男の心は先程家路にきた時、・・・ 2015-05-13 19:25:08 | 小説 男の心は先程家路にきた時、過去の愛とセックスの過失という憂鬱が曇り空のように、すっかりかぶさってきていた。小心な男にはそれが瀬戸際の自分を意識させた、深刻さがチョウの小さな蜘蛛の空き巣に似て、薫風に吹かれる気楽さに席を譲っているようで、男は夢から目覚めてすぐのような、あの陽炎に似た心地がぶりかえしてくる。とその心地が悪くない。男は陽のさすベンチで鼻歌の一つも飛びだしかねないくらいだ。それで男はちょっぴりイントロ風に、ベンチの足先を這っていく風な思いを思っている。 (つづく)