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米中対立先鋭化、なぜ今なのか

2015年05月31日 | 安保・国益
南シナ海の岩礁を中国が埋め立てて軍事基地化していることで米中の対立が先鋭化している。しかし、中国が南沙諸島に滑走路などを建設し始めたことは1年前から報じられていた。米国がこれを咎めるならその時点でも可能だったはずで、なぜ今なのか。様々な思惑があって今と決断したのだと推測する。

理由はいくつか推測できるが、第一は中国経済の失速が顕在化してきて、米国企業がこれ以上中国市場で稼ぐことがあまり期待できなくなってきたこと。リーマンショック後の米国経済の回復は中国の経済成長に助けられた面があるが、米国経済の回復も軌道に乗り中国経済依存が減ったことが大きい。

第二に、日本の安保法制成立の支援を狙ったのではないかと思いたくなる。安保法制の閣議決定が5月で、夏までに成立を目指している。野党は必要性も含めて反対論戦を仕掛けているが、このタイミングでの米中対立先鋭化はこれ以上ないわかりやすさで安保法制の必要性を日本国民に提示している。

以上が主要因だと考えるが、副次効果として米中二股外交で揺れる韓国に待ったなしで米中どちらに付くのか態度を決するよう迫ることになる。米国の本音は韓国切り捨てで決していると思うが、他の同盟国への対応上、切り捨てるなら韓国の裏切りを明瞭に見せつける必要がある。朴槿恵訪米も近い。

さらに言えば、習近平の訪米も9月に予定されている。今このタイミングで南シナ海の問題を顕在化させておいて、習近平が予定どおり訪米するならその時に回答を持ってこい、という米政府の意図だろうと考える。そしてその時点では日本の安保法制は成立していることが見込まれる。

邪推をもう一つ付け加えれば、欧州勢などがAIIBに雪崩を打って参加表明したことも、このタイミングでの米中対立先鋭化の米国の決断を後押ししていると考える。米中開戦による中国敗戦は国家の崩壊にもつながりかねず、AIIB出資は丸損になる。そういうリスクを米国は見せつけた。考え抜かれている。
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