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『あまちゃん』23週、まとめその2.さよなら、またね、ただいま、おかえり。

2015-09-13 08:28:58 | 朝ドラの感想
BSで再放送中『あまちゃん』第23週 「おら、みんなに会いでぇ!」のまとめの後半。
135回から138回です。

133回と134回はこちら。
『あまちゃん』23週、まとめその1.あまちゃんの描いた東日本大震災

しんみりきていたTLも笑顔を取り戻す。『あまちゃん』は「人情喜劇」。







関連リンク


『あまちゃん』22週、まとめその2。132回を通して描かれた幸せの形。

『あまちゃん』22週、まとめその1。前髪クネ男の功績を真剣に考えた。

『あまちゃん』21週、ここまでずっと丁寧に描かれたからこそ、それぞれの『大逆転』に涙する。


以前のもの、本放送当時の記事はこちら。
朝ドラ感想記事のまとめ。




■ストーブさん


 

アキの成功にはヒロシの活躍が欠かせなかったことを思い出す。
ヒロシの隠れた暖かさを隠喩してる電気ストーブの箱。




■ミズタク視点で描かれるアキの心情


 

震災から数ヶ月。
「被災地」となった地元に、帰るに帰れないアキの心情を、ラスト直前までミズタクの視点で描いていく。

絵の中での視点移動もそうだけど、ストーリーの中で視点移動が本当によく出来てる話だよなあと。

 

それまで笑顔だったアキが、実家のことを聞かれて凍りついた表情。
ミズタクも思わず「アキちゃん、笑顔」

『潮騒のメモリー』主演が決まったとき、GMTとのライブ。
ずっと寄り添ってきたからミズタクの心情を思うと、こみ上げるものがある横顔。

 

132回でシンデレラストーリーて終わっていてもよかった。
それでも故郷がアキを呼び寄せる。
それを直接的に現さず、ミズタクのシュールなセリフで再現してるからうまい。


岩手に限らず、地元ってでっかいんだよね。






■やるべきことをやれ


 

「お構いねぐ」

地元は地元で何とかやってる。
アキはアキのすべきことをしろ、そんな夏ばっぱのメッセージだったのかもしれない。
けれどそのときのアキを思えば、地元からの心理的距離を感じさせた一言だったのかもしれない。

 

『潮騒のメモリー』を観てる2人。
「あんたはまあまあ。私は最高」

まあまあなアキにはまだやることがある。
最高まで上り詰めた鈴鹿さんには、できることがある。





■不謹慎




「いい曲だけど歌詞がちょっと」


そういえば、多かった。
いい曲だけど、いい映画だけど、でも不謹慎だよねって。
思えば震災のときこれがあまりに繰り返されて、「不謹慎ってなんだっけ」ってだんだんわからなくなっていたな



鈴鹿さんがナーバスになるのも無理はないんだろうと思う。
そもそも2年経って始まった本放送だって、デリカシーにデリカシーを包んだうえでの震災描写だったのだから。

この描写もまた伏線なんだって思うと、まあこのスト―リーの出来がいいったらもう。




■地元に帰ろう




 



ミズタクはわかってた。
「地元に帰ろう」を歌わせたら、岩手には負けること。
東京での夢も、種市とのラブも、地元には敵わないこと。

それをアキに自覚させるために歌わせたんだとしたら、本当にミズタクはアキの相棒だね。


 

ほんの微細な頬の動き、目元の動きからミズタクの心情を察したのか太巻さん。

「泣くんなら外で泣け」

太巻さんも涙出そうなの堪えててんじゃないのかなって。




■北三陸さ帰りてえ!




「おら、北三陸さ帰りてえ!」

紅白で使われたあのシーン。
アキはこれまで何回か「帰りたい」と言っていたけれど、今までの帰りたいとはわけがちがう。
地元に引き寄せられていることに気が付いたか。

っていう震災からの流れも、全部「震災前」が丁寧に描かれていたからなんだよね。
地元は単なる地理的な地元じゃない心の拠り所。
いつも励ましてくれていた心理的な地元。

そこには暖かい人たちがいる場所。


本放送当時はよくこの歌に励まされていたなあと思い出す。




■アキの決意と春子さん


 

 

ミズタクの視点でアキの心情をが描かれた後、アキが本音を春子さんにぶつける。

アキが帰りたがっていることは母親としての春子さんは知っている。
帰りたくても帰れない、帰りづらい、そんな心情を抱いていることも多分気づいている。

東京で芸能活動を続けるのではなく、北三陸で復興に関わる。
故郷が立ち上がっていくのを支える。
それがアキの決意。

 

