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深田事件の技術面の検証2

2019年07月12日 | 深田萌絵事件


この記事は、次の記事の続きです。





深田萌絵さんが抱えているよくわからない事件に関連して、2016年1月27日当時らしき記事が転載されていたので、これについて簡単に技術面から検証をしてみる。狙いは、技術的に正しい記述になっているかどうか。

そんな自分の思いとは裏腹に、耐放射線技術は中国人民解放軍の手に渡ってしまった。深田萌絵
http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/709.html




最初に検証するのはこの文面。ここは『米防衛企業幹部からの手紙』ということになっていて、電話での会話の後に届いた英文のメールを深田氏が翻訳したものということになっている。


《米防衛企業幹部からの手紙》

防空当局の書類には世界的な宇宙航空産業 向けの2007に上るマーケットデータが含まれている。やや古いし、範囲は限定されているとはいっても十分にカバーされている非常に確かな市場データだ。

耐放射線の定義と概念は下記URLに説明されている。
reference: http://web.cs.ucla.edu/~rennels/article98.pdf

宇宙関連輸出規制の報告書は2014年に発行され、これは明らかに防衛産業と商業的に耐放射線技術には価値があるということを示している。
放射性物質は地球上の異なるエネルギーレベルにおいてはどこにでも偏在する。例えば、海面にも放射性物質はある。ある有名なIEEE(米国電気電子学会)論文で、ボーイング社の放射能研究室のユージン・ノルマンドがその効果を指摘している。その効果については、多くの電子システムの故障は地球上のあらゆる場所において自然的に発生した放射線によって引き起こされたと観察されてきている。

覚えておかなければならないのは、耐放射線というのはフォルトトレラント(耐故障性)という専門用語の異なる呼び名だ。放射線は、(電子システムの)ソフトエラーやハードエラーを起こすトリガーの触媒になる。しかしながら、フォルトトレラントは耐放射線の一つ上の層しかカバーできず、エラーを生じさせる触媒(放射性物質)に関わらない故障であればリカバリが可能であるということだ。その点はデータセンターにとっては非常にクリティカルな問題で、高速通信システムや、チップ間通信、ASICのような半導体設計でも、直接的に歩留まりを向上させる。

耐放射線/フォルトトレラント技術は機能的な安全認証の世界では非常に重要なテーマで、例えば自動車業界、産業界、航空産業界などがいい例だ。この技術の市場は軽く10億ドル(1200億円)を超える。この市場に進出するには、最初の質問はパフォーマンスでは無く、信頼性なのである。特に、FIT(単位時間あたりの平均故障発生件数)率だ。どんなソフトウェア技術、ハードウェア技術も直接的にFIT率を向上させるならば、それは最終製品の60%以上の価値を出す。認証の権限者はこの点を非常に重要視している。

民生用の無人システム(飛行システム、無人運転車、大量輸送機)利用の拡大において、フォルトトレラントが一番の関心事であり、また、それは非常に高利益の技術である。
言及するまでも無いが、フォルトトレラントは宇宙航空機器や防衛機器に対して非常に高価値である。添付の書類に見られるように、これらの技術は歴史的に各国で守られていて、輸出規制技術として取り扱われているのである。

今日の環境では、民生用の耐放射線アプリケーションの事例としては宇宙空間用のグローバルなインターネットバックボーンの創立である。そのなかで知られているものとしては「OneWeb」がある。
(https://en.wikipedia.org/wiki/OneWeb_satellite_constellation).

民間企業で耐放射線技術に依存しているのは、Google、Facebook、プラネットラボ、スペースエックス、ブルーオリジン、オービタルサイエンス、エアバス宇宙システム、ボーイング宇宙システム、テールズ、BAE,ロッキード、ハネウェル、ハリス、三菱重工、IBM,マイクロソフト、ファーウェイ、シスコ、エリクソン等が挙げられるし、それらの企業に限った事でも無い。これらは単なるこの技術の一例で、彼らは自分たち自身で耐放射線トレラント技術開発に多額の投資を行なっている。

耐放射線技術への投資の一例としては、CHRECという耐放射線技術の研究所は複数の企業や政府機関から投資を受けている。(http://www.chrec.org/)
世界中の政府機関はあらゆるアプリケーションへのフォルトトレラント技術に高い関心を持っていて、これらの技術は厳密に機密として守られるべきだと重要視されている。

