おしのび
最後のトンネルで肌身になつかしい匂いがからみついてきた。電車は短いトンネルを抜け出ると故郷を開いて見せている。期待通り快い心持ちに犯され、中山理恵はその窓にやはり裏切られていなかった。つまりその湾の海原や河口のさ緑を敷くつつみ、桜をともす岬へと目をこらし、理恵がいる。まっ白く大きいマスクを車窓の海に浮かべているが、その瞬間絵のようにながめなおしている。
「ぼくの目には絵のようです」
そう敏彦ならきっと言うだろう・・・・・・
(つづく)
最後のトンネルで肌身になつかしい匂いがからみついてきた。電車は短いトンネルを抜け出ると故郷を開いて見せている。期待通り快い心持ちに犯され、中山理恵はその窓にやはり裏切られていなかった。つまりその湾の海原や河口のさ緑を敷くつつみ、桜をともす岬へと目をこらし、理恵がいる。まっ白く大きいマスクを車窓の海に浮かべているが、その瞬間絵のようにながめなおしている。
「ぼくの目には絵のようです」
そう敏彦ならきっと言うだろう・・・・・・
(つづく)