鈴鹿さんのことを春子に託し、『天野アキ』としての人生を生きようとするアキ。
もうそこには暗くて地味で花も個性も……なんだっけ?ともかく前のアキではない。

アキが周りをあたためて、周りの人を変えていって、その変わった人たちが今度はアキを変えていく。



共に歩んできた相棒・水口は口数少なめ。
昨日、目の前でアキの表情を見ていたから、きっともうわかっていた。

ミズタク自身も北三陸のことが気になっているかもしれないし、まだまだ諦め切れるものじゃないと思う。
でも、アキの背中を押す。

プロ根性だなあ。



■鈴鹿さんとのしばしの別れ


 

鈴鹿さんは「向いてないけど続ける」と反芻して、月面へ。
「日本一の天野アキになる」アキに対して、「向いていないけど続けていく」大女優・鈴鹿ひろ美。

きっと鈴鹿さんにもどこかしら地元があるんだろうけど、そこは明らかにはされない。
だって鈴鹿さんは、台本の中に生きる女優さんだから。

最後に鈴鹿さんがモニター越しに良い笑顔をしているのが素敵。
それをアキが見ていない。


で、鈴鹿さんに関してはこれで終わらないからなあ。




■東京との別れ


 

 

いろんなことがあった東京を、去る。
逃げるんじゃなくて、「地元に帰る」。

大漁旗に見送られてアメ横について、どうなることかと思った東京編。
いろんなことがあった。
ユイちゃんがグレて、アキも逃げ出しそうになって、事務所を解雇されて。
春子さんと鈴鹿さんと太巻の真実を知って、種市と付き合うことになって。
映画のヒロインの座を射止めて、前髪クネ男とキスしそうになって。

「震災後に帰郷する」って意味合いだけじゃなくて、天野アキという女性のライフステージの変化としても、重要な切り替え。





■種市の卵焼き


 

高速バスに乗り込むアキに卵焼きを届けにきた種市。

あの日、アキの家でふるまった卵焼き。
夢を語った卵焼き。
あの日話した夢を思い出して、ってメッセージなのかもしれないなあ。

それにしても窓にかかる横断幕がリアル。
このころはまだ『東北』は特別な場所だったな。




北鉄の中で、泣きながらウニ丼を食べていたアキと重なるカット。
ウニが北三陸の象徴なら、卵焼きは東京の象徴か。




■北三陸に帰ったアキの思い




北三陸に降り立ったときの、アキの横顔。
元からそんなに人が多い町ではないんだろうけれども、それでも人はいたんだよね。
やっと帰ってこれた安堵、帰ってきた覚悟、悔しさや寂しさや辛さが入り混じった表情が秀逸。

 

震災後の被災地の混乱が描かれてるのはこのシーンくらいか。
避難生活や救援物資、あからさまに描かれずとも脳内で補完できる。
それだけリアルに迫った題材ってことか。

 



ユイちゃんとの思い出は北鉄と共に。

アキはもう乖離を感じ取っていたんだな。
キツネ単独ライブで気持ちを奮いたたせてもなお、思い出すのはユイちゃんのこと。

 

天野アキ、単独ライブ(‘jjj’)






■ただいま、おかえり


 

「おや?」の響きが何度聴いても優しくて。

北三陸駅、観光協会、北鉄での静寂があったからこそ、このとき本当に何かが弾けるよう泣きながら笑っていた。
おかえり、おかえりアキ。

 

それぞれの『おかえり』が溢れてる。
弥生さんもメガネ会計ババアも、本人の表情映さずアキを映してるのがやっぱりいい。

あとやっぱり勉さんは(甲斐さんも)こういうターニングポイントに必ず存在感を発揮する証人なんだよね。



■変わったもの、変わらないもの


 

「あんたが変わったんじゃない、みんなが変わったんだよ」
春子さんのあの言葉が脳裏によぎった。

アキが東京で頑張る姿は北三陸に届いていた。



アキをして、つーかドラマ脚本をして、『変わらないね』と言わしめるクドカンはじめとする制作陣の伝えたいこと。

いろんなことがあったけど、大事なところは変わらない。
走ろう。働こう。夢を見よう。そんなメッセージ。




ところで。

今年の夏に訪れた宮城沿岸部は、この袖が浜の様子をちょっと片付けたような感じだった。
4年前に比べて瓦礫はなくなったけど、それが重機に変わっていただけだった。
悪い意味で『変わらないね』だった。






■「地元」の強さ


 