周知のように、仮想化というのはソフトウェアとハードウェアのプラットフォームの機能を兼ね備えていて、マーケット規模は非常に大きい。この記事も少し古いが、2013年の記事でフォルトトレラント技術が仮想化市場において非常に重要であると述べられている。
http://web.cs.ucla.edu/~rennels/article98.pdf

結論を言うと、フォルトトレラント技術に対する市場価格と言うのは軽く200億ドル(2兆4000億円)を超えると言える。

ベストリガード




上記の米防衛企業幹部氏の文面から部分的に抜き出して、考察を加えてみる。


★覚えておかなければならないのは、耐放射線というのはフォルトトレラント(耐故障性)という専門用語の異なる呼び名だ。

米防衛企業幹部氏の技術的素養が不明なので(幹部と言っても営業畑上がりなど技術分野でない人もいる)微妙だが、技術的な素養があればこんな乱暴な言い方はしないはず。

フォールトトレラント設計
https://ja.wikipedia.org/?curid=344513
フォールトトレラント設計(障害許容設計)(フォールトトレラントせっけい、Fault tolerant design)は、システム設計の手法であり、システムの一部に問題が生じても全体が機能停止するということなく(たとえ機能を縮小しても)動作し続けるようなシステムを設計するものである。


実例として、航空機の操縦系統を複数用意することなどが挙げられている。また、IT方面での事例を以下に示す。

スケールの大きい拠点レベルの事例を挙げると例えばこれ。データセンターを東日本と西日本に分散配備し、巨大地震等でいずれかの拠点に障害が発生しても他方は稼働し続けるということを企図している。

データセンターレベルの冗長化 IIJ
https://www.iij.ad.jp/svcsol/category/cloud/bp/av004.html



スケールの小さい装置レベルの事例を挙げると例えばこれ。装置内に複数のハードディスクを内臓し、いずれかが故障しても全体としては稼働し続けることを企図している。




それ以外にも、例えばネットワークのバックアップ回線などもフォールトトレラントの範疇に入る。つまり、災害や通信回線の故障などが生じても、通信を切らさない=業務が続けられる、という設計。(事例省略)



次に、耐放射線。

これは前記事で触れているので詳細は省略するが、一部を再掲すると次のような話。

1)放射線でデータが壊れる場合(これは破損データが少なければ訂正アルゴリズムで復元可能)
2)半導体が物理的に壊れる(これも局所的なら前項同様復元可能)
3)広範囲の物理的破損(被曝が長期に渡ればそうなる)によりデータの復元不可→復旧できない故障


それで、放射線はどこから来るかというと、ありとあらゆるところから来る。いくつか例を挙げる。

宇宙放射線とは JAXA宇宙放射線センター
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/cosmic_rays.html

自然放射線 電気事業連合会
https://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/seikatsu/shizenhoushasen/index.html

半導体デバイスの静電気 および放射線対策
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal1888/106/9/106_9_895/_pdf


3つ目に挙げた論文には「1978年4月,インテル社のMay氏が,半導体パッケージ材料中の残留ウランやトリウムから出るα線でDRAMやCCDが誤動作することを発表した」とある。つまり、ICとかLSIのチップを包み込んでいる樹脂のケースなどにも不純物としての微小なウランなどが残留し、これが発する放射線がデータを破壊しエラーを引き起こす場合があるということ。



それでは、フォールトトレラント設計(障害許容設計)が要求されるのは、放射線による障害だけが理由か? そんなことはない。装置はあらゆる理由で、データを損傷させ、物理的な破損による故障を引き起こす。以下に例を挙げるが、見てわかるように放射線とは無関係に全ていつか壊れる。

電解コンデンサ寿命について コーセル
https://www.cosel.co.jp/technical/qanda/a0023.html
アルミニウム電解コンデンサの寿命は、余剰電解液の量と電解液が封止ゴムを通過して蒸発するスピード、そのスピードを決定する温度によって決まります。

ハードディスクの故障 ロジテックINAソリューションズ
https://www.logitec.co.jp/data_recovery/column/vol_028/
論理障害が発生する主な原因は、プログラムの故障です。ハードディスクを長時間使用しているとプログラムファイルが破損することがあり、これによって正しくデータを読み込むことができなくなります。(中略)物理障害が発生する主な原因は、振動、衝撃や熱暴走です。高いところから落とす、水没させるといった極端な事例もありますが、そこまで強い衝撃でなくても壊れる可能性はあります。


