二〇二〇年三月❤
十三日の金曜日❤十三時四十分。東京駅。
(法事に出席するため、故郷に帰省することになったつかささんは、弟との待ち合わせ場所である新幹線南乗換口に到着する。ふくろう執事のオウルと守護霊さぼてんゆかりがお見送りに来ている。)
yukari:じゆーさんにちの、きんよーび、だいいつさくめ、では、じえいそんは、ほつけのおめん、なんて、かぶつてないですよ。
owl:ホッケじゃなくてアイスホッケー、でしょう?
yukari:あいすほつけ、じやなくて、めのところ、だけに、あなを、あけた、ふくろを、かぶつて、いるんだから。
owl:そんなバカな。ホッケーのお面にチェーンソーはジェイソンのトレードマークてはありませんか?
yukari:ちえんそー、だつて、つかつてないです。ろんよりしよーこ、なかがわしようこ、です。こんや、でいぶいでい、で、かくにんしましよう。
owl:承知しました。……ところでつかささん、弟さんとの待ち合わせ時刻は何時ですか?
tsukasa:ひとよんまるまる時です。
owl:ほうほう、まだ二十分ありますな。
tsukasa:……早め早めに行動するのがつかさの信条ですから。
owl:それは感心ですな、ほうほうほう。
yukari:(ぼそっと)ちがいます、きよねん、ちこく、した、からです、くつくつくつ。
owl:ん? 遅刻、とは?
tsukasa:……ゆかりちゃん。
yukari:じゆーさん、にちの、きんよーび、さすぺんす、げきじよー! くさばの、かげから、さぼてんは、みてた! じやんじやんじやああん!
(tsukasa、バツの悪い表情で、知らんぷりをしている。)
yukari:そのひのあさ、つかささんは、にどね、したです。めをさますと、たいへんだ、ちこく、してしまうー!、と、あわてて、でかけましたが、おや? にじゆつぷんご、もどつて、きたのです。
owl:なにゆえ、ですか?
yukari:♪さいふをー、わすれてー、ふゆかいな、つかささーん、るーるるるるー、ちこくだ、まにあわんー♪
ぜつぼーてきな、かおして、おとうとくんに、めーるを、おくつたです。『ねぼーした、まにあわん』つて。あははははつ。
owl:……何、開き直ってるんですか?
yukari:でしよう? おとうとくんにも、つつこまれた、です。あははははつ。
tsukasa:違うんです、焦って、打ち損じたメールを間違ってそのまま送ってしまったんです。開き直る、だなんて。
owl:で、行くのを止めたんですか?
tsukasa:東京駅までタクシーをとばしたんですが、乗る予定の新幹線には間に合いませんでした。で、一時間遅れで後発に乗り、夕方駅のホテルに到着しましたよ。
(笑い転げるowlとyukari。いじけるtsukasa。)
owl:ほほほう。なるほど、普段は使わない目覚ましをセットしていたのは、そういう理由があったからですか。
tsukasa:ええ、そういうことです、いじいじ。
yukari:あはははは、おもしろかつたですう。
owl:ところで先ほどから、香ばしい香りがしませんか?
yukari:……あ、この、かおりは。
tsukasa:ああ、そこに珈琲屋さんがありますから。
owl・yukari:珈琲!
tsukasa:飲みますか?
owl・yukari:飲みまーす!
(tsukasa、STANDBY TOKYOに入り珈琲を一杯買う。三人、一杯の珈琲を分け合って飲む。)
owl:ああ、染みますなあ。
yukari:ふう、いいですねえ、……あれ? ぺんぎんさんがいつぱい。
owl:ふむふむ、Suicaのペンギンさんグッズがいっぱい並んでますよ。
tsukasa:ここは珈琲屋さんと雑貨屋さんをやってるんですね。
yukari:ああ、うつとり♡。
owl:ゆかりちゃんがそれほどペンギンさんを好まれるとは存じ上げませんでした。
tsukasa:わたしも、です。生前、ジンベエザメにハマっていた時期はありましたが。
yukari:ああ、ぺんぎんさん♡、かわいい、です♡、つかささん、みたい。
tsukasa:……は?