本当の地元の人たちが語り出す被災状況。
みんな笑ってるけど、笑ってるけれどその笑顔の下にはあの日がある。
吉田のあの短い無線も、菅原さんの壊れたジオラマも。

みんな、あの言葉にできない光景をみた。
それでいて笑ってる強さ。





吉田夫妻の笑顔が嬉しい。

あの日の緊迫した吉田の声を思い出す。
栗原ちゃんが感じた恐怖を思う。
無事出産を終えたときの夫婦の喜びを思う。
地元の歓喜を思う。



トンネルを抜けた大吉さんの「これからだ。」に力強さを感じる。




■ウニの謎。




ウニを投げたのは誰問題。

【画像集】「ウニは誰が投げた!?」朝ドラあまちゃんの"ウニ問題"の考察イラストが面白い

 

変わらない、夏ばっぱの力強さ。
変わらない、ストーリーの根幹。


むしろ夏ばっぱもアキの力?もらって強くなってるんじゃないかって思う。




■流された海女カフェと思い出




懐かしいと思うものを全部流した、それがあの津波だった。
それを間近で体験した上で北三陸の人たちは笑顔でいる。



メガネ会計ババアが言うから、ズシンとくる。
お金より大切なものを考える。



■誰のせいでもなかった


 

 

「誰のせいでもねえんだ。自然のいいところばかり利用して、自然の怖えとこ目背けて、そのうち忘れてまう。それが人間の傲慢さだ」

半世紀以上海と共に生きてきた夏さんの言葉だからこそ、それはとても深い。


 

「要するに気にすんなってことだべ?」

アキを海女カフェに連れていき、被害を見せて、自然の厳しさを話し、それでも前を向こうとするアキに表情が和らぐ夏ばっぱ。

立ち上がれ、前を向け、走れ、駆け抜けろ。
アキはそんなことを考えてたのかもなあ。



「とりあえず、人は元気だ。みんな笑ってる、それはいいことだ。
 食べるものも、まあある。北鉄も走ってる。それもいいこと。
 東京さいたら、いいことが耳に入ってこねえんだ」


2011年のクドカンもこんなことを考えたんだろうか。




■現実は逆回転できない


 

人の気持ちは、関係は大逆転できた。
みんなの幸せの形が見つかった。過去の因縁も全部大逆転できた。

そんなアキの力を誰より信じていたユイちゃんの「無理だよ」は何より暗い。
あの家出のとき背負ってた背景の黒みたいに。

 

レールが途切れたこと、それが人に与える衝撃の大きさ。
そこにあったはずの未来が失われるということ。



福島で見た塞がれたレールも心に訴えかけるものがあったけど、これもきついね。






■ユイちゃんの決断


 

ユイちゃんの言う通り。
アキは東京で続けることができた。
ユイちゃんにしてみれば、悔しかった部分もあるだろうなあ。

そうか、ユイちゃんは3.11にあんなことにならなければ、東京行って帰ってこない覚悟を決めていたのか。

 

でもなんのかんので、ユイちゃんの笑顔、そこに悲しみが潜んでいるとしても、ユイちゃんの笑顔にホッとする。

ハゼヘンドリックス、本放送のとき「いっそん?!」ってなってたっけ

まめりんの彼氏といい、アユミさんの彼氏といい、ユイちゃんの彼氏といい……




まだ問題は山積みだけども。
やっぱりアキにはユイちゃん、ユイちゃんにはアキでないと。




「あたしに会いたければ、みんな北三陸に来ればいいんだもん」

ユイちゃんは『待つ人』になる覚悟を決めたのか。

ますます紅白も再放送してほしいもんだなあ……



■そして海へ


 

かつえが名演技。



アキがいつにも増して訛ってるように聴こえたんだけど、気のせいかな。
でも心なしか嬉しそう。

思い出すのは『潮騒のメモリー』のオーディションで、太巻から「標準語で」と言われたときの辛そうな表情。
言葉を取り戻した人は、強い。



訛れる喜びを全身で表しているのか、言葉の表現方法まで丁寧に演じている能年さんだなあと思いました。



■ヒビキwww




どこにでもいるヒビキ(評論家)、紅白にも登場したヒビキ(評論家)。

132回で見せた追っかけ根性はかっこよかった。彼もアキの成功の立役者だよね。



アキがキレてるのが面白いww




■悪役不在の作品




かつてアキやユイちゃん、春子さんが苦しんだ欲の皮の突っ張った大人たち。
今はとても頼もしい。


太巻のときも思ったけど、悪者がいないのがこの作品の魅力かも。





■「だって被災地だもの」


 

「言葉選ばないでよ」
「だって被災地だもの」

今にして思えば強烈なメッセージだなあと。
なんてことのない台詞にそういうのをぶっこんでくるクドカンの言葉の力。

特に菅原さんのほう。
そこにお金を落としていくことが何よりの援助になる、そんな時期だったか。






また来週~~



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