従って、米防衛企業幹部氏は「耐放射線というのはフォルトトレラント(耐故障性)という専門用語の異なる呼び名だ」と書いたようだが、2つの用語は互いに無関係ではないものの、前者は多様な障害要因のひとつである放射線への対策でしかなく、後者は非常に広い概念を持つ設計手法であり、少なくとも「専門用語の異なる呼び名」というのはウソだと断定して良いほどの不正確さがある。



★しかしながら、フォルトトレラントは耐放射線の一つ上の層しかカバーできず、エラーを生じさせる触媒(放射性物質)に関わらない故障であればリカバリが可能であるということだ。

『層』という言葉が登場するが、IT業界で言えば『レイヤ』ということなると思う。平易に例えると、下のレイヤから、部品→回路→装置→OS→アプリ→システム→サービス、みたいなものだと思ってください。(雑すぎるのでプロのツッコミ厳禁w)

すると、「フォルトトレラントは耐放射線の一つ上の層しかカバーできず」とあるのはウソもしくは非常に正しくない。耐放射線は部品(半導体チップとか)レベルか、その上の回路レベルでの対策がメインになろうかと思うが、フォールトトレラントはハードディスクのRAIDのような装置レベルでもできるし、前述のIIJの事例で挙げたような拠点間の冗長化というようなスケールの大きい対策もある。その意味で、「一つ上の層しかカバーできず」は甚だしく不正確。



★その点はデータセンターにとっては非常にクリティカルな問題で、高速通信システムや、チップ間通信、ASICのような半導体設計でも、直接的に歩留まりを向上させる。

これは前項の続きの文章。データセンターにとってフォールトトレラントは重要だという点は問題ない。問題は、文末の「直接的に歩留まりを向上させる」という表現。「歩留まり」とは、「加工に際し,使用原料に対する製品の出来高の割合。」(国語辞書)とある。流行りの話題に例えると、韓国の半導体工場は日本製の高純度フッ化水素に依存しているが、ここに他国製の低純度フッ化水素を使うと不純物が多いゆえに、半導体チップの不良品率が上がる=歩留まりが下がるので、高コスト体質になってしまう。というような話に使う。一般に、データセンターの設計において、歩留まりという用語は使わない。また、「ASICのような半導体設計」に限定しても、歩留まりという用語が登場するのは半導体製造工場の中での話であり、出荷され装置に組み込まれて運用中のものには使わない。



★どんなソフトウェア技術、ハードウェア技術も直接的にFIT率を向上させるならば、それは最終製品の60%以上の価値を出す。

「直接的にFIT率を向上させるならば」とあるが、故障率とFIT数がごっちゃになってるように見える。FIT数とは、10の9乗時間当たりの故障数。平易に書くと、11.4万年に何回故障するか。それで、装置というのは多数の部品で構成されているから、部品点数が増えるほど装置のFIT数は増えるということになる。すなわち、複雑な装置ほど早く壊れる(確率が高い)ということ。従って、文章構造として「FIT率を向上させるならば…価値を出す」はおかしい。複雑な装置ほど確率的に早く壊れるので、一部が壊れても大丈夫なようにフォールトトレラント設計にする必要がありますね、という文章構造でなければおかしい。また、「60%以上」という数字が唐突に出てきたのは理解不能。

故障率としてFIT数を教えてください。 TDK
https://product.tdk.com/info/ja/contact/faq/faq_detail_D/1433021530546.html



以下、面倒なので省略するが、上述の米防衛企業幹部氏は『耐放射線技術=フォールトトレラント設計』という誤った認識で話を展開しているので、あちこちに破綻をきたしている。




次は、深田萌絵さん自身のものと思われる文面。


《深田萌絵さんの文面》

深田はカタカタとメールを日本語に訳しながら、彼の美しい英文、トラディショナルな英単語の使い方に感銘した。
「やっぱりスタンフォード卒のエリートはレベルが違う。ただ、それよりも・・・」
重要なのは手紙の内容だ。

