真の動物福祉牧場を目指して

バナーラス迷路 (ニ)

 インドの古い街はみんな迷路ですが、世界最古の都市(カーシー)を自称するバナーラスはナンバー・ワンの迷路都市かと思います。

 ガンガー沿いには古い寺院やガート(沐浴場、火葬もやってる)と、それと同じくらい古い家々が密集し、それらは4階建て5階建てと日光を求めて建て増し競争をしており、1つのブロックはあたかも日本の団地のようにまとまりを持っています。

 そんな迷路の団地には、寺院への参道として様々な小店があり、チャイ屋やカレー屋、線香や葬祭品屋、サリーや宝石屋などで賑わっています。

 こうした伝統的なツーリスティック-エリアを離れると、そこには他のインドの都市と変わらない車とバイクと自転車と人と動物のゴチャゴチャが広がっていますが、バナーラスはまだ自転車リキシャーが主流の伝統を守っており、電気バスも走っているので他の都市に比べれば空気はずっと澄んでいます。
 インドの空はどこでも薄ぼんやりと灰色がかっている印象を受けますが、最近カーシーでは雨がよく降り、おかげで澄んだ青空と輝く太陽を拝めています。

 しかしバイクの数は前よりも格段に増えており、それらは狭い路地にも侵入して来るため、昔はもっと多くいた野良牛が減ってしまったのは残念です。
 それでもまだ、バイクが入って来れない狭い路地の先に開けた広場などでは牛と人の共同生活が観られ、手で牛乳を絞る光景も観られました。 
 
 そうした広場の真中には大きな木があり、その下に小さな祠があって高齢のお爺さんなんかが座り込んでたりします。
 わたしは耳が遠くて話せない御爺さんに祠で手を握られ、それは明らかにバクシーシ(喜捨)を求めてでしたが、ただお金で済ませるのも無礼な気がしてまず礼拝しました。

 それはもちろん日本山式の唱題行による「三跪礼拝」で、これを事の他喜んでくれた御爺さんと一緒にそのまま一刻(15分)ほど「路上での祈り」を行えました。
 こうした機会はその後も毎日あり、物乞いをする家族やサドゥーとご一緒したり、火葬場の祈りの輪に加えて貰ったりしています。

 到着日の日中はそんな晴れやかな行進をしましたが、あいにく道筋を外れて迷ってしまい、名も無い小さな村で一悶着を起こしてしまいました。
 それはやはり村の中心広場で御老人に握手を求められ、そのまま手は離さずマッサージに引き込むパターンで、この聖地カーシー伝統の荒業で生きて来られた長老でした。

 その執拗な商売熱に押されて、腰もちょっと痛かったので100ルピー分だけヤッて貰いましたが、腕を捻るマッサージや背骨に重点的に活を入れるマッサージが最高に気持ち良かったです。
 それはよかったのですが、問題はマッサージを受けている間ズボンのポケットから出していたスマホが消えたコトで、それに気付いたのは村をだいぶ後にしてからでした。

 これはもう、リテシュ君に助けて貰わなければスマホを捜し出すのはムリかと思いましたが、幸いに村の若者達がバイクで追いかけて来て届けてくれました。
 しかしそれは善意よりも商売熱から来ており、「オレ達があなたのスマホを盗んだガキ共から取り戻してやった」として謝礼を求められ、それは3000円程で決着がついて別れてからも、バイクで追って来てしつこく礼金をせがむヤツがおり、そいつは突っぱねられましたが、目の不自由な長老までバイクに乗せて追って来て、また彼に謝礼を払うコトとなりました。

 なんだか非常に納得できない話ですが、スマホが戻ったのはなによりで、リテシュ君に余計な心配をかけるコトも無くなりました。
 彼とはその後暗くなるまで待っても再会できず、帰りもガンガーまで歩いて迷い、寝不足からか非常に足が重くなりました。

 よく考えれば前日の霊鷲山での回峰行も響いていたのでしょうが、これほど夜の迷路をさ迷うのが辛く感じかれたコトはありませんでした。
 カンガーまで辿り着いた時には勝利の達成感を味わえ、ガートは夜中に火葬で盛り上がりを見せ、わたしは久美子ハウスで牛のようにぐっすりと眠れした。
 
 
 
 

 

 
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