プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

☆< あのこは貴族 >

2021年03月22日 | ☆映画館で見た映画。
わたしはアニメ「ハイキュー!!」が大好きで。
そこから声優にも興味を持つようになった。それまで声優といえば
エンドクレジットに並ぶ単なる名前でしかなかったのだが、
世の中を見回すと、声優さんはラジオの仕事を多くやっているんですね。

わたしが気に入って聴いているラジオがあって、
そのコーナーでパーソナリティがひたすら映画について語るというものがあり。
しかし映画に詳しい人だから、わたしが見る映画とはまったく傾向が合わず。

唯一「スパイの妻」はラジオで熱く語られていたので、
それでもその気になって見てみたのだが、わたしには面白くなく。

そして今回「あのこは貴族」という映画がおすすめされていた。
「自分が年末に選ぶ年間ベスト1はこれではないかと思う」……とまでいうから。
だってまだ3月ですよ?これからこの人は30本、40本映画を見るであろうのに
この段階でそう言わせる映画って……

くそー。見たいぞ。門脇麦は贔屓だし、石橋静河は「この恋あたためますか」で
注目した女優だし。水原希子はそんなに好きな顔じゃないけど、
「高台家の人々」でけっこう良かったし。

でもこっちでは上映館はないだろうと思ったの。むしろないことを期待していた。
行くの面倒だから。
が、幸か不幸かチネ・ラヴィータでやってたんですよ。
しかも今週は1日2回上映だが、来週からは1回になる。時間も遅くなる。
見るなら今週中に見ないと。

でもそのラジオを聴いたのが火曜日の夜。……レディースデイ終わってる!
そうするとなにかい?正規料金で見ろってことかい?
自慢じゃないが、正規料金で見たことなんて……「猫の恩返し」以来ないぞ!
(嘘。多分1回か2回はあったと思う)
しかも駐車料金のこととか考えると、普段1200円とかで見ている映画が倍以上の金額。

ううっ。もし面白くなかったら、恨むぞ、内山昂輝!











そして、見た結果。










大満足だったのでした!





面白かったけれど、明確にどこがいいと言えない映画。
あらすじやテーマは根本的にはそんなに好きじゃなかったんだよね。
結末も、ふんわりしすぎていて……わたしはツライ話は見たくないし、
幸せな結末の方がうれしいんだけど、この話をカチッと作るには
この結末ではどうかなーという気がした。

が、見ていて満足な映画でした。
場面ごと、台詞ごとに充実感がある。こういうのも映画の醍醐味だなあ。

最初のタクシーの運転手さんの台詞が無神経だったので、
この調子で無神経な台詞を聞かされ続けるのではないかとオソレをなしたが、
幸いなことに無神経な台詞はこれだけでした。

あとの作りは繊細も繊細、しかも線の細さを感じさせない繊細。

家族の会話も、その雰囲気も、わかるわかると思わせる。
お姉さん2人がけっこう蓮っ葉なのもむしろそれらしい気がする。
門脇麦のお父さん、お母さんにしては両親が老けすぎていることが違和感だったけど、
よく考えたらお姉さんが十数歳離れているなら、そのくらいの年齢感。

いろんな人ととっかえひっかえ出会って、高良健吾が出て来た時の安心感といったら!
そりゃ恋に落ちますよ。あの男たちの後なら特に。
そこで門脇麦と同化する。一緒に高良健吾に恋をする。さすがにタクシーの中で
「こんなことってあるのかしら」とつぶやくのにはひいたが。
タクシーの運転手さん、よく受けられましたね。エスパーか。

雨男の設定も効いていた。高良健吾の家族との顔合わせの時に降っていなかったのは、
つまりそういうことですよね。
そういうわかりやすいところは良かった。

わたしとしては門脇麦パート、水原希子パート、もっとどっちかに寄った話に
した方が良かったかなと思った。
良かったというよりは、そうするべき話、そうした方がわかりやすい。
でも寄らないことがこの映画の眼目なんだろうな。
みんな悪くない。みんな少しずつ自堕落で(←本来は違うが周りに流されるという意味)、
少しずつ健気で、一所懸命生きてる。

たっぷりした美味しい練り切りを食べている感じ。
フランス菓子のような――華やかさとか洋酒やスパイスの存在が強く、
手がこんでいるということがわかりやすい派手なお菓子――ではないけれども、
きっちり繊細に作られている。
全て神経を使って作られていることを感じる。丁寧な仕事。


※※※※※※※※※※※※


が、けっこうあちこち場面が切り替わり、また時間軸も変わるので、
よくわからないところもあった。高良健吾と水原希子が再会するところは、
どこの時間軸なのか瞬間的にはわからなかった。

高良健吾が門脇麦にアルバムを見せたところはどこなんでしょうね?
調度からして実家だと思ったのだが、その後に両親との初顔合わせが来る。

結婚式を行なったところはどこ?結婚式場?それとも高良健吾の実家には
和館の隣に洋館があった?