耐放射線技術は自動車関連企業にも重要な技術で、数年前にアメリカで日本の自動車メーカーが何度か原因不明の事故を起こしたが、あれは半導体チップに放射線が当たった為に生じたソフトエラーだと防衛関連の半導体エキスパートの間では言われている。
ほんのわずかの間だけに起こったソフトエラーでも、高速で動いている自動車や航空機では事故になりかねないため、耐放射線レベルを計るFITというものが設定されている。
うちのソースコードを解放軍が調べれば、米軍がどの程度のFITレベルを設定しているかがわかってしまう。
FITレベルの設定が分かれば、その電子部品を使った機材に対して証拠が残らないレベルでの放射線を浴びせれば、いきなり機材が故障しても原因究明に何年もかかってしまう。

2011年3月11日、福島原発で事故があった。
高放射線下でも、動けるロボットや監視カメラを作ろうと思って、マイケルの技術を日本に広めようと思った。
そんな自分の思いとは裏腹に、耐放射線技術は中国人民解放軍の手に渡ってしまった。
日本の裁判所も警察も何を訴えても知らん顔。警察に至っては、被害届の受理すら拒否するありさまだ。

多くの読者からメッセージを貰った。
「どうして然るべきところに相談しないのか?」
と。
警察、検察、経産省、総務省、国会議員十名弱ほど相談したけれど、私のような個人の話なんて、金にも票にもならないので聞いてくれない。彼らは国を守るのが仕事なのでは無く、給料分の仕事をするのが仕事なので、輸出規制下の技術が中国に盗まれようが無関心だ。

他に打つ手がもう思いつかない。
「あとは、この手紙くらいか・・・」

TO BE CONTINUED




★数年前にアメリカで日本の自動車メーカーが何度か原因不明の事故を起こしたが、あれは半導体チップに放射線が当たった為に生じたソフトエラーだと防衛関連の半導体エキスパートの間では言われている。

これは極めて怪しい。過去の報道からわかるように推定原因は、運転席床のマットなど、多岐にわたる。あるいは、交通事故は残念ながら一定の確率のもとに生じることを悪用したクレーマー的な要因も指摘されている。そして、自動車用車載コンピュータはもちろん、その辺のPCやスマホでもUSBメモリでも、内部で1ビットのデータが反転した程度では障害は起きないようにちゃんと作られている。

ECCメモリとは Crucial(マイクロン)
https://www.crucial.jp/jpn/ja/memory-server-ecc
ECCはシングルビットのメモリエラーを検出し、このエラーを正しい値に訂正する方法です。

ソフト・エラー・レートに関する FAQ テキサス・インスツルメンツ
http://www.tij.co.jp/ja-jp/support-quality/faqs/soft-error-rate-faqs.html
ソフト・エラーは、メモリとシーケンシャル素子が保持しているデータの状態に影響を及ぼし、地球上の環境で自然発生するランダムな放射線によって引き起こされます。




★うちのソースコードを解放軍が調べれば、米軍がどの程度のFITレベルを設定しているかがわかってしまう。

ここに登場する『ソースコード』とは、ソフトウェアのソースコードと、FPGA(半導体チップの一種)等に用いるハードウェア記述(意味合い的には回路図と同義)としてのソースコードの両方があり得るという理解で論じる。その『ソースコード』を解放軍が調べれば、FITレベル(FIT数のことだろう)がわかるとのことだが、わかるわけがない。電解コンデンサも含めて個々の電子部品にスペックとして全てFIT数があり、装置を構成する全ての部品のFIT数を積み上げて、装置全体のFIT数が算出される。FIT数を反転させた用語にMTBF=平均故障間隔というのがある。

MTBFとはどのようなものでしょうか。 TDK
https://product.tdk.com/info/ja/contact/faq/faq_detail_D/1433021530543.html
MTBF(Mean Time Between Failures)とは日本語では平均故障間隔と呼ばれ、市場で稼働している製品の補修部品の準備数を決定する数値となります。


例えば、大規模なデータセンターには内部には無数のハードディスクが使われている。MTBF=平均故障間隔を用いれば、故障に備えての予備のハードディスクをどの程度用意すればいいかわかる。例えば、毎日1個のハードディスクが故障するという確率なら、毎月30台の予備ハードディスクを用意しないとサービスが停止してしまう、ということになる。実際の故障は頻度が揺らぐので、もっと多くの予備が必要になる。

