西村京太郎の『北帰行殺人事件』(光文社文庫:1983年初版発行)を読んだ。物語は「ゆうづる13号」の車内で起こる。西村京太郎得意の鉄道ミステリーなのだが、2013年の現在は「ゆうづる」は走っていない。「ゆうづる13号」の中で全裸の男が口紅を塗られて殺されていた。この男がある女性を強姦し自殺させた犯人の一人であり、その女性の恋人で許嫁であった、十津川警部の部下が刑事をやめ、この「ゆうづる13号」に乗り込んだことが明らかになる。そして青函連絡船の中でも連続殺人が起こる。元刑事への疑惑が深まるなか、十津川警部たちは北海道に飛んで捜査にあたるが、あらゆる意味で元刑事に疑いがかかる。集団暴行の犯人の一人がある中堅企業の社長の2号の子で、これを溺愛する社長が元刑事の怒りを利用し、集団暴行の仲間を次々殺害していることを十津川警部が解明し、元刑事の疑いを晴らすストーリーである。圧巻は、社長のアリバイを崩す鉄道の接続を使った解明だ。しかし、それは1980年台のことであって、国鉄民営化によって北海道の鉄道がズタズタにされてしまったので、現在は通用しない。
1968年、私は岩大ワンゲル部の合宿に参加するために旭川を経由して興部でおりてシャルル(漢字は忘れた)で寮の同室の同学年生の家に泊まり、オホーツクの海で海水浴をしてその冷たさに1回しか入れなかったことがあった、翌日、ゆうもう線に乗って網走に行き、網走で「かに弁」を買って食べたが、その線も今はない。国鉄民営化で廃止されてしまったのである。利益優先の政治がもたらした害悪である。
今、消費税の大増税を国民に押し付ける一方で、復興法人税を前倒しで廃止し、法人税の実効税率の引き下げをはかるなど、大企業をますます優遇する政治がすすめられようとしている。まさに、企業の利益、とくに大企業の利益のためにしか働かない安倍政権の姿を徹底的に明らかにし、その行き方を変えることが必要であることを広く訴えていきたいと思う。
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