A DAY IN THE LIFE

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次世代テレビ放送はどうなるか? (7) テレビ局の「お客様」は誰?

2011-08-13 | Weblog
何の商売をやっても「お客様」が一番大事なのは変わらない。特に最近のマーケティングでは顧客のニーズに合わせて商品プランするのが当たり前。珍しい魅力ある商品ならば別ではあるが、いわゆるプロダクトアウトのマーケティングは一昔前の話だ。

さて、テレビ番組(放送)も商品と捉えれば、テレビ局の「お客様」は誰かということになる。NHKは視聴者全員(正確には視聴世帯)から、聴取料を税金のように徴収しているのだから視聴者をお客とは捉えていないであろう。
それでは民放はどうか?
広告のおかげで無料視聴なので、視聴者からすればタダで視るのだから、多少つまらなくとも仕方がないと割り切って視ている。他に手頃な楽しみが無い時代は、「タダだからテレビでも暇つぶしに見るか」ということになっていた。
一方で、局側も放送電波の割り当てを受け、民放とはいえ公共放送の役割を担っているので、視聴者のニーズだけに迎合するのではなく、メディアとして社会的な責任を持った番組作りをしなければならないという建前もある。
そのような本音と建前を混在させて議論をしている内に、放送局にとっての「お客様」の顔が見えなくなってしまった。

ビジネス的なお金の回り方からみれば、お金の出し手はスポンサー(広告主)になる。新聞・雑誌はまだ自分で購読者に買ってもらおうという努力をしているが、テレビの場合は番組を制作する費用だけでなく、自分達の給料に至るまで何から何まですべてスポンサーからのお金で丸抱えでは、タニマチであるスポンサーには頭が上がらない。いつの間にか視聴者の存在を忘れ、スポンサーのご機嫌ばかりを伺うようになってしまった。番組の内容にまで注文を出すスポンサーも当たり前になり、本来のテレビのあるべき姿はいつのまにかどこかに行ってしまった。タニマチをお客と勘違いしているのは、最近無気力や八百長騒ぎで話題に事欠かない相撲とか芸能界と同じである。タニマチのご機嫌取りに忙しく、本来の伝統や文化の継承、創造は二の次になってしまう。

このスポンサー至上主義に拍車をかけたのが視聴率だ。放送局に行くと、よく「何パーセント獲得」とか、「ゴールデン一位とか」、視聴率の高さに一喜一憂する張り紙が目立つ。高い視聴率が獲得できた時代にはこれも励みになったかもしれないが、二桁の視聴率をとるもの中々難しい時代だと、視聴率の高さを誇っていたビラを張り出すにも空しさを感じる。昔だったら落第点だったものを張り出すようなもので、自分達の無力さをさらけ出しているのだ。

大昔は視聴率を気にせずスポンサーの意向でよい番組が長く続くということもあったが、今のように番組も切り売り状態になると、視聴率の低い番組はいくら良い番組でも途中で打ち切りという羽目に陥るようになった。
視聴率が低いと、番組スポンサーの広告費が下がるだけではなく、局とっての稼ぎ頭であるスポットの料金にも影響してくるのが痛い。スポットが減ると利益が急激に減るので番組作りにますますお金がかけられなくなる。結局視聴者に受け入れられる番組が作れずまた視聴率が下がるという悪循環に陥っている。これは何も昨日今日に始まった話ではなく、テレビ離れが始まった時から言われている根本的な課題だが、今だ「解決策が見出せた」という話は聞いたことが無い。

視聴率にまつわる話はたくさんあるので追々語ってみよう。自分は学生時代今から40年以上前に視聴率調査のアルバイトをやっていたことがあるが、世の中はこの40年で大きく変わった。しかし、視聴率に関してはその当時の仕組みと今でも基本的に変わらない。テレビ局はこの旧態依然とした指標だけを頼りにして、未だ本来の自分の「お客様」である視聴者の実態を捉えていない。捉えていないどころか接点も少ない。これでマーケティングが出来る訳は無い。
一方で、加入者が急増したCATVは、放送波をケーブルを使って各家庭に届ける役割を担っているだけだが、地域密着型で自分の「お客様」の顔はすべて分かっている。更に各家のテレビの台数、配置図まで分かっている。更に、デジタルの時代になったので、各家庭のテレビで何の番組が見られていたかの記録、すなわち本当の視聴率までとる事ができるようになった。

これからのテレビにまつわるビジネスを考える時、お客の情報を全く持っていないところと、お客の情報をすべて持っているところのどちらがビジネスをやり易いかといえば、答えは明白だ。放送波がいいか、有線ケーブルがいいかという議論はあくまでも技術や利権に絡む内輪の話。聴者側から見れば、今後自分達のためにより良いサービスを提供してくれるのはどちらかということだ。「お客は誰か?」という話も、生活者視点で考えれば簡単な話なのだ。間違ってもタニマチはお客ではない。
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