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【映画】ラストゲーム 最後の早慶戦

2008年 日本 93分 監督 神山征二郎(1941~) 出演 柄本佑 渡辺大 石坂浩二 柄本明 佐々木すみえ 冨司純子 松江テルサにて鑑賞

戦争が激化して、大学野球リーグも解散させられ、学生の徴兵猶予も取り消された1943年、出陣する学徒たちへのはなむけにと、「出陣学徒壮行早慶戦」が企てられた。その実現に尽力する慶応塾長・小泉信三と早稲田野球部長・飛田穂洲に焦点を当てている。学生も数人出てくるが、私の年齢のせいもあるのか、さほどの印象なし。

なんといっても飛田穂洲を演じた柄本明が印象に残るのは、本人そっくりの顔立ちプラス演技力のせいであろう。スマートな2枚目とはいえず、若い女性の憧れるタイプではないが、息子の佑も受け継いでいる、妙な味がある。飛田穂洲は「一球入魂」「野球道」の言葉で有名だ。単なるスポーツである野球を修行の場にしてしまい、その影響は今日まで学校野球の長時間練習などに残っている。その点では共感できないし、もう一つ、早大合宿所で憲兵から学生をかばう際に見せた、どう見ても、暴力亭主からわが子をかばう女房のような態度。母性的とはいえるかもしれないが、野球道のもとである武士道はどこへ?また、早稲田総長・田中穂積(藤田まこと、最後の出演)の、小心翼々たる事なかれ主義はどうだろうか。彼は、この最後の試合を妨害したということ以外では何をしたのだろうか?そう思って調べたら、翌年の1944年に死んでいる。それならまあ、気力体力とも衰えつつあった時期だから仕方がないか(※)。それにしても、あまりにも颯爽としたところがない。慶応塾長の小泉信三(石坂浩二)の態度は立派だ。前年にひとり息子を戦死させているのだが、応援する際もお偉方との同席をせず、学生と同じに、新聞紙を敷いて座り、済んだらそれをポケットに入れて帰ったそうだ。

さて試合は大差で早稲田が勝つのだが、勝敗よりも、開催自体に意味があった。最後に、早大側が慶応の応援歌を、慶大側が早稲田の寮歌を歌うシーンがある。さすがにジーンと目頭が熱くなるが、惜しむらくはテンポが遅すぎたように思う。(※)本来このテンポなのだろうか、これらの歌、「若き血に燃ゆるもの」「都の西北」今やエキストラも知らぬ人の方が多く、収録に苦労したなんてことはまさか無いだろうが。実際は一番最後に「海往かば」が自然発生的に沸き起こった(※)というが映画ではその部分はなかった。多分、歌詞が今の時代に合わないという以上に、スタッフや出演者で歌える人が殆んどいないのではとはうがちすぎだろうか。

神山征二郎には「月光の夏」「ひめゆりの塔」「北辰斜めに指すところ」がある。こう並べて見ると、同じような色あいの作品が続き、愚直な性格が感じられる。

岡本喜八の「英霊達の応援歌・最後の早慶戦」1979。原作は神山圭介(1929~1985)は未見だ。小泉信三著「海軍主計大尉小泉信吉」も久振りに読んで見たい。

~~~~~7月29日追記~~~~~

上記のあと読んだ山室寛之著「野球と戦争」(中公新書)によると

※田中穂積氏はもともと野球嫌いで当初から消極的だった。
※歌のテンポは、球場に充満した悲壮感のせいで、実際に遅かったらしい。
※実際は、早大野球部マネジャーの相田暢一がまず歌いだしたらしい。

柄本佑→「人間失格」13-12-18
富司純子→「明日への遺言」8-4-23
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