それで、深田氏のいう『ソースコード』がソフトウェアのソースコードを指す場合、ソフトウェア自体はFIT数やMTBF=平均故障間隔などというのは認識しない。認識すべきは保守要員であり、予備部品を手配する部署である。
また、深田氏のいう『ソースコード』がFPGA等に用いるハードウェア記述としてのソースコードを指す場合、一個の半導体チップが装置のFIT数やMTBF=平均故障間隔を知ることはないし、知る必要もない。また、半導体チップ自身が、自分のFIT数やMTBF=平均故障間隔などというものを認識していることもない。半導体チップのFIT数やMTBF=平均故障間隔を把握しているのは、半導体メーカーであって回路図は関係ない。

従って、人民解放軍が、ソフトウェアやハードウェア記述を入手して解析しても、FIT数やMTBF=平均故障間隔はわからない。装置を構成する全ての部品リストおよび個々の部品の技術仕様を入手すれば算出できる。あるいは、敵対国のスパイ的な意味では、監視相手国がその装置(例えば戦闘機)の予備部品(ミサイル等の消耗品は除く)をどの程度の数量を購入しているか見ればわかる。あるいは、保守マニュアルを入手すれば、定期部品の交換間隔が記載されているかもしれない。

ただし、それを知って何の意味があるのか? 例えば、F-15戦闘機の○○レーダーのMTBFは△△なので、3年に一度は交換する必要がある、 or 5年は大丈夫、or 確率的には10年使っても大丈夫…それを知ってどうする? そういう疑問が残る。
意味があるとすれば、北朝鮮がソ連時代に導入した戦闘機が、補修部品の入手も不可能になってから、あと何年飛び続けられるか、という試算ぐらい。



★FITレベルの設定が分かれば、その電子部品を使った機材に対して証拠が残らないレベルでの放射線を浴びせれば、いきなり機材が故障しても原因究明に何年もかかってしまう。

上述のように、FIT数やMTBF=平均故障間隔というのは装置を構成する個々の電子部品のスペックを積み上げた数字として算出される。そして、その個々の部品の故障原因も上述したように放射線とは限らない。むしろ、経年劣化などの要因の方が大きい。

「機材に対して証拠が残らないレベルでの放射線を浴びせれば」の文面については、「証拠」はさておき、ある程度の放射線を装置に浴びせればデータの破壊は容易に起きうるし(宇宙空間の人工衛星なら頻繁に)、強烈な放射線を浴びせれば(事故を起こした原子炉付近など)、半導体チップも物理的に破壊されて故障する。そして、それらの障害や故障を引き起こし得る放射線量は、FIT数には何ら関係ない。そもそも、個々の電子部品のFIT数は放射線量に比例して設定されているわけではない。

そして、外部からの電磁波攻撃(放射線も電磁波の一種)に対しては、半導体チップや回路レベルを超えた対策もある。戦闘機、戦車、軍艦といった兵器にはそういった対策がなされていると聞く。

電磁シールドシステム 電磁波攻撃対策 三菱電機
http://www.mitsubishielectric.co.jp/security/products/physical/shield/system02.html


また、「いきなり機材が故障しても原因究明に何年もかかってしまう」の文面だが、運用者からすれば原因究明などする必要がない。故障した部品を選り分け、その部品(制御基板とか、ハードディスクとか)を予備部品と交換するのみである。また製造メーカーからすれば、もし運用者(多くの場合それは顧客を指す)から故障情報がもらえるなら統計的に解析して、次の設計に生かすことはできる、という程度の話。


以上のように、深田萌絵さん自身の文面にも、前半の『米防衛企業幹部氏』と同様に、用語の定義や用法に混乱が見られる。




総じて印象を言えば、これらは技術雑誌を読み漁った程度の人物による小説だろうと思われる。






(追記)2019.07.16

ひとつわかった。『耐放射線技術=フォールトトレラント設計』と思い込んでいるのは、ジェイソン氏だ。

(A)上の記事前半で論じたように、深田萌絵さん宛にメールした『米防衛企業幹部氏』が、文面の中で『耐放射線技術=フォールトトレラント設計』と思い込んでいるように書いている。

(B)上の記事後半に書いたように、深田萌絵さん自身も『米防衛企業幹部氏』と同程度の技術面でのいい加減さが見られる。そこから推測すると、『米防衛企業幹部氏』の存在自体が深田萌絵さんの創作ではないかと感じた。

(C)ところで、深田萌絵さんの技術面での懐刀であるジェイソン氏の会社のトップページにこうある。

Teklium develops a set of very unique chip cores and modules, including a real time H.264 video encoder for 1920x1080p high definition, a fault tolerant and self-healing DRAM controlling logic, and an active DMA unit with mathematical and bit-blitz operation capability.




