サトルが目を開けると、三人のちょうど真上に、リリの歌に酔った円盤ムシが、宙にプカプカと浮いているのが見えました。
円盤ムシは、サトルと風博士に見られているにもかかわらず、決して逃げようとしませんでした。反対に、だんだんと歌に調子を合わせて、サトル達のそばに近づいてきました。
リリは、次第に強く、優しく、包みこむように歌い続けました。円盤ムシは、もうたまらず宙を踊り回りましたが、やがて静かに、そっと地面に足を伸ばして、着地しました。リリは、気持ちよさそうに目をつぶっている円盤ムシに、ゆっくりと近づいて行きました。
サトルと風博士も、緊張して息を詰めながら、リリの後に続いて、そうっと円盤ムシに近づいて行きました。
「円盤ムシさん……お願いがあるの」
リリが言うと、円盤ムシはパチリ、と目を開きました。
「円盤ムシさん――お願いがあるの……サトルのやって来た異世界へ――」
円盤ムシは、四つ足で立ち上がったかと思うと、お腹の辺りの扉を、ゆっくりと開け始めました。
「サトル。円盤ムシが、あなたを乗せて行ってくれるって……」と、リリは、サトルの手を握りながら言いました。「おめでとう。元気でいてね――」
リリは、にっこりと笑いました。サトルも笑み浮かべましたが、なぜだかさみしい気持ちがして、すぐにうつむいてしまいました。
「ありがとう。リリも元気で……」と、サトルはリリにお礼を言うと、円盤ムシの階段を上り始めました。
「――サトル君」と、にこにこした風博士が、あわてて追いかけてきて言いました。「そうだ、これを持って行きなさい。君の異世界まで、どのくらいかかるかわからないけれど、これがあれば、退屈はしないだろう」
サトルは、風博士から、小さな長方形の機械をもらいました。
「どうもありがとう。さようなら――」
サトルは、円盤ムシに乗りこむと、出入口が完全に閉まってしまうまで、二人に手を振り続けました――。
ヒューン……。
と、円盤ムシが、小気味のいい音を立て始めました。
サトルはふかふかの部屋に入ると、丸い窓から、外をのぞきました。リリと風博士が、手を振っているのが見えました。
ヒューン、ヒュヒューン……。
だんだんと音が高く遠くなっていくと、円盤ムシはまるで抵抗を感じさせずに、ふわりと宙に飛び上がりました。サトルは、ムシが飛び出す瞬間、もう一度大声で、
「さようならー!」
と、叫びました……。
円盤ムシは、サトルと風博士に見られているにもかかわらず、決して逃げようとしませんでした。反対に、だんだんと歌に調子を合わせて、サトル達のそばに近づいてきました。
リリは、次第に強く、優しく、包みこむように歌い続けました。円盤ムシは、もうたまらず宙を踊り回りましたが、やがて静かに、そっと地面に足を伸ばして、着地しました。リリは、気持ちよさそうに目をつぶっている円盤ムシに、ゆっくりと近づいて行きました。
サトルと風博士も、緊張して息を詰めながら、リリの後に続いて、そうっと円盤ムシに近づいて行きました。
「円盤ムシさん……お願いがあるの」
リリが言うと、円盤ムシはパチリ、と目を開きました。
「円盤ムシさん――お願いがあるの……サトルのやって来た異世界へ――」
円盤ムシは、四つ足で立ち上がったかと思うと、お腹の辺りの扉を、ゆっくりと開け始めました。
「サトル。円盤ムシが、あなたを乗せて行ってくれるって……」と、リリは、サトルの手を握りながら言いました。「おめでとう。元気でいてね――」
リリは、にっこりと笑いました。サトルも笑み浮かべましたが、なぜだかさみしい気持ちがして、すぐにうつむいてしまいました。
「ありがとう。リリも元気で……」と、サトルはリリにお礼を言うと、円盤ムシの階段を上り始めました。
「――サトル君」と、にこにこした風博士が、あわてて追いかけてきて言いました。「そうだ、これを持って行きなさい。君の異世界まで、どのくらいかかるかわからないけれど、これがあれば、退屈はしないだろう」
サトルは、風博士から、小さな長方形の機械をもらいました。
「どうもありがとう。さようなら――」
サトルは、円盤ムシに乗りこむと、出入口が完全に閉まってしまうまで、二人に手を振り続けました――。
ヒューン……。
と、円盤ムシが、小気味のいい音を立て始めました。
サトルはふかふかの部屋に入ると、丸い窓から、外をのぞきました。リリと風博士が、手を振っているのが見えました。
ヒューン、ヒュヒューン……。
だんだんと音が高く遠くなっていくと、円盤ムシはまるで抵抗を感じさせずに、ふわりと宙に飛び上がりました。サトルは、ムシが飛び出す瞬間、もう一度大声で、
「さようならー!」
と、叫びました……。