水原希子と友達のシーンも何度もあるうちのいくつかは東京なのか地元なのか、
瞬間的にはわからなくて。水原希子がどんな仕事をしているのか、
具体的に語られないのも気になった。

いや、もっと気になったのは、自分の名刺がないからと言って、
自分のオトコの名刺をもらって見ず知らずの人に渡すかね?というところ。
これはビジネスとしては引く行為ではないか。別に高良健吾と同じ会社って
わけではないでしょう?

それから石橋静河が2人を引き合わせるのは、やはり疑問に思った。
対決させようと思うのでなければ、会わせることにどういった理由が……。

出しゃばりすぎではないだろうか。
そこまでして、石橋静河は何かあった時責任を取れるのだろうか。
門脇麦の性格は知ってただろうけど、水原希子の方は見知らぬ人でしょ?
なんか語っているけど、ここは納得出来なかった。


離婚までの過程はもう少ししつこく描いても良かった。
修羅場を見たいわけじゃないんだけど、どうしようもないと思わせるシーンを
もうちょっと入れておかないと。想像させることもいいけど見せるのも大事。
「もう離婚かい」と感じた。

あの場でビンタはない……と思ったが、フィクションとして可とする。
派手な場面にしたかったんだろう。

あとは最後がなあ。
正直にいえばうれしかった。高良健吾の声が突然聞こえて来た時。
「もし良ければ、後で」という言い方にキュンとした。
だが元夫婦、離婚を経験したカップルがあんな風にまた新鮮に出会えるだろうか。
うれしかったんだけどね。でも夢物語だよね。実際は無理かなあと思って。


※※※※※※※※※※※※


門脇麦は良かったですよ。好きな女優だ。
やっぱりちゃんとした脚本で演じる俳優は2割増し、3割増しで輝きますね。
その俳優が作品に光を与える。
今後も順調にお進みください。

水原希子は顔がタイプではない。
この役柄で「いい人」でいるのは難しかった気もする。でも敵視せずに見られた。
身を引く際は潔すぎてリアリティがなかったが。
二の腕が細すぎてアワレに見えたので、衣装や撮り方をもう少し考えて欲しかった。大学入学の頃の垢抜けなさが秀逸。上手いと思った。

高良健吾は、……この人、「こうら」なんですか。初めて知った。
ずっと「たから」だと思っていた。そして沖縄出身だと思っていた。
あんまりがっつり見たことないんだよなー。ちょこちょこしか。
ちゃんと名家の人に見えました。それだけでもお手柄。
そう見える人って、そんなにはいませんからね。

ちなみに門脇麦は良家の人だと思う。なので、貴族というのは疑問。
高良健吾は名家。

あっ!内山昂輝が「誰もがきっと好きになるシーン」といった
ジャムのシーンですが、わたしは好きじゃなかったぞ!
せめてスプーンで……と思った。あそこは何を表現したくて指ですくったんですか?
指ですくいたいなら、小瓶にして、最後のひとなめにして欲しかった。
それなら全然文句はなかった。
唾液を瓶に入れるとどうなるかということがわからないアホな人に見えてしまう。

あの台所、良家にしては狭くてわびしすぎますよね?そこ疑問。

石橋静河は、前述の言動の謎があったので若干すっきりしなかった。
でも演技的には不満はなかったので、引き続いて贔屓にしていきたい。
門脇麦と2人でくっついて歩いているところは可愛かったですね。
女の子たちが心底楽しそうにしていると、それだけで幸福感がある。


高齢者チームは人数が多すぎて、今一つ印象にない……。
高橋ひとみは典型的な名家のお姑さん。銀粉蝶は良家にしてはあまりに
明け透けな物言いではないかと思った。
良家はあまりズケズケ言わないものだという頭がある。
そこは「嫁入った人」のリアルなのかもしれないが。


ああ、やれやれ。とりとめなく書いた。
正直、内山昂輝が大絶賛する理由はよくわからなかった。
あとでラジオを聴き直しますが。

が、とにかく見て良かったです。高い単価になったけれどもそれより満足度が高かった。
どうもありがとう。




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