問題はこの文面。『a fault tolerant and self-healing DRAM controlling logic』

self-healing DRAM controlling logic は上で簡単に紹介したようなメモリのエラー訂正のためのECCコントローラ的なものと思われる。そこに『fault tolerant and』がつながっている。普通なら、メモリのエラー訂正ごときにフォールトトレラントという用語は使わない。

つまり、『耐放射線技術(メモリ等のソフトエラー対策)=フォールトトレラント設計』と思い込んでいる(または、そのように称している)のは、ジェイソン氏であると推測できる。

そのジェイソン氏から深田萌絵さんは技術的な知識を得て、深田さんの創作と思われる『米防衛企業幹部氏』にそのように語らせた。というように考えられる。

思うに、ジェイソン氏と深田萌絵さんの間では、微小な放射線による1ビット程度の小さなデータ破損が、とてつもなく大きな問題として認識されているのではないか。そうであればこそ、深田さん自身の文面に『自動車メーカーが何度か原因不明の事故を起こしたが、あれは半導体チップに放射線が当たった為に生じたソフトエラーだと防衛関連の半導体エキスパートの間では言われている』などという、ストレートにいえば馬鹿馬鹿しい話が登場するのだろう。

実際は、どんなIT機器にもその程度の対策は施してある。そうでなければ、PCは頻繁にクラッシュし、家電は誤動作し、自動車はまさに原因不明の暴走事故を起こし、航空機はことごとく墜落するだろう。

エンジニアであるはずのジェイソン氏までこの程度の認識ならば、推測できる結論はおそらく次の2つのいずれか。
(1)技術的知識が弱い
(2)実体のない“技術”で誰かを騙そうとしている





以上。





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フォールトトラント (StepByStep)
2019-07-16 22:51:05
中々読み応えのある記事だったので、つられて読み込んでしまいました。
ただ、読んでいると若干言葉の定義に誤解があるように思います。ZF_Phantom様の使っているフォールトトレラントは一般的なIT用語で言うものであり、深田萌絵様の翻訳にあるフォールトトレラントは、誤り訂正で使うものであり、そこに誤解の元があるように感じました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88%E9%87%8F%E5%AD%90%E8%A8%88%E7%AE%97

フォールトトレラントを誤り訂正と読み替えると話がスッキリするのでは無いでしょうか?
返信する
Re: フォールトトラント (ZF)
2019-07-16 23:52:04
StepByStepさん、

科学者が量子力学において量子誤り訂正が成功するように量子回路をうまく設計する手法をフォールトトレラント量子計算(=Wikiのほぼバクリ文言)と称するなら、それはそれで良いです。

ただ、『米防衛企業幹部氏』の文中の《民生用の無人システム(飛行システム、無人運転車、大量輸送機)利用の拡大において、フォルトトレラントが一番の関心事であり》、《言及するまでも無いが、フォルトトレラントは宇宙航空機器や防衛機器に対して非常に高価値である》の「フォールトトレラント」は、単なるエラー訂正にとどまるものではなく、IT業界での「フォールトトレラント」の意味に見えます。

さらに、『米防衛企業幹部氏』の文末付近の仮想化云々で紹介されてるpdf資料のタイトルは、『FAULT-TOLERANT COMPUTING』であり、中身はIT業界での「フォールトトレラント」の話です。

また、ジェイソン氏は(さらに一応深田氏も)IT or 電子回路系のエンジニアでしょうから、IT業界での「フォールトトレラント」の意味を無視してエラー訂正に矮小化した定義で使うのはおかしな話ですし、上記のpdfのように一連の話題の中にも登場してるのですから、知らないわけがありません。

それにも関わらず、なお『耐放射線技術=フォールトトレラント設計』という認識で話を進めるなら、やはり私から見るとわかってないのでは、と思えるのです。
返信する

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