建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

室永芳久,両角光男 :高齢者の生活環境と外出行動の促進・抑制要因に関する研究

2012-03-16 16:14:40 | 書架(高齢者関係)

高齢者の生活環境と外出行動の促進・抑制要因に関する研究

—熊本市6事例の比較分析による考察—

室永芳久,両角光男

日本建築学会計画系論文集(584),67-73,2004-10-30

 

1、研究の背景と目的

高齢者が自立的生活を継続する上で、自宅外での生活は必要不可欠であり、様々な活動や、他人との接触を継続的に楽しむ事は、精神的・肉体的健康を維持し、体力低下・健康不安増大に伴う諸問題を予防する上でも効果的とされている。

この研究は、高齢者の外出を引き出すために歩道の整備だけでは不安な点、また、居住地周辺が歩きにくくとも外出が引き出される条件について明らかにすることを目的とする。

 

2、研究方法

一新・坪井でアンケート調査及び聞き取り・現地観察調査を行った。

 

3、個別状況に応じた外出行動の相違

中心部付近では、郊外地区に比べ、徒歩圏内で外出が収まる傾向にあり、個別状況による外出行動の変化も少ない。

 

4、高齢者の生活領域の空間構成の分析

交通量が多い通りを超えて中心商店街に「混在型」の場を見出す高齢者が多かった。交通量の多い通りは移動障壁になると考えられるが、その先に魅力的な場が存在する場合、多くの高齢者はそこを超えて生活領域を形成するといえる。そして、体力が低下する後期高齢者では、可能な限り「混在型」の場が近距離圏で、途中に移動障壁がないところに存在することが望ましい。

 

5、高齢者の近隣評価に関する分析

歩道が整備されていても、地域内の通過交通が多い、近距離圏に「混在型」の場がないなどの理由から、その外出促進効果がうまく発揮されないケースがあることが分かった。魅力的な場が近距離圏にある場合、居住地周辺の一部が歩きにくい環境であっても、ある程度の外出が維持されるケースがあると分かった。

 

6、結論、まとめ

アンケートから復元される高齢者の外出行動と生活領域の各々の地区環境と関連付けて考察したことで、生活領域の空間構成と外出の促進・抑制要因の関係を明らかにする事が出来た。

 

7、感想など

高齢者にとって環境が良い場より、様々な活動や、他人との接触を楽しめる場の方を求めていることがわかった。このように構成する者と、利用する者の考え方のズレを検討する研究は面白いと感じたし、このような研究で今後、より良い環境というものを理解し、無駄なく空間構成していけるのではないかと思った。

そのために、いかに住民の希望・意見を収集する方法や、地域の問題点に気づいていく方法も検討していくべきだと思った。

 

(秋山慶斗)


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