4
トッピーの飛行船は、風の流れに乗ってどんどん高く舞い上がっていった。
「トッピー、どうにかならないの」と、サトルは吹きつける風に目を細めながら、ゴンドラと飛行船をつないでいる太いロープをつかみながら言った。
「無理だよ……」と、トッピーが間延びしたような声で答えた。「この体のヒレは硬くって、思うように動かせないんだ」
飛行船はどんどん流され、厚く立ちこめた靄の中を進むと、それまでぼんやりと眼下に見え隠れしていた町の灯りも、まったく見えなくなってしまった。
「だんだん寒くなってきたけど、何か見える?」と、サトルは自分を抱きしめるように腕を組むと、あごをがくがく振るわせながら聞いた。
「こっちも……ぜんぜん……見えないよ」と、トッピーが途切れ途切れに答えた。「それに……だんだん……寒く、なってくる。口が……ぜんぜん……動かなくなって、きちゃった――」
「トッピー、大丈夫――」と、サトルは大きな声で叫んだ。しかし何度呼びかけても、トッピーはそれきり、ひと言もしゃべらなくなってしまった。
サトルは寒さをこらえようと、ゴンドラの隅に腰を下ろした。深く背中をあずけると、ぎゅっと膝を抱えた。体を低くすると、ゴンドラで風が遮られ、それだけでも凍えるほどの寒さは感じなくなった。ひゅうるるー、とかすれたような風の音が、止むことなく聞こえていた。
飛行船は、暗闇の中をどんどん進んでいった。ゴンドラが不意に揺れると、その度に心臓が口から飛び出しそうなほど恐くなったが、慣れてくると、左右の揺れも心地よく感じられるようになった。するといつの間にか、サトルは思わずうとうとと、目を閉じてこっくりと眠ってしまった……。
――ガクン。
トッピーの飛行船が、大きく揺れて止まった。ゆるりとした反動で、後ろ向きに戻り始めた。がくん、と再び大きな揺れを感じると、また引っ張られるように前に進んだ。飛行船は何度も前後に行きつ戻りつしながら、振り子のように動いていた。やがて動きが小さく、次第に揺れを感じなくなると、ぴたりと動かなくなった。
サトルは、飛行船ががくん、と何かに引っかかったような動きを感じて、はっと目を覚ました。
日差しが、まぶしかった。風が、ほとんど止んでいるのがわかった。バスタブのような狭いゴンドラと、飛行船の胴体をつないでいるたくさんのロープが、真夜中とは違う、暖かな微風を受けて、ギュッギュッと小気味のいい音を立てて軋んでいた。
「止まった、みたい……」サトルは眠い目をこすりつつ、座ったまま、「んー」と大きく腕を上げて背伸びをした。
見上げると、柔らかそうな白い雲が、青々とした空にもくもくと隊列を組んでいた。目を細めずにはいられないほどまぶしい朝日が、空の一番高いところを目指して、見えない軌道を昇り始めていた。
トッピーの飛行船は、風の流れに乗ってどんどん高く舞い上がっていった。
「トッピー、どうにかならないの」と、サトルは吹きつける風に目を細めながら、ゴンドラと飛行船をつないでいる太いロープをつかみながら言った。
「無理だよ……」と、トッピーが間延びしたような声で答えた。「この体のヒレは硬くって、思うように動かせないんだ」
飛行船はどんどん流され、厚く立ちこめた靄の中を進むと、それまでぼんやりと眼下に見え隠れしていた町の灯りも、まったく見えなくなってしまった。
「だんだん寒くなってきたけど、何か見える?」と、サトルは自分を抱きしめるように腕を組むと、あごをがくがく振るわせながら聞いた。
「こっちも……ぜんぜん……見えないよ」と、トッピーが途切れ途切れに答えた。「それに……だんだん……寒く、なってくる。口が……ぜんぜん……動かなくなって、きちゃった――」
「トッピー、大丈夫――」と、サトルは大きな声で叫んだ。しかし何度呼びかけても、トッピーはそれきり、ひと言もしゃべらなくなってしまった。
サトルは寒さをこらえようと、ゴンドラの隅に腰を下ろした。深く背中をあずけると、ぎゅっと膝を抱えた。体を低くすると、ゴンドラで風が遮られ、それだけでも凍えるほどの寒さは感じなくなった。ひゅうるるー、とかすれたような風の音が、止むことなく聞こえていた。
飛行船は、暗闇の中をどんどん進んでいった。ゴンドラが不意に揺れると、その度に心臓が口から飛び出しそうなほど恐くなったが、慣れてくると、左右の揺れも心地よく感じられるようになった。するといつの間にか、サトルは思わずうとうとと、目を閉じてこっくりと眠ってしまった……。
――ガクン。
トッピーの飛行船が、大きく揺れて止まった。ゆるりとした反動で、後ろ向きに戻り始めた。がくん、と再び大きな揺れを感じると、また引っ張られるように前に進んだ。飛行船は何度も前後に行きつ戻りつしながら、振り子のように動いていた。やがて動きが小さく、次第に揺れを感じなくなると、ぴたりと動かなくなった。
サトルは、飛行船ががくん、と何かに引っかかったような動きを感じて、はっと目を覚ました。
日差しが、まぶしかった。風が、ほとんど止んでいるのがわかった。バスタブのような狭いゴンドラと、飛行船の胴体をつないでいるたくさんのロープが、真夜中とは違う、暖かな微風を受けて、ギュッギュッと小気味のいい音を立てて軋んでいた。
「止まった、みたい……」サトルは眠い目をこすりつつ、座ったまま、「んー」と大きく腕を上げて背伸びをした。
見上げると、柔らかそうな白い雲が、青々とした空にもくもくと隊列を組んでいた。目を細めずにはいられないほどまぶしい朝日が、空の一番高いところを目指して、見えない軌道を昇り始めていた。