地区環境に応じた高齢者の外出行動の相違に関する事例研究
ー熊本市における外出活発地区・非活発地区の比較分析ー
室永芳久,両角光男
日本建築学会計画系論文集(566),63-70,2003-04-30
1、研究の背景と目的
高齢者の約8割を占める「健常高齢者」が自立した生活を維持できるよう、外出しやすい生活環境条件の整備が急がれる。それは、外出意欲の保持及び外出の継続が、身体的能力や精神的健康への維持に奇与するといわれているからである。
本報告は、高齢者の外出が活発な地区と活発でない地区を取り上げ、外出が促進または抑制・阻害されている状況の解明には、観察された外出実態だけでなく、高齢者の主体的特性や意識を含めて把握・分析する。
2、研究方法と資料
予め自治会長の了解を得られた地区のうち、外出率が特徴的に高い武蔵、やや高い城山、やや低い託麻南、極めて低い龍田を対象に住宅志向、生活選好、近隣評価、生活領域イメージマップ、属性の内容でアンケート調査を実行した。また、不足な情報はヒアリング、現地観察で収集した。
3、高齢者の主体的特性の分析
高齢者個々の住宅志向の強弱や生活選好には地区の活発—非活発による差はなく、属性に応じた相違から、個々の高齢者がおかれた状況を反映すると示唆される。高齢者個々の主体的特性に地区差がないことから、地区の環境要因が外出の実現を安易または困難にするためと考えられる。
4、高齢者の生活領域の分析
活発地区は近隣空間に価値が明白に見出され、生活選好に応じた価値付けがされるといえる。このことから、施設の利便性と歩行環境の良さのいずれかまたは双方の決如から「焦点」を近隣に形成できず、自らの生活選好に応じた近隣空間の魅力を引き出せない状況にあると考えられる。
5、結論
高齢者が「よく外出する地区」であるには、自宅周辺の比較的コンパクトな空間に歩き回りやすい(散歩しやすい)環境があると同時に、無目的に立ち寄れる場所がある事が極めて重要である。こうした空間的条件の有無は、高齢者の精神的・物的ニーズを近隣空間と結び付ける事が出来るか否か、そして外出意欲を保持させられるか否かに影響し、また、中心商店街が生活領域の一部とみなされており、中心商店街への公共交通の便は潜在的に高齢者の生活の質に影響するといえる。
6、感想など
障害がなく、歩きやすいだけでは過ごしやすい環境といえず、その環境に利用者が求める価値があってやっと、そこが過ごしやすい環境になるという事が、この研究を読んでわかった。
このようにして、高齢者だけでなく、その地域に住む人たちは何を求めているのかを具体的に意見収集し、それを実現していく事が今後の課題であると思うし、それをいかに効率的にできるのかを考えていきたいと思った。
(秋山慶斗)
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