風の声
私の耳の歌口に 風がその唇を寄せて
透明に光る息を 吹き込む
私の耳管は 狭い音域の中で
つたないメロディーを奏でる
美しくはないが 私の耳にだけ聞こえる
心地好いメロディー
少女の顔が浮かぶ
懐かしい白い顔が 初夏の風の中に甦る
振幅するレゾナンス
過ぎ去った刻と今という空間の摩擦音
私の蝸牛管は捻れた宇宙の臍
暗黒星雲の中心から吹き出す喇叭管
その向こう側
透きとおった輝きのまま
浮かんでいる多元宇宙の小さなシャボン玉
少女の顔が浮かぶ
懐かしい白い顔が 初夏の風の中に甦る
耳骨の磁石コイルが
猛スピードで遠ざかる億光年の宇宙から
なごりの信号を受信している