駆け回る子供がわんさか居ってな、皆んな寒いのなんかぁすっかり忘れて汗まで流してさあ、わいわいきゃあきゃあとそれはにぎやかなもんだったよ。
 路地裏ごとに口煩い年寄りが大抵ひとりかふたり居てよ、長屋の入り口ンとこの床几に座ってよじっと見てんだな。
 大きい子は小さい子の世話としてやるのが当たり前でヨ、でもどっちも同じ子供サ、手に負えなくなる時があるんだな。
 そンときはそれ口煩い爺ィか婆ァの出番ってわけなのさ、叱られるにしろ宥められるにしろじんわり温みがあった。

 皆んな何処へ行っちまったのかね?年寄りも子供等もさ。今日の、今、吹いてるみたいな、風みたいな、温みもさ。
 これがよ、つまり時代って奴、なのかねえ?なあ、あんた、さァ。



   2.北東

 遅い午後だ。路地の隙間という隙間を駆け回る足音が風の中で揺れている。四人?六人?いやもっと大勢の足音で大人と子供が入り混じっている。息遣いや声など一切聞こえないのに足音だけが風の中で同じような道を行ったり来たり隅っこを突っつく様に動き回っている。

 昨日の宵の口だ。風が止んだと思ったらいきなり雲が湧いて出て、

 さあああああ…………

 と一刻ばかり雨が降ってからだ。それからずっとこの時刻になるまで、さわさわと落ち着かない。

 もお、いいヨオ。

 ふいに後ろで幼さの抜けていない声がしたのと、窓を開けたのが殆ど同時だった。激しい風が吹き込んで部屋中を掻き回し、止んだ。音という音すべてが消えて、開け放った窓の向こうは昨日の暖かさが嘘のような冬晴れで、日が西に傾いている。

 ふふふふふ。
 ははははは。

 子供の笑い声が蛇行しながら空に上っていき、にわかに平凡な休日の生活音が北風とともに押し寄せてきた。
 一度目を逸らし、頭を振ってもう一度空を見上げる。その透き通った青も季節の風も我儘な子供だから手に負えない。

 だから、嫌いだ。


written
2020/02/22,23,24.
2月22日東京に吹いた春一番に寄せて

にゃりんピック

2020-02-22 14:00:00 | tale
 人間(めしつかい)どものオリンピック何するものぞ。『猫による猫のための猫の祭典』。猫の日記念にゃりんピック第一回東京大会。『あなた何さま、お猫さま』のキャッチフレーズのもと、ここ下町路地裏スタジアムから生放送でお送りしております、にゃあにゃあ。
 残すは最終競技、大人気の『一軒家登り降り競争』決勝は稀に見る大熱戦、ごろごろ、現在予選第三位【マヌルネコ】のマヌールヤマダ(モンゴル)と、同じく第二位【スコティッシュフォールド】のまる(スコットランド)が、199点で並んでおります。最後の選手、予選第一位【茶トラ】のプランチャ(日本)、マタタビメダルを獲得するには満点を出すしかありません。

 さあ、フィニッシュに向かって歩を進めるプランチャ。自信に溢れた足取り。
 玄関の庇から門の位置を確かめるプランチャ。飛べるか、マタタビメダルは目の前だ。

 飛んだ! 着地は……乱れたか?


 いや、こらえた、プランチャ、こらえた! こらえてフィニッシュ! 
 採点は、……にゃっほう! 満点! 満点です! やったぞプランチャ! 200点満点で、マタタビメダルを獲得です。
 以上、実況はアニャウンサーの猫の森、でした。さようニャら。


雨水

2020-02-21 21:45:00 | uta
 令和二年二月十九日の空。
 午前十一時五十五分、太陽南中。

 二月の空は日に日に明るくなってゆく。
 かつて気象キャスターとして活躍された倉嶋厚氏は、それを『光の季節』とか『光の春』と呼んだ。
 ひかりに包まれて、梅が香っている。

 雨水の陽は白く明るく澄みにけり南中の空に梅の香ゆかし

 うすいのひは しろくあかるく すみにけり なんちゆうのそらに うめのかゆかし

午後五時の交差点

2020-02-18 22:00:00 | daily tsukasa
 昔は狐が行き来しただろう、王子のだらだら坂を登りきった先の交差点は、日没を迎えようとしている。


 このところ、暖かい日寒い日が日替わりで、今日は通院日だというのに寒い一日だった。夕陽色の温みに冷気が勝る時間帯。翳りゆく街。翳りゆく空。それにしても日がのびた。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

?:さあ、ココロにたまってる、『うっふん』を、いまここで、たいよーに、ほえるのです!

yukari:うつふん!
tsukasa:うっふん!
?:もっともっと、ほえるのです!
yukari:うつふん!
tsukasa:うっふん!
?:ははは、ははははは
yukari:うつふん!
tsukasa:うっふん!

owl:これっ、誰じゃ? それに、うっふん、じゃなくて【鬱憤】《うっぷん》じゃろ!
?:わあっ!(どろん)

yukari:はつ?
tsukasa:はっ?
owl:ほうほう、ふたり揃って、王子のキツネに化かされました、な。
yukari:きつねさん、に?
tsukasa:おばかさん、にされた、と?
owl:……はい、はっきり言って……あまりにも、おばかさん、でしたな。
yukari:…………。
tsukasa:…………