窓際の席

～～～「恋人の小径」？島根大学構内～～～

高校に入学した1960年、安保の年だが、わたしは教室の
窓際の席に座っていた。すっかり忘れていた
そのことを、今回、ふと思い出した。

担任の指示で出席簿の順に座ったら、時代は混合名簿からは
はるかに遠くて、６人いた女子が、みな窓際になったのだ。
そこからはサッカーゴールや野球のバックネットと
ともに、校庭のユーカリや竜舌蘭が見える。
見晴らしはいいが、女子がまとめて隅に追いやられた
ことが、ちょっと気に触った。

私は、生徒が日替わりでつけていた学級日誌に、
その席の快適さを強調し、女子は繊細なので、
男子の間にまじらず、神経疲労をいやしたい、どうかよそに
移してくれるなと、皮肉をこめて書いたら、
「席替えの件了解、三段論法、お見事。」
と担任からの返事があった。

彼は35歳の化学の教師で、ガレー船の監督のように、
生徒たちを鞭打って勉強に駆り立てていたが、
やはり若い異性でもあった。私は、ちょっと彼の
別の面を刺激してみたかったのだ。席の件は
ある程度本音だが切実でも何でもなかった。
彼のまともすぎる反応に対しては、期待はずれの
不満をおぼえた。

15歳のころの、この微妙な心理は、今、文章をつづるうち、
しだいに思い出したが、高校時代の思い出が殆んど
そうであるように、後味が悪く、青春の
さわやかさが感じられない。

きっと、今まで忘れていたのも、そのせいだろう。
　　　　　　　　　　　　　　
文章教室　課題「窓」　2006年5月21日作成　5月31日返却

【八木先生評】

青春時代の心の揺れは、結構複雑で、理屈だけでは理解できない
ことがあります。あとで考えれば、なんでも
ないことも多いのですが・・・・。　
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校庭のユーカリの樹の名前は、忘れていて、関東在住の友や
鹿児島の母校にでんわで問い合わせて知った。乾燥に強いのか、
シリアでは至るところにある木だったが。