owl:……い?
tsukasa:Mr.オウル、正直に教えてください。わたし、ペンギンさんに似てますか?
owl:……いいえ、あり得ません。猛禽類の名にかけて、断言します。全く!似ていませんし、全く!可愛くありません。
tsukasa:激しく、胸に刺さる言葉ですが……ですよね。今までそんなこと、言われたことなかったし。
owl:ここにもし、ですぞ、ペンギンさんが多数いらっしゃったなら、つかささんへの抗議デモやペンギンさん権利回復評議会によるペンギンさん大暴動が起きて、ですな、首都壊滅の危機が訪れるのではないか、と予想されるくらい、似てないし可愛くないです。
tsukasa:Mr.オウル、それほどまで……似てない、と。
owl:はい。僭越ながら、断言します!
tsukasa:……何だか、逆に落ち込んじゃいそうです。
owl:ゆかりちゃんが、なにゆえ似てると思われるのか、はっきりさせましょう、人類とペンギンの未来のために!
tsukasa:Mr.オウル、もしかしてだけど。
owl:は?
tsukasa:ただ、面白がっているだけですね?
owl:(オウルこころの声:ギクッ)……いいえ、猛禽類の名にかけて、そのようなことは断じて、……。
tsukasa:いいんです、無理しなくて。わたしがゆかりちゃんに聞きます。
yukari:うっとり♡いいなあ。
tsukasa:ゆかりちゃん、Mr.オウルとの協議の結果、わたしとペンギンさんは似ていないと言う見解に落ち着いたのですがね。
yukari:ふつふつふつ。つかささんと、ぺんぎんさんは、にてるし、かわいい、です。あたまが、おおきくつて♡、つるりつと、なでがたで♡、おなかが、まあるくつて♡、あし【脚】が、みじかくて♡、あし【足】が、でつかいところ♡なんかが、かわいいんですよ。
tsukasa:………(茫然)………。
owl:ふむふむ、ゆかりちゃんにとってつかささんは、ゆるキャラチックな形状をしているのが可愛いと。さぼてんの『かわいい』とは『おもしろい』なのかもしれませんなあ、ほうほう。
tsukasa:はぁ、……人生は一杯の珈琲だ。それは地獄のように熱く地獄のように苦い。(by ……誰だったか忘れた)
yukari:さあて、そろそろでは、ありませんか、まちあわせ。
tsukasa:おお、ちょうど、ひとよんまるまる時だ。
(tsukasa、あたりを見渡す)
owl:つかささんの弟さんとは、どのようなお方ですか?
yukari:ちよつとみ、には、にてないよーに、みえるんだけど、よくみると、にてるの。あとは、すごく、あたまが、よくて、せいが、たかいです。
owl:頭が良くて、背が高い?
yukari:たしか、178めーとる、かな。
owl:はあ?
yukari:あれ?、178なのめーとる、だつけ。
owl:おわっ?
yukari:あつ、178こーねん、だ。
owl:くらくら、ばったり。
tsukasa:178せんちめーとる、ですよ。
yukari:あつ、そーでした、うふふ。
tsukasa:Mr.オウルが悶絶してますが、大丈夫ですか?
yukari:はいつ、とらくたあ・びいむ、で、ひつぱつて、かえりますから。あつ、おとうとくん、きましたね。
tsukasa:じゃあ、行ってきますね。
yukari:いつてらつしやい。
(つかさ、弟のもとに歩み寄っていく。その後ろ姿を見つめているさぼてん。つかさ、ふと振り返り、さぼてんに小さく手を振る。さぼてん、棘を振って答える。)
(その夜。つかさ、創作ノートになにか書いている。完成。万年筆を胸ポケットにしまって手帳を見つめる。)
collected materials
2020/03/13,20,21
written
2020/03/22,23,24,25
imploved
2020/03/26