吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

再生予定車

2009年11月13日 | 
再生予定車です。

拡大
入手経路は忘れてしまったのですが、リヤカーです。
類似のものは世界中にありますが、近代になって開発されたものとしては日本オリジ
ナルと言って良いでしょう。

これにはブレーキが付いています。大き目で自重もあるので好ましい装備です。
直接人力で引っ張る他、カブや自動車でも引けますね。
都市部で駐車禁止の取り締まりが厳しくなって以来、宅配業者が電動アシスト自転車
で専用リヤカーを引っ張るスタイルがすでにあります。

リヤカーはもう一台、少し小さいのがあります。
部品取り用と思ったのですが、リヤカーの要、機械部品は車輪だけで、悪くなるの
は決まってそこなのでした。
何台あってもみんな同じところが悪いので部品取りという方法が成立しないのです。

リヤカーのハブ(車軸)スポーク、リムは自転車用よりもヘビーデューティーに
出来ています。
リムとタイヤはBE(ビーデッド・エッジ)という古い規格で、現在、国内では生産
されていないようです。
古い自転車もこのBE規格のタイヤですが、修復時に新しい規格のものに交換する例
も多いそうです。

自転車のタイヤの規格も、現在大変複雑になっています。
僕が若い頃は、スポーツ車はWO(ワイヤード・オン)式のフランス規格、ママ
チャリはHE(フックド・エッジ)式のアメリカ規格という形でまとまりつつあった
のですが、自転車の種類の多様化、マウンテンバイクの流行などで、アメリカ規格
が盛り返し、市場での種類も増えて複雑になってしまったのです。
それで、現在はETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation )
という団体の規格が頼りになります。
これは、タイヤのと径(リムに引っかかるビード部分の)をミリ表示したものです。
参照
今後この業界は整理が進むとは思いますが、それにしてもずいぶんと野放しに増えた
ものです。20インチなんて7種類も径があるんですね。

それはともかく、BE規格タイヤはもはや論外です。
アメリカ規格、つまりマウンテンバイク用の頑丈なタイヤ・ホイールセットに交換
した方が良いかな。

修復という作業には、思想、哲学、早い話がコダワリが入り込んでいるのです。
古い工業製品はネジを自社生産していたものがあって、ネジの頭にメーカーの刻印
があることも多いのです。
ダメになったネジを交換するにも、オリジナルと同等品を求めるとこれはなかなか
大変なことになります。
家具の修復でも、その家具と同じ時代の同じ種類の木を使って補修するということ
があります。
例えば1800年頃の家具を直すために、同時代の部品取り家具の材を使うというやり方
です。
出来れば同じ作者の同じ様式の部品取りがあれば最高です。
ヨーロッパの家具の修復工房には、膨大な古家具のストックを持っているところも
あります。
…大変です。

大抵、理想が高すぎる人は、修復作業に手を付けることが出来ず、壊れたそのまま
をずっと保管することになります。無駄なような気もするでしょうが、それはそれ
でひとつの人とモノの関係の姿です。

僕は仕事でオルガンの修復もするわけで、その辺のところはよく直面する問題なの
です。
元の部品を補修してもまたすぐに壊れる可能性があったり、そもそも設計や当時の
素材に欠陥があって部品寿命が短い場合もあります。
その辺を所有者に納得して頂いた上で、新しい対策済み部品に交換するなり、壊れ
るのは承知で古い部品を直して組みつけるなりの選択をしていきます。
作業中には、こういう選択肢がたくさんあって、どちらが良いのか決め難いものも
多いのです。
で、悩むわけです。我ながらよくハゲないものだと思います。

悩みを乗り越えるために学ぶことによって、解決力がつくのですが、それは同時に
選択肢が増えることでもあるのです。
そして、悩みは続くのです。
やがてひとつの真理に至ります。

踊るアホウに見るアホウ、同じアホなら踊らにゃ損ソン♪

悩んで何もしないよりは、正しいのか迷っても、その時々に何らかの答えを出して
前に進むのです。
少なくとも仕事として行う場合は。

まあ、このリヤカーについては、別にコダワリがあるわけではなく、実用第一で安
上がりに直せればそれで良いのですけどね。
う~ん、どうしようかな…。
プライベートでは優柔不断なのでした。

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