一の谷の 軍(いくさ)破れ
討たれし平家の 公達(きんだち)あわれ
暁(あかつき)寒き 須磨の嵐に
聞こえしはこれか 青葉の笛
更くる夜半(よわ)に 門(かど)を敲(たた)き
わが師に託せし 言の葉(ことのは)あわれ
今わの際(きわ)まで 持ちし箙(えびら)に
残れるは「花や 今宵(こよい)」の歌
「青葉の笛」大和田建樹作詞
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火星が出てゐる。
要するにどうすればいいか、といふ問は、
折角たどった思索の道を初にかへす。
要するにどうでもいいのか。
否、否、無限大に否。
待つがいい、さうして第一の力を以て、
そんな問に急ぐお前の弱さを滅ぼすがいい。
予約された結果を思ふのは卑しい。
正しい原因に生きる事、
それのみが浄い。(途中略)
火星が出てゐる。
天が後ろに回転する。
無数の遠い世界が登って来る。
おれは昔の詩人 . . . 本文を読む
林の中で、縛られていない鹿が食物を求めて欲するところに赴くように、
聡明な人は独立自由をめざして、犀の角のようにただ独り歩め。
妻子も、父母も、財宝も穀物も、親族やそのほかあらゆる欲望までも、
すべて捨てて、犀の角のようにただ独り歩め。
寒さと暑さと、飢えと渇えと、風と太陽の熱と、アブと蛇と、これら
すべてのものに打ち勝って、犀の角のようにただ独り歩め。
葉の落ちたパーリチャッタ樹のように、 . . . 本文を読む
ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。
作 萩原朔太郎
新潮文庫・現代名詩選(中)1980
去年、私が「みづいろの窓」をブログのタイトルにしようかと思い、
検索したら、大勢の人がこれを使 . . . 本文を読む
当ブログのタイトル「しづのをだまき」は静御前の歌からとったものである。
囚われ人となった義経の愛妾、静は、鶴岡八幡宮の社前で、参詣に訪れた頼朝の命により、舞を舞うことになる。伴奏をする楽人は、笛が畠山重忠、鼓が工藤祐経、鉦が梶原景時。金色の立烏帽子に水干姿の静が、紅色の扇を翻しながら舞う。
「しづやしづ しづのをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな
吉野山 峰の白雪踏分けて 入りにし人 . . . 本文を読む
1956年 日本・現代ぷろだくしょん 122分(高槻松竹セントラルにて)今井正監督 橋本忍脚本 正木ひろし原作出演 草薙幸二郎 松山照夫 左幸子 内藤武敏 飯田蝶子「それでもボクはやってない」が評判を呼んでいる。私も見て、いい映画だと思ったが、冤罪事件は今に始まったことではないのが、この映画を見てもわかる。八海(やかい)事件、それは1951年1月私が小学に入る直前に起きた強盗殺人事件で、6年生の時 . . . 本文を読む
2006 日本 シネカノン 2h05
監督 阪本順治 原作 桐野夏生
出演 風吹ジュン 三田佳子 寺尾聡 加藤治子 藤田弓子 今陽子
「最近の日本映画は見ない」と決めている人もいるが1000円(シニア料金)
でなかったら絶対見ないと思うような作品が割と世評が高かったり
して、若者との感性の違いに、ぼう然とすることも度々だ。
そんな中で珍しく、見てよかったのがこの作品。
淡々と暮らしてきた中流家 . . . 本文を読む
著者 谷崎潤一郎(1886-1965) 中公文庫 97年版(図書館)
初出 1956年1月 中央公論
初老の男性の性の悩みがテーマの小説。
雑誌連載当時は、売春禁止法案を審議中の衆院法務委員会で取り上げられ、
「文芸の名の下に老人たちがああいういたずらをすること」
「新道徳が確立しない時期に、ああいうものがハンランすること」が思春期の
青少年に悪影響を与えるのではと、「太陽の季節」ともども懸念 . . . 本文を読む
2006年米国 2h03 監督 ソフィア・コッポラ 主演 キルスティン・ダンスト
マリアンヌ・フェイスフル 鑑賞@三番街シネマ
ブログを見ると軟派から硬派まで、映画ファンが、皆かぶとを脱いで
いるので、やおらおみ腰を上げて、見てきた。「Virgin suicides」1999
の印象も悪くなかったし。結果は、期待に違わず楽しめた。
ソフィア・コッポラは、親譲りの才能と、良い環境で育った
事を、ち . . . 本文を読む