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悼 エリノア・パーカー

                 エリノア・パーカー 誕生 1922年6月24日            
                  Eleanor Parker   死去 2013年12月9日

91歳で亡くなったエリノア・パーカーはアカデミー賞に3回もノミネートされた演技派だが、端的に気品ある美貌の女優と言える。私が見たのは「サウンド・オヴ・ミュージック」の男爵夫人。クリストファー・プラマーのトラップ大佐をジュリー・アンドリュースのマリアと争って敗れるが、見事な負けっぷりだった。容貌に絶対の自信があると、出処進退がきれいになるのかもしれない。(彼女は子供たちと野外で遊べないし、みな全寮制の学校に送り込むなんて宣言していたから、誰が見ても負けは明白だった)

       

ここで話は枝道に入る。通夜の席で世間話をするようなものだが……。

条件からいえば圧倒的優位にありながら敗れ去る女性というのが、映画や小説にはよく出てくる。現代は少し違うかもしれないがこれまで男性は、金や地位、教養や美貌を備えた女性より、いじらしくつつましい女性を選ぶことが多かった。その心理は自分が優位に立ちたいとか、安らぎを得たいとか、いう事だろうが何より自信が鼻につくのだろう。また圧倒的多数の女性大衆の支持を得ないと、映画も小説もヒットしないであろう。少しは自分にも歩があるという錯覚を持たせるのが大衆娯楽の基本である。

「ジェーン・エア」(1847)ではブランシシュ・イングラム嬢が家庭教師ジェーン・エアに敗れる。
「暖流」(1939)での高峰三枝子扮する病院長のお嬢様は水戸光子の看護婦に譲る。
「湯島詣」(泉鏡花1899)では、七歳から巴里留学の正妻が孤児の芸者蝶吉に夫を取られる。
「愛染かつら」(1938)では米国留学中の御嬢さん(桑野通子)が子持ちの看護婦・高石かつ枝(田中絹代)に負ける。
           この御嬢さんは近代的で知的で優しく、私にとってはかつ枝より良い。
「悦ちゃん」(獅子文六1937)ではデパート勤務の鏡子が眼鏡の令嬢カオルよりも悦ちゃんのお眼鏡にかない後妻に。
   こうしてみると、どれも「学のある」「金持ちの」「お嬢様」が、貧しい家の職業を持つ女性に敗れる話で、時代はどれも戦前。圧倒的な貧富の格差のあった時代、田舎から出て来、苦学力行した男性は出世の足掛かりに前者を求めるが、ホッと一息つくと後者に懐かしさを覚えるといったことだろうか。

→「サウンド・オブ・ミュージック」12-10-4
→「愛染かつら」10-5-29

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