カジノとタバコの深い関係

１０年ほど前まで、私はヘビースモーカーだった。タバコは身体に良くな
い、それは解っていた。実際、胃痛に悩まされたり、痰がでて咳が止まらな
かったり、といった具合に、あれこれ身体の不調が気になり始めていた。何
度も禁煙をしようと試みた。けれども、禁煙を始めて１日もすると、ニコチ
ンの禁断症状がでて、私の身体はニコチンを渇望し始める。禁煙には一再な
らず失敗した。

私が禁煙パイプを使い、苦労の末、やっとのことで禁煙に成功した経緯につ
いては、以前に本ブログで書いたことがある。そのとき書いたことだが、禁
煙できずに苦しんでいる間、私は何度となく、こんな思いにとらわれたもの
だ。「ああ、国が私の禁煙を助けてくれればいいのに。国がタバコの販売を
禁止すれば、自分はこんなに苦しまなくても済むはずなのだ。いったい厚労
省は何をやっているのだ！」
今にして思えば、私のこの願いは無い物ねだりだった。タバコの販売で得ら
れる莫大な税金は、国家財政の貴重な収入源になる。そんな有難い「金の
生（な）る木」を、国家がみすみす手放すはずはない。私の父はタバコに火
をつけるたびに「オレは国に貢献しているんだぞ」と冗談めかして言ってい
たが、この言葉はある意味、正鵠を得ている。

今頃こんなことを書くのは、数日前にカジノ法案が国会に提出され、これを
めぐって世論があれこれと喧（かまびす）しいからである。ギャンブルと国
家との関係は、タバコと国家との関係に似ている。ギャンブルは依存症の患
者を多数生み出し、不幸の種を世に撒き散らすが、ギャンブルに課す税金は
国家にとっては有難い「金の生る木」になる。国家はこれを手放しはしない
だろう。ギャンブル依存症で困窮に陥り、家族を苦難に巻き込む人がどれだ
け出ても、それは「自己責任」であり、災いの責めは各人が引き受けなけれ
ばならない、というわけである。

自分自身のことを書けば、私はパチンコ依存症に罹っていた時期があり、賭
け麻雀に凝っていた時期もある。それだけに、「ギャンブル依存症」の怖さ
をよく知っている。カジノ法案をめぐる世のさまざまな意見を、私は、冷静
な立場で捌くことができない。とりあえず、自分の禁煙体験にことよせ、愚
見を述べる所以である。