映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
ミナリ
画像はオシロイバナ(白粉花)別名ユウゲショウ(夕化粧)
2020 米 115分 DVDで鑑賞
監督 リー・アイザック・チョン
アーカンソーの農地にカリフォルニアの都会から移って来た韓国人一家の物語である。「かわいい坊やだ」「えらいねえ、強いねえ、すごいねえ」祖母に褒められた男の子は病気を克服して成長し、やがて映画監督リー・アイザック・チョンになった。この映画は男の子と祖母が主役の映画と言っていいと思う。成功を求めて移住し、無邪気に夢を語る父、怒りを押し殺して猛烈に働く母親、小型の母親のような姉。女たちは有能だが家長に対してよわい。男はのびのびと振舞って、失敗もするし成功もする。女はそのあとに従い、反応するだけ。孫から信じられないような侮辱を受けても祖母は怒らず、両親に罰される孫をとりなす。男の孫だから。もし女の孫が祖父に対して同じことをしたらどうなるか。この男女関係は韓国文化の縮図である。「82年生まれ、キムジョン」を思い出す。
「韓国での生活はつらかった」と夫が言う。80年代初め、光州事件などのあった軍事政権時代だろうか。
同胞がいない環境では、故郷の味が恋しい。母親が故国から持参した唐辛子の粉、煮干しなどに妻は涙する。味噌や醤油の味に焦がれ、5粒のラッキョウに狂喜したのを思い出した。題名のミナリとは春の七草のトップ、芹の意味。祖母が母国から(違法に?)持ち込んだ種から生い茂った芹は青々と育って、移民の繁栄を象徴しているかのようだ。
文字も読めない祖母から3代目には大学出の映画監督になる孫が出てくる。ある意味でアメリカン・ドリームの体現と言ってもいいかもしれない。
映像の美しさは素晴らしい。
最後に「すべての祖母に捧ぐ」とあるが私ならまっぴらごめんである、孫の〇〇を飲まされても笑ってすますのが理想の祖母だというのならば。別の韓国映画で、「すべての母親に捧ぐ」とあった。韓国の男性の映画監督は、何と女を尊重するのだろう!と思った方、ちょっと待って、韓国女性の出産率は世界一低いという統計を知ってほしい。謝意をあらわすのは舌だかペンだかを動かすだけのわずかな労力ですむ。それで一生涯、身を捨ててただ働きをするようなお人好しの韓国女性が、昔はいたのだろうが、字の読めるようになった今、いなくなったということではないか。
→「怪しい彼女」15-3-2
« 文読む月日(上) | ジュリア » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |