吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

あの日々を共に過ごしたもの

2010年08月19日 | 道具
久々に道具のお話。

ハンマードリルです。コンクリートに穴ををあけるドリルです。
僕は普通サイドハンドルは使わないので外した状態の写真にしてあります。


現在でも販売されているようです参照
僕が購入したのは14、5年前です。機械にはメイドイン ウエスト・ジャーマニーとあるので、20年以上前に作られたものでしょう。
ホームセンターの長期在庫品の特価放出で格安で購入しました。

機能については参照ページに書いてあることに加えて、ソフトスタート(スイッチをいきなり全開で入れても急に回転せず徐々に加速する)、過負荷時の電源ブレーカーなど、20年前にしては稀な機能もあり、現在の基準でも非常に優れています。
穴あけ性能も、国産各社、ボ◯シュ、ヒ◯ティなどよりも良い印象があります。

食うに困って、建築現場で働くことになった時期があって、それなりの道具と腕を持っている僕は優遇されて現場で仕上げ修正などを依頼されるようになったのでした。
例えば、修正のため、コンクリートを削って整形して、モルタルを盛って、木質系の仕上げ材を部分的に貼るという場合、ハツリ屋さん、左官屋さん、木工屋さんを手配することになるのですが、僕はひとりでそれらをある程度こなせたので便利に使われたのでした。
多能工なんて言い方もあります。
ついでに手運びで数トン分の搬入も出来ましたしね。
そして僕は汎用人型決戦兵器になったのです。

その時期、このドリルは大活躍でした。
しかし、あまりに過酷な使用のため壊れてしまったのです。ハンマードリルが活躍するシチュエーションというのは、コンクリートのほこりだらけで、それを機械が吸い込むために摩耗や潤滑不良が起きやすいのです。
購入したホームセンターに持っていったところ、輸入代理店が的確に対応してくれたそうで安価で直りました。
その後は高級なグリスを使ってやったり、こまめに解体清掃をしてやったり、連続使用で加熱したら休ませたりと気をつけたのでトラブルはおきていません。

あの頃は辛かったなあ…。
オルガンの仕事が出来なくて、生活のために不本意ながらその仕事をしなければならなかったのです。
いつも心の中で「どうしてオレはこんなことしてるんだろう」とか「こんなはずじゃ…」とかいう気持ちが渦巻いていました。
それでも、目の前にある仕事に対して一生懸命にやっていました。
始めは人間のクズ呼ばわりもされましたが、段々と評価されるようになりました。
予想外の出来事、未知の世界との接触、それを気力と体力とワザと道具で何とか切り抜けてきたのです。
今にして思えば、ロールプレイングゲーム中の人物のようでした。
でも、本当の冒険って、痛みを伴なうものなんですよね…。
意に沿わない現実にあっても、拗ねず諦めず、その時に学べることを吸収して、チャンスが来るのを耐えて待つという日々でした。
挫けそうになったことはずいぶんありました。
アンタは一部の女性にはウケるから前橋のホストクラブに行けと家内から勧められたこともあったっけ。マダムキラーになったかも?

今だって決して楽ではないけれど、あの頃よりは希望がある気がします。

そんな日々をともに過ごした道具です。
今でも時々は使います。オルガンを壁面に固定するのなんかに。
もう昔のように朝から晩まで使い続けるということはないだろうからそうそう壊れることもないでしょう。
そんなわけで、まだまだ活躍してもらうぜ。

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2 コメント

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Unknown (しまりす)
2010-08-25 02:51:10
うちにもあり(ボ○シュ製) 
家の内装工事で活躍し、私も使いました!
顔がね、プルプルしますね。
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顔よりも先にプルプルするところはあると思われ (ひろにゃんof風琴屋)
2010-08-25 12:56:13
しまりすさん、ようこそ!

ハンマードリルで壁に穴を開けるその姿、かっこいい!
でも、顔がプルプルって、一体どういう持ち方をしてたんでしょ?
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