やはり、地球温暖化に個人で立ち向かうコトはできないので、ビジネス(仕事)として社会的な運動にして行く必要があるのでしょう。
これについて否定的な意見を述べる本はとても珍しく、前回挙げた「亡国のエコ」はそれに当たります。
ここでは中国のエコビジネスが不当な「独占資本主義」によると告発している点は良いのですが、エコビジネスそのモノも経済に悪いとしている点には賛同しかねます。
化石燃料への依存を無くせば一時的に経済が落ち込むのは当然ですが、それは未来への投資であり、希望を生むビジネスとして育てて行かなければならないと思います。
これについては「環境経済学」という学問も成立しており、地球温暖化による経済リスクの予測や、産業別での温暖化への関与率などが割り出されています。
こうした研究やビジネスを総括して、そこに未来への希望を見い出している本として、「HOPE 都市・企業・市民による気候変動総力戦」は非常に優れています。
この本はとても実践的で分かり易いので、少し文章を引用させて貰います。
―― 地球温暖化は、経済成長を減速させることではなく、加速させることによって止められます。国に頼るのではなく、都市や企業、市民に力を与えることで止められます。未来について人々を怖がらせることによってではなく、行動を起こすことによってすぐに得られる恩恵を人々に示すことで止められます。これが達成できれば、より健康で豊かになります。長生きしてより良い生活を送ることができるようになります。貧困や政情不安は減ります。そして、私たちはこうした恩恵を受けながら、子供や孫の代にも明るい未来を引き渡すことができます。 ――
これこそ正に「経を済う」ことだと思い、その具体策も沢山書かれているので、象徴的な「補助金制度を見直す」を引用します。
―― 私たちは、人生においてたいてい、自分が支払った分に見合った対価を得ます。現在、多くの国が化石燃料生産者や大規模な農業団体に対して巨額の補助金を支払っており、これによって温暖化がより進んでしまっているのです。エネルギーをめぐるイノベーションの速度が落ち、農産物市場がゆがめられ、天然資源の枯渇をもたらし、貧困が拡大し、多くのコミュニティにおける医療費の増大にもつながっています。そして、本来であれば持続可能で気候に優しい未来への転換、あるいは減税に用いることができたはずの政府の資金が、化石燃料向けの補助金によって食いつぶされています。政府が化石燃料会社に対して低い税率や低金利融資など特別な優遇を与えると、これらの企業は、よりクリーンな他のエネルギーよりも競争の優位性を得ることができます。このように国家予算を枯らしてしまう補助金制度を見直して改革することで、2050年までに必要となる持続可能なインフラ整備に求められている90兆ドルのうちの多くがカバーできるようになります。 ――
この本は正に「HOPE」という題名が相応しく、アマゾンで安売りされていますので多くの人に読んで頂きたいと思います。
次回はより具体的にエコビジネスについて語るつもりで、以前働いていたことのある大学発ベンチャー企業の「EM研究機構」についても語りたいと思います。
これはイノベーティブな「環境農業」を普及するビジネスで、「HOPE」にも関連団体の「Embrapa」(ブラジル)が特集されています。